CES 2019

巨大化が止まらない“世界最大のデジタルハードウェアショウ”をどう見るか?——CES 2019レポート

毎年1月初旬にラスベガスで開催される「CES」の巨大化が止まらない。世界160地域から180万以上が参加する巨大イベントは、コンシューマー家電からデジタルデバイス、自動車、デジタルマーケティングへと領域を拡大。4,500を越える企業ブースが並び、1,200のスタートアップが集まるマーケットプレイスが出現する。主催者さえも全貌を把握するのが難しいといわれる世界最大規模のテックイベントを、どう捉えればいいのだろうか。

TEXT BY YUKO NONOSHITA
PHOTO BY YUKO NONOSHITA

デジタル業界の1年の幕開けは「CES」と共に始まる。CES全米民生技術協会(CTA)が主催するコンシューマー向けテクノロジーを対象としたビジネスイベントとして毎年1月にラスベガスで開催される。市場トレンドを知る絶好の機会のため、日本からも数多く来場者が訪れる。

1967年にNYで家電見本市を開催してから50年を迎えたのを機に、デジタルマーケット全体を対象とするテックイベントへと転換。それが功を奏してか、4日間の開催期間中、世界160地域から18万人以上が訪れ、うち3分の1が海外からという世界から注目を集める展示会へと成長している。

出展内容も白物家電やオーディオ機器から、モバイル、ロボティクス、自動運転車、デジタルヘルス、スマートシティなど33カテゴリーに拡がり、東京ビッグサイトの約3倍の展示会場に22のマーケットプレイスが設けられる。公式会場だけで11あり、出展数は4,500以上。世界50カ国から1,200のスタートアップが集まるエウレカパークは日本からも多数出展があり、そこだけで単独イベントが成立するほどの規模と密度がある。LVCC(ラスベガスコンベンションセンター)をはじめ3つある会場エリアを移動するだけでも大変で、会期中にイベント全てを把握するのはおよそ不可能だ。

そのため、会期の2日前からメディアデイが開催され、出展者は、世界から詰めかけた6,600のメディアに向けて新製品をお披露目する。ここ数年、企業は各社個別に新製品発表会を行う傾向があるため、話題性という点での魅力は落ちているものの、デジタル業界全体の動きを見るうえで欠かせないイベントではあり続けている。

実際に見て触れてテクノロジーを実感できるのがCESの魅力と言える。

CESが人気を集めるのは、ハードウェアというわかりやすい形でデジタルトレンドを見通すことができるからだろう。実際、優れたデザインや技術を持つコンシューマー向け製品は表彰される。

Innovation Awards を集めたショーケースは、28カテゴリーでノミネートされた100以上の製品をまとめて展示。今年はレノボのノートパソコン「Yoga Book C930」、ソニーのワイヤレスノイズキャンセリングヘッドホン「WH-1000XM3 」、WHILLの自動運転車椅子など30点がBest of Innovationに選ばれ、肌に貼り付けてPHを測るウェアラブルセンサーのようなものまで対象になっている。

広い会場を回れば、昨年11月にプレス発表したサムスンに先行してRoyoleが発売する、ディスプレイが曲がるスマホ「FlexPai」や、LGの巻き取りテレビ「LG SIGNATURE OLED TV R」など、インパクトある製品にも出会える。

あるいは、スリープテックやFemTech(女性向けデジタル機器)といった最新トレンド製品もいち早く体験でき、Amazon Goのようにスマホだけで買物できるキオスクや、デジタル化されたAmazon ダッシュで商品オーダーができる冷蔵庫、ヘアスタイルから子どもの歯磨きまでアドバイスして商品の購入までできるスマートミラーなど、身近なものがテクノロジーで変革されていくのがダイレクトに感じられる。

さらに、自動車業界の話題もCESから発信されるようになっている。今年は、NVIDIAとメルセデス・ベンツが次世代自動駐車の開発タッグを組むと発表し、日産やヒュンダイは、ドライバーの感情を読み取るシステムのデモを繰り広げ、会場周辺ではLyftが自動運転タクシーサービスを行っていた。加えて、Bell Helicopterの空飛ぶタクシー「Nexus」のプロトタイプ機や、ドバイ警察が導入を進める「HOVERBIKE」のような未来のモビリティ展示も増えていた。

Bell Helicopterの空飛ぶタクシー「Nexus」のプロトタイプ機。

CESを主催するCTAはハードウェア以外の出展にも力を入れ、2015年からは、マーケティング、広告、コンテンツが対象のC Spaceを設けている。会場の高級ホテルには、Facebook、Twitter、Spotify、米国のエンタメ企業らが出展。以前はVRやオンラインショッピングツールなどを展示していたが、今年はほぼセミナーや商談だけになり、全く別イベントの様相を呈していた。

スマートシティも力を入れているジャンルだが、そこで使われる5G、IoT、AIといったテクノロジーを「見える形」で展示するのにはまだ少々苦戦していた印象だ。デジタル化は「コネクテッド」がデフォルトで、どのような規格やOSを使うかも重要になるだけに、限られた時間内でブースをのぞくだけではわかりにくいソフトウェアやシステムを参加者にどう見せていくかは、CESにとっての課題といえるだろう。

このまま市場と共に巨大化を続けるのか、それとも新しい変革を見せるのか……。日本でもますます注目度が高まっているCESだけに、来年どうなるかが気になるところだ。

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