ビジュアル、味わい、香り——。従来あった和菓子の既成概念を覆す、日々進化を続ける和菓子の世界。老舗が手がける進化系和菓子や、新店のデザイナーズ和菓子など、美しくも美味しい、最新系の和スイーツをご紹介します。
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❶ 京の老舗の伝統から生まれた和菓子の進化形 ——鶴屋吉信
透明感のあるパステルカラーがきれいなスティックタイプの「琥珀糖」¥1,080(1箱)。伝統的な干菓子をベースにミント・ローズ・ジャスミン・ラベンダー・カモミールの5種のフレーバーを込めて、1本1本丁寧に職人の手でカットして仕上げている。外は“しゃりっ”、中は“つるん”、独特の食感と優しい甘さを、ほのかで華やかな香りと共に楽しみたい。モダンなクリアパッケージは“映える”お土産としても。
いちご、さくらんぼ、レモン、ヨーグルトの4種類の風味が揃った、スクエア型がお洒落な印象のひと口羊羹「IRODORIようかん」¥216(1個)/¥1,026(4個入)/¥1,490(6個入)。羊羹としては珍しい、ほんのりした甘さの中にすっきりとした風味で後味も爽やか。
マカロンのようなカラフルな最中種(もなかだね)に、小倉・抹茶・こしあん、さらに季節限定のあん4種を挟んだ、ひとくちサイズの最中「IROMONAKA(個包装)」。¥216〜(1個)/¥972〜(4個入)/¥2,052〜(9個入)。ころんとした可愛いフォルムとしゃれ味豊かな色合いの最中はプチギフトにもお薦め(価格は季節のあんにより変動)。
『京菓匠 鶴屋吉信』は、享和3年(1803年)創業。京都・西陣に本店を構え、220年に渡り、歴史と格調を大切にする一方、時代の変化に寄り添う、和菓子の新たな魅力を追求している。この名舗が長い年月培ってきた技術や、季節の移ろいなど日本人の美意識を、新しい時代に向けて発進していきたいとリリースした和菓子のブランドが「IRODORI」だ。和菓子ファンだけでなく、和菓子にあまりなじみのない方へもその魅力を伝え、和菓子文化のすそ野を「彩り」豊かに広げていきたい、和菓子が現代の暮らしの中にもっと溶け込むように楽しんでいただきたい、など多くの想いから2015年に生まれたブランドだ。
今回、ご紹介するのは「IRODORI」ブランドから「琥珀糖」「IROMONAKA」「IRODORIようかん」の3アイテム。どれも京菓子の技と美を継承しながらも明るく優しいカラーや、クリアパッケージなど、これまでの和菓子とは一線を画したモダンで洗練された印象が際立つ。ちなみに「IRODORI」のコンセプトカラーは6色あり、日本の伝統色を用い「朝日」「夕日」「晴天」「晴朗」「夜の帳」「夜空」と、それぞれ一日の時の流れを表現している。また「鶴屋吉信」のシンボルの鶴を鳥とし、いろどりの“とり”をかけて『IRODORI』というネーミングが誕生した。
モダンな虎ノ門ヒルズ店は、『鶴屋吉信』と『IRODORI』の2ブランドの店舗を全国で初めて併設して展開した店舗。京都『IRODORI』で人気の「祇園辻利」とコラボした和のドリンク「京ふわわ」を関東で初めてテイクアウトで提供。老舗の日本茶と和三盆糖の優しい香りと甘味で、ほっと癒やされるひと時が楽しめる。オーセンティックな店内で、こだわりの甘味の数々や『IRODORI』限定メニューをチョイスした和菓子を、“今”のライフスタイルに取り入れてみてはいかがだろうか。
虎ノ門ヒルズの店内は、ゆるやかなアーチを描くゲートで「伝統と革新の融合」という、『鶴屋吉信』が近年掲げているコンセプトを表現。白壁と白木を基調とし、明るい陽光が差し込む店内では、これまでの和菓子売場の雰囲気とは違う、お客様が商品を手に取って選べる開放的な空間を演出している。PHOTO BY TOMOOKI KENGAKU
京菓匠 鶴屋吉信 住所=東京都港区虎ノ門1-17-1 虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー1F 電話=03-6811-1116 営業時間=平日10:30~19:30(土曜・日曜・祝日11:00~19:00) 定休日=不定休 ※QRコード決済、交通系IC決済、各種クレジットカード利用可 TEXT BY AKIRA TANAKA PHOTO BY HIDEHIRO YAMADA
❷ クラシカルかつモダンに。ひとつ一つ丁寧に包んだ、軽やかな食感の特別な「おはぎ」 ——松也
「みどり」¥350。よもぎと抹茶をブレンドしたあんは、苦味と甘味のバランスが絶妙でクセになる人続出。氷餅の食感も楽しい。
「苺」¥350。かわいらしいピンク色の苺あんは苺の香りがフワッと香る。仕上げのパウダーで甘酸っぱさをプラス。
「きな粉」¥330。こしあんベースのきな粉おはぎに、仕上げのきな粉を追加。定番の優しい甘みに香ばしさが加わる、ほっこりとした味わい。
「黒胡麻」¥330。定番のこしあんに、焙煎した香り豊かな黒胡麻をまとわせたもの。コクのある黒胡麻の味わいを存分に楽しめる。
「粒あん」¥330。店内で炊き上げた京都府産丹波大納言を、こしあんと合わせたもの。自家製ならではの粒の食感が素晴らしい。
「こしあん」¥330。異なる2種類のあんを独自にブレンド。すっきりとした味わいとふんわりとしたテクスチャーを追求した、松也の基本のおはぎ。
テイクアウト用にはわっぱを用意(大小2サイズ。共に¥250)。和モダンな印象のギフトになる。
『松也』は、2022年2月にオープン。旬の素材やフルーツを使い、既成概念にとらわれない甘味提供をコンセプトとする。中でも、1番人気は「おはぎ」。京都産の新羽二重もち米を使用し、甘酒を加えて炊き上げることで、口に入れた時に麹の香りがフワリと立ち昇ってくる。
炊き上げてすぐ、機械を使わずに人の手で丸めているので、必要以上にギュッと力が加わらず、ひと際、柔らかな食感を特徴とする。保存料を加えず、当日販売するものを、その日の朝に仕込むというスタイルで、賞味期限は当日中。だからこそ、昔ながらの温かみのある「おはぎ」が生まれるのだ。
現在は、定番の「粒あん」「こしあん」を含む全6種類がラインナップ。このほか季節限定のアイテムなども、不定期で登場予定だ。まんまるのフォルムは愛らしく、カラフルで、昔ながらの「わっぱ」(有料)に入れてお土産にするとさらに魅力が増す。手渡しゆえの特別感を演出できる上、ケーキほど持ち運びに気を使わない。そんな優秀ギフトとして、是非お薦めしたい。
店舗には、イートインスペースを用意。おはぎやあんみつをいただくことができる。
松也 住所=東京都港区六本木6-2-31 六本木ヒルズノースタワーB1F 電話=03-6804-3655 営業時間=11:00〜20:00(L.O.19:00) 定休日=無休 ※QRコード決済、交通系IC決済、各種クレジットカード利用可 TEXT BY TAKASHI TSUCHIDA PHOTO BY HIDEHIRO YAMADA
❸ お芋スイーツは“ほくほく”から“ねっとりなめらか”へ ——望月
ふわふわの氷に糖度50%以上の熟成焼き芋のみを使った「モンブランかき氷」¥2,200(ミニサイズ¥1,300)。とろりとしたテクスチャーの熟成焼き芋クリームをふんだんにかけた氷に、ひと口大にカットされた干し芋風のお芋と、芋チップスをトッピング。芋の皮から抽出した自家製の『芋蜜』をお好みで加えてお芋本来の甘みと旨みを楽しむかき氷。
厳選されたさつまいもを独自の技術で3カ月以上熟成し、生産から焼き方までこだわり抜いた無農薬の「ひとくち冷やし熟成焼き芋」¥600。糖度50度以上の焼き芋から蜜(麦芽糖)がとろりと溢れ出る。ひと口サイズで食べやすく、市販の芋より皮が分厚く、皮も全て食べられる。
贈答品や手土産としても喜ばれる「熟成焼き芋のテリーヌ」¥800(大1カット・テイクアウト)、¥432(小1カット・テイクアウト)。和三盆を使ったしっとりとしたパウンドケーキに、甘く滑らかな「冷やし熟成焼き芋」を取り合わせたテリーヌ感覚の極上の焼き菓子(写真は店内用テリーヌ。ドリンクセット¥1,500〜¥1,700)。
「さつまいもはもちろん、他の食材も無農薬やオーガニックのものを中心に使ってなるべく身体に優しいスイーツを提供しています」と話すのは、お芋を中心にしたスイーツのカフェとテイクアウトショップを展開する『望月』のオーナー、望月ともみさん。実家は和菓子店でもなく、小さい頃から、いわゆる「イモ、クリ、カボチャ」が大好きで、それが高じて大人になって地元付近の麻布十番に店を構えてしまったという「さつまいも愛」に溢れた店なのだ。
何よりも感動したのは当時、あまり名前がそれほど浸透していなかった品種「べにはるか」を取り寄せて食べた時だそう。箱に添付されていたお薦めの食べ方は、焼いて冷蔵庫で冷やして食す内容だったが実践してみたところ、これまでにない「ねっとり感」と「自然な甘さ」に心酔。以降、お取り寄せを繰り返すうちに健康的な美味しさを他の方にも是非知ってもらいたい、と2021年に店をオープン。今ではオーガニックやより身体への優しさを追求し、千葉に無農薬、無肥料のさつまいもの自家農園も運営するほどだ。
店のメニューもオリジナル。オーナーがお芋好きの発端となった焼き芋をはじめ、それを使いモンブランなどの洋菓子からインスピレーションを受けて考案した和スイーツのアイテムが盛りだくさん。基本となる焼き芋はじっくりと低温で焼き上げ、冷やすことで糖度を感じるようになる。また、食物繊維と同じ作用があり血糖値の上昇を抑え、腸内環境を整えるさつまいもに含まれるレジスタントスターチは、加熱調理すると構造が変化して消化されるようになるが、冷めると再び消化されにくい繊維質に変化する。さつまいもは、そうした科学的な意味でも健康や、ダイエットに優れた食べ方なのだ。そして何より滑らかな口触りはその食感の概念を変えてくれるほどだ。テイクアウトでお家カフェを楽しむもよし、気持ちの良いカフェスペースでオーガニック仕様のコーヒーや紅茶、ほうじ茶、ラテなどと共にゆったりした時を過ごすのもお薦めだ。
カフェを併設した『望月』の店舗。麻布十番の商店街の一角に白木を基調とし、オーナーの名前にちなみ“望月”を意味する満月のモチーフのオブジェなどをあしらったインテリアが目を引く。お洒落で明るい和モダンの店構えはこの界隈でひときわ美しい。
望月 住所=東京都港区麻布十番3-7-4 コムズ麻布十番1F 電話=050-3155-2247 営業時間=水曜〜土曜11:00〜23:00(イートイン はL.O.22:30)、日曜・月曜11:00 〜19:00(イートイン はL.O.18:30) 定休日=火曜 ※QRコード決済、交通系IC決済、各種クレジットカード利用可 TEXT BY AKIRA TANAKA PHOTO BY DAISAKU NISHIMIYA(NDPP.)
※2023年3月現在の情報となります。 ※表示価格は全て税込価格です。 ※店舗により臨時休業や営業時間を変更させていただく場合がございます。詳細は「六本木ヒルズの営業状況について 」「虎ノ門ヒルズの営業状況について 」をご確認ください。
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