SENSE OF MODERN FRENCH

小石原はるか、モダンフレンチの巨匠ジャン・ジョルジュの世界を体験

フードライター小石原はるかさんが、六本木ヒルズの気になるレストランを巡る企画。第9回は、けやき坂通りに佇む〈ジャン・ジョルジュ トウキョウ〉。この時期らしい爽やかで洗練された料理の数々を、ライブ感あふれるカウンターで堪能しました。

PHOTO BY SATOSHI FUKUDA
TEXT BY HARUKA KOISHIHARA
EDIT BY RCKT/ROCKET COMPANY*

ジャン・ジョルジュの世界観を楽しめる都内唯一の場所

約400mの道路に面して世界のハイブランドが軒を連ね、六本木ヒルズの“目抜き通り”とでも呼びたい、けやき坂通り。その中の1軒が〈ジャン・ジョルジュ トウキョウ〉です。NYでミシュランの星を獲得し続け、世界で60店舗以上のレストランを展開しているグランシェフ、ジャン・ジョルジュ氏の世界観を楽しめる東京で唯一のお店で、モダンな感性から紡ぎ出されるお料理、いただきます。

開放感あふれるガラス張りの空間。1Fのオープンキッチンとカウンター、2Fは6名様までご利用いただけるプライベートルーム。

芸術的ともいえる、シグネチャーディッシュの「スクランブルエッグキャビア」。

コース内容は月毎に変化。メインのラムローストには、春の山菜・こごみをあしらって。

ゲストとスタッフの距離が最も近い店

店内に入ると目に飛び込んでくるのは、個室のある2階への吹き抜けが印象的なエントランス、そしてまるでお寿司屋さんのように遮るものがなにもない開放的なカウンターキッチンです。「世界各国にあるジャン・ジョルジュの店舗の中でも、ゲストとスタッフの距離が最も近い店舗」というエピソードにも納得。カウンターの天板や壁面に天然の大理石がふんだんに使われた空間は、シンプルでありながらラグジュアリーな雰囲気です。

ジャン・ジョルジュ氏は、16歳のときに三ツ星レストランの厨房からキャリアをスタートさせ、数々の名店で研鑽を積みました。そして転換点となったのが、22歳で赴任したバンコクでの、アジアのハーブやスパイスとの出会い。伝統的なフレンチに世界の様々なフレーバーを取り入れる、独自のスタイルを確立したといいます。1991年にNYで自身の店を開くと、そのモダンな料理がたちまち支持され、世界中にその名を知らしめるまでになったのです。

オープンキッチンを臨むカウンター席は、まさに特等席。シェフとの会話も弾みます。

卵の殻の中には、驚くほど滑らかなスクランブルエッグが。その上にウォッカとレモンジュースを加えたクリーム、そしてたっぷりのキャビア。温かい卵と、ひんやりとしたキャビア&クリームのコントラストも見事です。

春らしい彩りの野菜が目にも爽やかな「マコガレイのクルード スナップえんどう、わさび、バターミルクエマルジョン」。岩手で揚がったフレッシュなマコガレイの味わいを、レモンバーム、わさび、発酵させた青唐辛子の塩漬けなどの風味が引き立てます。

「オーストラリア産ラムロースト、アーティチョークとこごみのグレーズ」は、仔羊のロース肉にエシャロットのピューレと香草パン粉を添え、鶏のだしに白ワインやバターを加えてとろみをつけたソースを。柔らかい仔羊に寄り添うような、優しい味わいです。付け合わせには、季節を告げるこごみやアーティチョークを。

ジャン・ジョルジュの定番デザートのひとつ、「モルテンチョコレートケーキ」は、表面がカリッと焼き上がったケーキにスプーンを入れると中からフォンダンショコラが流れ出る、驚きある一品。マダガスカルバニラのアイスクリームにはカカオニブのチュイルを添えて。

“イズム”をしっかり受け継いだ、東京店ならではのメニュー

毎月内容が変わるディナーコース「Tasting J」¥18,000(サービス料別途)では、スペシャリテである「スクランブルエッグキャビア」を含む全10品が登場します。卵の殻を器に見立てた名品は「卵料理ではなく、あくまで“キャビア料理”です」と、エグゼクティブシェフの望月良一さん。実際にいただいてみると、煌めくキャビアの濃厚な風味にクリーミーなスクランブルエッグが寄り添い、高揚感を覚える味わい! 特別な料理であることがわかります。

望月さんは、2017年に料理長に就任。ジャン・ジョルジュ氏と細やかにコミュニケーションを取り、NY発信のレシピに東京店ならではの魅力をプラスして、メニューを構築しています。フランス料理の骨格は守りつつ、わさび、山菜、ハーブやスパイスなどを効果的に盛り込んだ品々には、ジャン・ジョルジュの“イズム”がしっかりと息づいています。「軽やかな食後感と“また食べたくなる味わい”を心がけています」という言葉に納得。

食事を終えて

空間も料理も「洗練」という形容がよく似合うレストランは、特別なオケージョンにぴったり。そして、望月さんをはじめとするスタッフのサービスも細やか、かつ和やかで、肩肘張らずに過ごすことができます。ちなみに、厳密なドレスコードというわけではないのですが、「エレガントカジュアル」が推奨されているので、それを意識した装いで訪れればより寛げるはず!——小石原

最後に望月シェフと。洗練された料理ともてなし。ここでしか味わえない食体験に出会いました。

ジャン・ジョルジュ トウキョウ
住所=東京都港区六本木6-12-2 六本木ヒルズ 六本木けやき坂通り 1F 電話=03-5412-7115 営業時間=11:30~15:00(L.O.13:30)、17:00~23:00(L.O.21:00)

profile

小石原はるか|Haruka_Koishihara
フードライター。1972年東京都生まれ。エンゲル係数が妙に高い家に育ち、レストラン通いをこよなく愛するように。マニアックな気質と比較的丈夫な胃袋で、これまで様々な食の世界にハマる。『BRUTUS』『東京カレンダー』など多くの雑誌やメディアで、食にまつわる記事の執筆やディレクションを担当。著書に『レストランをめぐる冒険』(小学館)、『自分史上最多ごはん』(マガジンハウス)、『東京最高のレストラン』(共著・ぴあ刊)など。

※2023年5月現在の情報となります。
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