GIFT FROM THE RANCH

鉄板焼『けやき坂』本多良信料理長が、『竹内牧場』を訪問——『グランド ハイアット 東京』オリジナルの「けやき坂 ビーフ」が出来るまで

東京で生まれた食材には、料理人を唸らせる逸品がある。中でも『グランド ハイアット 東京』の鉄板焼『けやき坂』本多良信料理長が自ら飼育まで手掛ける「けやき坂 ビーフ」は、志の高い生産者との強い繋がりの中で育まれた非常に貴重な食材だ。鉄板焼店がオリジナルビーフを提供するだけならほかにも数例あるが、自ら飼育まで手掛けるというのは類を見ない。今回は、その非常に貴重な現場に赴いた。

TEXT BY TAKASHI TSUCHIDA
PHOTO BY HISAKO HAGI
EDIT BY TM EVOLUTION.INC

keyakizakag1-1
1/4「けやき坂 ビーフ」をアラカルト注文すると、このような形で提供される。3種のソースでの“味変”も楽しみたい。
keyakizakag1-2
2/4カウンター越しに、目の前の鉄板で焼いてくれるのも楽しみのひとつ。一流料理人の軽やかな手捌きに酔いしれたい。
keyakizakag1-3
3/4霜降りのサシが美しく入った「けやき坂 ビーフ」。きめ細やかで柔らかく、味わい深いのが特徴。
keyakizakag1-4
4/4鉄板焼『けやき坂』の店内には、産地直送の新鮮野菜もズラリ。

『グランド ハイアット 東京』の鉄板焼『けやき坂』では、オリジナルビーフを牛の飼育から手掛けている。その名も「けやき坂 ビーフ」。東京都内唯一のブランド牛であり、年間で約140頭しか出荷されない希少な秋川牛に、さらに独自の餌を与えて大切に飼育した黒毛和牛だ。

その現場は、東京・秋川の『竹内牧場』。かつては和牛の生産が栄えたこの界隈でも、今ではたった1軒だけ現存する貴重な生産者だ。

「月に数回、私を含むホテルスタッフが『竹内牧場』を訪れ、私たちが独自に開発した餌を現場で調合しに行っています。ホテルに出荷される牛は、この特別な餌を食べて育った個体だけになります」(本多良信料理長)

「人間と同じように身体に良いものを牛に与えたい」という観点から選ばれた食材とは、キヌア、カカオ、ブルーベリー、海藻といったスーパーフード。これらを独自の割合で配合、しかるべきタイミングで牛に与えている。

『竹内牧場』では、岩手から仕入れた黒毛和牛の雌のみを飼育。この黒毛和牛は、三重・松坂、沖縄・石垣など、日本各地でブランド化が進んでいるが、そもそも黒毛和牛に優劣はなく、餌の内容と飼育環境で肉質は変化する。

そこに目をつけたのが本多料理長だった。そもそも飼育現場が近ければ、現地に自ら足繁く通うことができる。そこでは飼育環境の確認のみならず、ホテルが餌づくりに乗り出し、積極的に飼育に関わることで、さらに良質な肉質を得られると踏んだのだ。

同時に、“地産地消”という観点で地域の活性化に貢献。奥多摩湖を擁する自然豊かな理想的環境の中で育ったこの貴重なブランド牛を、東京の最上級ホテルカスタマーに提供する。その理想的な流通システムを、ホテル主体で構築することが叶った。加えて輸送時のCO2削減などSDGsの観点でも、ハイアットグループらしい最適解を導いている。

 

keyakizakag2-1
1/4牛舎の中で牛が座っているのは、リラックスしている証拠。清潔なウッドチップが敷かれ、居心地が良さそう。
keyakizakag2-2
2/4牛は全て個体番号で管理。良く食べ、良く水を飲み、健康的に育っている。
keyakizakag2-3
3/4『竹内牧場』は、清らかな秋川水系の地下水を使用した理想的な生育環境を誇る。
keyakizakag2-4
4/4牛舎の水は清潔そのもの。この水を存分に与えることで、竹内牧場の牛が健やかに育つ。

『竹内牧場』を率いる竹内孝司さんは2代目。昭和30年代に先代が乳牛1頭から酪農業をスタートして、今ではおよそ200頭余りの和牛生産にまで拡大している。その竹内さんのこだわりは、牛にストレスを与えないことだ。そのため牛舎の清掃は毎日念入りに行い、床面には清潔なウッドチップを敷いている。

『竹内牧場』では、牛がリラックス状態を保ち、食後は床に座って落ち着いている光景が見られる。これは、床が清潔であることの証だ。床が糞などで汚れていると牛は床に座ることができず、ストレスを抱えながら立ったままの状態を余儀なくされる。

除角をして、牛同士の喧嘩をさせず、必要に応じて一頭ごとにビタミンコントロールを行い、気を配る。夏の暑い日は扇風機を回して、牛舎内の温度を下げる。牛舎の仕事は重労働である一方で、『竹内牧場』の牛たちはこうして手塩にかけられ、すくすくと育っている。

また牛は日々、大量の水を飲むが、『竹内牧場』では秋川渓谷を流れる天然のミネラル水を使用している。化学処理した水道水ではなく、清らかなミネラル水を牛に存分に与えることができることもまた、この牧場の優位点だ。

さらに竹内孝司氏が導入したのは、けやきチップである。けやきとは広葉樹。広葉樹は牛の糞と混ざることで水分を適度に吸収して腐り、堆肥窯の中で理想的に発酵が進んで、高品質な堆肥となる。その堆肥は、東京の志の高い農家へと運ばれていく。かつての農業・畜産業における共存サイクルを、竹内氏は現代においてもう一度、復活させているのだから頭が下がる。

 

keyakizakag3-1
1/3『竹内牧場』の2代目、竹内孝司さん。「畜産業は年中無休の重労働だが、この貴重な秋川牛を次の世代へと伝えたい」と抱負を語る。
keyakizakag3-2
2/3本多料理長も自ら定期的に牧場へと足を運び、牛の生育状況を確認。
keyakizakag3-3
3/3鉄板焼『けやき坂』の本多良信料理長。「けやき坂 ビーフ」の取り組みは、本多料理長が主体となり、2017年から取り組んできたものだ。

さて、こうして高い飼育技術により提供される「けやき坂 ビーフ」は、店舗に運ばれた以降も適切な処理が施され、一定期間熟成させた後に提供される。その味わいは、脂の質に表れている。他の黒毛和牛と比べて、脂の溶け具合が柔らかく、口の中でふわりと溶けていくのだ。もちろん肉質そのものも柔らかく、味わい深さを楽しめるはずだ。

「けやき坂 ビーフは脂が強いので、表面をしっかりと焼くことを心がけています。また部位によって焼き加減のお勧めが異なりますので、是非注文時に尋ねてください」(本多料理長)

「けやき坂 ビーフ」は、ディナーコースでは100gを提供。またアラカルトでは10g単位でオーダーすることが可能だ。

「けやき坂 ビーフ」のメニュー例は、ディナーコース¥19,800~、アラカルト テンダーロイン(120g、180g)各¥12,100、¥18,150、アラカルト サーロイン(150g、230g)各¥11,000、¥16,830。

鉄板焼『けやき坂』(テッパンヤキ ケヤキザカ) 住所 東京都港区六本木6-10-3 グランド ハイアット 東京4F 電話 03-4333-8782 営業時間 ランチ 平日11:30〜15:00(L.O.14:30)、ランチ 土曜・日曜・祝日11:30〜15:30(L.O.15:00)、ディナー 18:00〜22:00(L.O.21:30) 定休日 無休  ※各種クレジットカード、IC決済、QRコード決済使用可

※ 2021年11月現在の情報となります。
※ 表示価格は全て税・サービス料別となります。