「未来を想像し、新しい金融を創造する」を理念に1999年に創業したマネックスはなぜ現代アートの公募展を開き続けるのか? ヒルズから未来を切り拓く企業のいまに触れる連載の21回目は、アークヒルズ 森タワーにオフィスを構え、グローバルにオンライン金融ビジネスを展開するマネックスグループで「ART IN THE OFFICE」プロジェクトを手がける徳永佳愛さんにうかがいます。
TEXT BY Kazuko Takahashi
photo Courtesy : ART IN THE OFFICE
マネックスグループが主宰する「ART IN THE OFFICE」。現代アートの領域で制作活動を行うアーティストから作品案を公募し、受賞作を同社のプレスルームに約1年間展示する企画だ。同社は1999年に松本大氏(現・代表執行役社長CEO)が「未来を想像し、新しい金融を創造する」という理念のもと創業。現在はグローバルにオンライン金融ビジネスを展開している。そうした会社がなぜ現代アートなのか。
「現代アートには社会に問題を提起したり、固定概念に問いかけたりという側面があります。作品に触れる機会を通じて新しい物の見方や多様性を受容する社会に貢献できないか。そんな思いから生まれた企画です。ビジネスとアートをつなぐ試みは、企業と投資家をつなぐ金融ビジネスにも通じます」と担当の徳永氏。
審査員は松本社長と現代アート関連の事業を手がけるNPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/エイト]理事長の塩見有子氏、他のメンバーは毎年変わり、顔ぶれは経営者、作家、ミュージシャン、美術キュレーターなど幅広い。作品群に感動した審査員が同様の企画を自らの会社で始めたケースもあるという。
受賞者はオフィスで1~2週間滞在制作を行い、社員とのワークショップを経て作品を仕上げる。社員は彼らの試行錯誤や制作風景を間近に見ることができる。
「今年のワークショップでは、受賞者から“もう一人の自分”というテーマをもらいました。参加者は個々に「顔」を描き、プレスルームに合う顔について議論。議論をヒントに一つの造形に仕上げる過程は創造的で刺激的だったと受賞者は語っていました。アート発の議論は社員にも刺激を与え、部署を越えたチームビルディングにも一役買っています」
完成作品は、株主・投資家向けの統合報告書の表紙に採用される他、松本社長らが取材を受ける際に背景として用いられ、様々なメディアに掲載される。同社を訪れるゲストの目も楽しませている。
「受賞者の皆さんは、オフィスでの制作という特別な体験を通じて表現の殻を破りたいという熱意を持った方々。受賞をきっかけにさらに飛躍していく皆さんの姿を見ることも私たちの喜びです。当社は昨年、“For Creative Minds”といスローガンを掲げました。今、デザイン的な視点や思考が様々な分野で必要とされています。金融もその一つ。Creative Mindsを探求する社員が現代アートを通じて多様性のある社会への解を提供する。それが未来に向けた私たちの挑戦です」
マネックスグループ株式会社|ART IN THE OFFICE
徳永佳愛|Yoshie Tokunagaマネックスグループ コーポレートコミュケーション室、グループのESGを担当し、ART IN THE OFFICEプロジェクトを推進。受賞者と社員の橋渡し役を務める。同社にはアート情報の交換を目的とするアート部もある(松本大社長もメンバーの一員)。
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