フードライター小石原はるかさんと巡るレストラン連載。2022年の締めを飾る第六回は、東京初出店となる、京都の西京漬の老舗〈京都一の傳〉。秘伝の銀だらの蔵みそ焼を使った土釜ごはんをはじめ、心温まる京懐石をいただきます。
PHOTO BY SATOSHI FUKUDA
TEXT BY HARUKA KOISHIHARA
EDIT BY RCKT/ROCKET COMPANY*
長年愛されてきた西京漬の老舗が贈る、京懐石
毎年クリスマスが終わると、一夜にして街のそこここに“和”の風情が漂い、お正月モードに切り替わるのは日本の年末年始の風物詩、という感じがします。となると、途端に日本の伝統的な味わいが恋しくなってくるもの。そこで今回は、2022年夏にウェストウォーク5階に仲間入りした〈京都一の傳 六本木ヒルズ店〉へ伺います。1927年に創業した老舗が東京初出店。名店がひしめく都で長らく愛されてきた逸品、いただきます。
六本木ヒルズでしか味わえない、京懐石のディナー
「一」の字が大胆に染め抜かれた大暖簾をくぐり店内に歩を進めると、インテリアは一見コンテンポラリーな印象です。が、壁面に伏見・稲荷山の黄土が使われていたり、大テーブルの上には屋号の「一」を表現した椎の巨木が釣られていたりと、要所要所に京の趣が。
京都の本店2階にもお食事処があるそうですが、そちらは夕方までの営業。京懐石のディナーをいただけるのは、実は日本ではここ、六本木ヒルズ店のみなのです(ちなみに“日本では”と但し書きを付けたのは、実は香港・尖沙咀の支店でも昼夜お食事をいただけるから)。京都の方に羨ましがられそう!?
〆は、名物・銀だら蔵みそ漬を使った土釜ごはん
“京の台所”錦市場のそばに本店を構える〈京都一の傳〉。揺るぎない名物は、秘伝の西京漬「蔵みそ漬」です。京都でも有数の老舗が醸した特別な西京味噌に、伏見の名蔵元がつくり上げた本格純米酒や木樽で2年熟成させた醤油など、古来から伝わる上質な調味料を合わせて味噌床に。そこへ、脂の乗った時期に獲った魚を丁寧に捌いて、二昼夜以上漬ける「本漬け」という製法で漬け……と、実に手間暇のかかったもの。丹精込められた「蔵みそ漬」を、東京で気軽にいただけるようになるとは。
ランチタイムには、ふっくらと焼き上げられた「蔵みそ焼」にご飯やおみおつけ、出汁巻卵などがつく豪華な定食が。そして、夜になるとおまかせコース¥8,800が登場します。全7品からなるお献立は、料理長の家里啓吾さんによる季節の食材をふんだんに盛り込んだ内容です。
味の調和の取れた品々をいただいた後の〆となるのが、「蔵みそ漬」の中で一番人気の「銀だら」を使った土釜ごはん。銀だらの旨味と西京味噌の甘やかな風味を纏った熱々のごはんをほおばると、味覚も、そして気分もどこかほっとしてしまうのは、日本人のDNAの為せる技でしょうか……あゝ、至福。
小石原はるか|Haruka_Koishihara
フードライター。1972年東京都生まれ。エンゲル係数が妙に高い家に育ち、レストラン通いをこよなく愛するように。マニアックな気質と比較的丈夫な胃袋で、これまで様々な食の世界にハマる。『BRUTUS』『東京カレンダー』など多くの雑誌やメディアで、食にまつわる記事の執筆やディレクションを担当。著書に『レストランをめぐる冒険』(小学館)『自分史上最多ごはん』(マガジンハウス)『東京最高のレストラン』(共著・ぴあ刊)など。
※2022年12月現在の情報となります。
※表示価格は全て税込価格です。
※店舗により臨時休業や営業時間を変更させていただく場合がございます。詳細は「六本木ヒルズの営業状況について」をご確認ください。
SHARE