日本酒党が待ちに待った“新酒”の季節がやってきました。美味しい酒肴との組み合わせを考えるのも嬉しい時期です。今年は“新酒”のラインナップにこだわったお店で、新たな年のはじまりを祝いましょう!
TEXT BY TAKASHI TSUCHIDA
EDIT BY TM EVOLUTION.INC
❶ 雰囲気&日本酒ラインナップ良し。しかも財布に嬉しい高コスパ
——和食・酒 えん 虎ノ門(わしょく・さけ えん とらのもん)
1/8『和食・酒 えん 虎ノ門』のオススメ3本がこちら。中央の「鍋島 きたしずく」は、厚みのある芳醇な味わい。「きたしずく」とは酒米の名称であり、あまり出回っていないことから、お店でも人気が出始めたばかりとか。右の「七田」(しちだ)は、こちらも関東の店舗ではあまりお目にかかれない銘柄。「鍋島」「七田」は共に佐賀県の酒蔵のものだ。そして左は、山口県の「獺祭 三割九分」。吟醸香が香るフルーティーなお酒である。
2/8「日本酒 三種利き酒飲み比べ」¥1,170(獺祭選択時はプラス¥100)。専用トレーに、銘柄が印刷されたペーパートレーを敷くので、何を飲んでいるかが一目瞭然。記憶に残る素晴らしい演出だ。
3/8「えんのお造り盛り合わせ」¥1,300(1人前)。魚の旨味を感じてもらうべく、厚切りにしているのが特徴。内容は仕入れによって変化していく。もちろん、単品でお刺身を注文することも可能だ。
4/8「あて巻き」¥780は、いわゆる“ご飯を抜いた巻きもの”。鮮魚とシャキシャキ野菜を海苔で巻いたお酒のお供だ。ネタは鯵、もしくは真鯛の2種類から選べる。
5/8「鯛の土鍋ご飯」¥1,600は、2~3人で取り分けられる分量。テーブルで初めて蓋を開けるので、炊き上がりの芳しい香りや、湯気に包まれる幸せまで楽しめる。炊き上がりまでおよそ40分。注文を受けてから炊き始めるので、シメに頼む場合にも、最初に注文を済ませておくのがベストだ。月替わりで、香箱蟹、旬具材のメニューも登場するから、チェックをお忘れなく。
6/8“見せる収納”による、絵になる演出があちらこちらに。こういう仕掛けが、日本酒党の心を鷲掴みにする。
7/8職人の仕事を眺めながら、カジュアルに楽しめるオープンカウンター席。
8/8『和食・酒 えん 虎ノ門』では、複数の個室を用意。他人の存在を気にせず、酒宴を楽しめる。窓側の個室なら、眺望付きだ。
今や日本全国に展開する『えん』ブランドだが、その中でも『和食・酒 えん』は、美味しいものを食べつけてきた大人にアピールする『えん』グループの基幹ブランドである。いわゆる大手居酒屋チェーンにありがちな、にんにくや生姜による強い味付けに頼らず、この店では素材そのもので勝負する。リーズナブルな価格を実現しているのは、食材をグループ全体で仕入れ、徹底して余さず使い切る企業努力の為せる技だ。
同店は、コロナ禍による営業自粛期間を経て、再スタートと共にメニューも一新。日本酒を主軸としながらも、ワイン、ハイボール、クラフトジンなど多彩な種類を誇り、レモンサワーだけで5種類のラインナップを展開する。
そして日本酒は全国各地から性格の異なるものをピックアップ。「獺祭」や「亜麻猫」など、人気酒蔵も押さえつつ、これら全てを「三種利き酒飲み比べ」が出来るのも面白い。一杯60ml、3種で1合量を飲み比べ出来るこのシステムは、ひと晩で様々な種類の日本酒を体験したいという要望に合致! しかも、マンスリーで用意している月替りの日本酒メニューもあり、日本酒党たちを飽きさせないのだ。
PHOTO BY CHISATO NOGUCHI(NDPP.)
❷ 鮮度のいい魚介をつまみに、新酒生酒を心ゆくまで
——笑壷(えつぼ)
1/6右の「MIYASAKA」は、「真澄」で有名な「宮坂酒造」の別レーベル。華やかな香りを持ち、搾りたての生原酒らしい芳醇さを備えている。中央の「ばくれん」は、山形のお酒。辛口だが、後から香りが広がってくる。そして左が「八海山」。大吟醸だが、新潟の酒蔵らしく淡麗。飲み疲れしないのが特徴だ。
2/6生牡蠣は、『笑壷』では通年で提供している。取材日は岩手県の山田湾産(¥693)。北海道、東北、九州を含め、その日の仕入れでもっともいいものを全国から取っている。
3/6「いぶりがっことクリームチーズ」¥737は、発酵食の掛け合わせで旨味が増大。胃を心地良く刺激してくれるはず。
4/6「金華さば一夜干し大」¥1,738。大きな身は、脂のノリもピカイチ。2〜3人でシェアして。
5/6カウンター席に加えて、テーブル席も用意。数名での宴席需要にも答えてくれる。
6/6ご利益ありそうな素敵な店名。新年のスタートに、是非訪れてみては?
「アークヒルズサウスタワー」完成と同時に、B1フロアに平成26年1月開店した『笑壷』。オーナー料理長は、溜池山王で33歳の時に独立して店を構え、以来16年間、毎日欠かさず築地・豊洲に通い、自らの目で仕入れする目利きだ。
「本当に毎日通っているので、業者さんも手を抜かないんです(笑)」と、オーナー料理長が語るように、この店の魚介は鮮度が抜群。それも寿司店を営んでいた実父の教え「お客さんに喜んでもらうのが、商売の基本」を令和の時代に守るべく“薄利多売”をここ、六本木の地でブレずに実現しているからだ。
店舗名の由来は、「笑うカドには福来たる」から。着席すると、まるで古民家のようにほっこりとした雰囲気ながら、藍染の暖簾が際立つスタイリッシュな側面も持ち合わせている。
グランドメニューは、もっぱら魚介が中心。仕入れたネタが尽きれば、その日は打ち切り、という分かりやすさで、あるものを美味しく食べてもらおうという気持ち良さに溢れている。
笑壺|えつぼ 住所 東京都港区六本木1-4-5 アークヒルズサウスタワーB1F 電話 03-3505-3680 営業時間 平日11:00〜15:00(L.O.14:00)/17:30〜23:00(L.O.22:00)、土曜・日曜・祝日11:00〜15:00(L.O.14:00)/ 17:00〜21:30(L.O.20:30) 定休日 日曜・祝日 ※各種クレジットカード、交通系IC、QRコード決済利用可
PHOTO BY CHISATO NOGUCHI(NDPP.)
❸ ふっくら焼き上げた炭火焼きの味を、限定日本酒で
——七代目 寅(ななだいめ とら)
1/7「奥播磨純米おりがらみ」は、味わいがしっかりとしていて、料理にも負けない力強さ。「飛露喜 愛山」は通常ルートでは出回らず、年末年始のみ入手できる希少アイテムだ。「ばくれん」は、辛口スッキリの飲み口で、繊細な料理でも邪魔しない。この時期、お勧めの3本は、全て冷やで提供。
2/7「お造りの盛り合わせ」1人前¥1,600(写真は2人前)。その日仕入れたネタの中から4品を盛り合わせ。取材日は、めばちまぐろ、ヒラメ、寒鰤、生しらす。見た目の美しさだけでなく、大満足の美味しさだ。このお値段はかなりお得!!
3/7注文した食材に火が通っていく様をカウンター越しに見ながら、一杯やるのがこの店の楽しみ。炭火焼きのコツは、やはり火力。この強さは、自宅では再現できない。
4/7「炭火焼き 黒毛和牛の黒胡椒焼き」¥2,080。国産の黒毛和牛を胡椒と岩塩で味付け。お好みでわさびを効かせて、さっぱりといただく。
5/7「炭火焼き 寒鰤」¥1,980。厚切りにした鰤の切り身を炭火で焼き上げた一品。味付けは塩のみでシンプルに。素材の旨味とふんわりとした食感を楽しむ趣向だ。
6/7店奥には、半個室の空間も用意。こちらの席を希望する場合は、予約時にリクエストを。
7/718席のL字型カウンターとテーブル席が並ぶ店舗内観。囲炉裏の火力で店内全体がほっこり。真冬でも身体が暖まって、居心地がいい。
表参道エリアで囲炉裏の炭火焼きを楽しめるのが、ここ『七代目 寅』だ。オープンから18年目を迎えるこの店舗では、魚介も肉類も、注文を受けてから囲炉裏で丁寧に焼き上げる。
炭火はガス・IHと違って圧倒的に火力が強く、遠赤外線効果で食材に一気に火が通る。比較的短時間で調理が終わるので、食材の旨味や水分が抜けずに、封じ込めることが叶うのだ。魚の身はパサつかず、極上にふっくらとした焼き上がりに。中身の水分が抜ける前に、調理が完了するからだ。
春先は鯛、6月は鮎、梅雨時期は鰯、盛夏は鯵、秋は鮭と、旬の食材を全国各地からお取り寄せ。そして今の時期は、脂の乗った寒鰤が、この店のシグネチャーメニューとなっている。この旬の魚と日本酒が、なんとも合うのだ。
日本酒は、東北の酒蔵が多いものの、全国各地の銘柄を網羅。中でも「飛露喜」は欠かさず用意しているそう。メニューには15銘柄程度を載せているが、店長曰く、「メニューに載せていない銘柄も常時5、6本程度用意しているので、その日のストックについては、スタッフにお問い合わせを」。日本酒は一部を除き、¥750〜¥1,600の範囲で揃えているそうだ。
七代目 寅(ななだいめ とら) 住所 東京都渋谷区神宮前4-4-8 グランブルー表参道B1F 電話 03-5474-5959 営業時間 11:30〜14:00(L.O.13:30)/17:00〜23:00(L.O.22:00) 定休日 無休(火曜は夜のみ営業) ※各種クレジットカード利用可
PHOTO BY HISAKO HAGI
※ 2022年1月現在の情報となります。
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