フードライター小石原はるかさんをナビゲーターに迎えた連載企画。第四回目は、本場四川の流れを汲む〈老四川 飄香(ピャオシャン)小院〉へ。食欲をそそる伝統料理の数々をたっぷり堪能しました。
PHOTO BY SATOSHI FUKUDA
TEXT BY HARUKA KOISHIHARA
EDIT BY RCKT/ROCKET COMPANY*
辛いだけではない。古都・成都より伝わる四川料理を再現
四川料理を探求し続けるシェフ・井桁良樹さんが率い、名店として確固たる地位を築いている中国料理店〈飄香〉。都内に4店舗を構えています。その中でも、2018年にオープンした、こちら〈老四川 飄香小院〉は“老四川”という言葉からもニュアンスが伝わってくるように、昔ながらの四川料理を重んじています。四川=辛いというイメージが先行しがちですが、それだけでない、そしてここでしか出会えないお料理に、好奇心が大いに刺激されます。伝統的な四川料理の数々、いただきます。
スタッフ一丸となってもてなすという気持ち
厨房で働く皆さんの様子が見えるエントランスから店内へ進むと、チャイニーズでありながらどことなく西洋風のモチーフがあしらわれている空間が。これは、西洋の文化が流入してきた20世紀初めの四川・成都をイメージして構成されたのだそう。気軽にお食事ができるテーブル席に加えて個室もあり、少し改まった会食などにもしっかり対応していただけます。
昨年秋から料理長を務めているのは、井桁シェフの薫陶を受けた狩野友里さん。「自分がリーダーとして率いるというよりも、スタッフ全員でよいお料理を作っておもてなしをしたい、と思っています」とハキハキと心構えを語ってくださいました。
昔ながらの味付けと、こだわりの手作り豆腐
この日のお料理は「季節のディナーコースB」13,200円(2日前までに要予約)からの抜粋で。「特製前菜9種盛」は、代表の井桁シェフが日本に広めたといわれる「よだれ鶏」を筆頭に、9種類のお料理が少しずつ、1枚プレートに美しく並びます。その多彩なビジュアルに、いただく前から気分が高まるというもの。辛い・酸っぱい・甘いetc.、さまざまな味わいに、食欲が刺激されます。
そして「鮑と豚スネ肉の煮込み」は、魚介類とお肉を一緒に煮込むという調理法にすこし意外性を感じますが、異なる由来の旨味が合わさることで、味に奥行きがもたらされることを教えてくれる一皿。その後に登場するのは、四川の家庭料理だという「いんげん豆と四川漬物のカラカラ炒め」。身近な素材を使った素朴なお料理ですが、しみじみと噛み締めたくなる味わい。白いごはんがちょっぴり欲しくなりますが……ちょっと待った! ここでコースのトリを飾る「手作り柔らか豆腐のマーボー豆腐」が登場です。驚くべきは、味付けに使う調味料「醤(ジャン)」や辣油を作っているお店は数あれど、お豆腐まで作っているとは。作りたてのお豆腐ならではのみずみずしくなめらかな口当たりと、馥郁たる香りに魅了されます。
小石原はるか|Haruka_Koishihara
フードライター。1972年東京都生まれ。エンゲル係数が妙に高い家に育ち、レストラン通いをこよなく愛するように。マニアックな気質と比較的丈夫な胃袋で、これまで様々な食の世界にハマる。『BRUTUS』『東京カレンダー』など多くの雑誌やメディアで、食にまつわる記事の執筆やディレクションを担当。著書に『レストランをめぐる冒険』(小学館)、『自分史上最多ごはん』(マガジンハウス)、『東京最高のレストラン』(共著・ぴあ刊)など。
※2022年8月現在の情報となります。
※表示価格は全て税込価格です。
※店舗により臨時休業や営業時間を変更させていただく場合がございます。詳細は「六本木ヒルズの営業状況について」をご確認ください。
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