Fresh Tempra

心躍る天ぷらの季節。旬の食材で身体を目覚めさせよう

素材の力がダイレクトに伝わる天ぷらで、日本の旬を感じませんか? 魚介類ばかりでなく、野菜も美味しい天ぷら屋さん3軒をご紹介します。

EDIT BY TM EVOLUTION.INC

❶ 季節の滋味を、丁寧な手仕事で仕上げる
——天婦羅 天蒼々 六本木ヒルズ店(テンプラ テンソウソウ ロッポンギヒルズテン)

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1/7※取材時3月の野菜の天ぷらの例。素材は季節によって随時変更。現在は、鱧、岩牡蠣、鮑、雲丹、とうもろこしなどを提供。
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2/7キス(左)と、銀宝(ぎんぽう・右)。ふんわりとしたキスの食感に対して、銀宝は身が詰まっており、全く異なる味わい。漁獲高に左右されるものの、キスは通年で江戸前を提供。銀宝は6月末まで提供される。
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3/7明石産の真鯛と本ミル貝のお刺身の先付。植物性プランクトンを摂取して身が大きくなった貝類はとてもジューシー。
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4/7江戸時代から天ぷらにして食されてきた、江戸前の「銀宝」(ぎんぽう)。身と皮の間にゼラチン質があり、しっかりとした白身魚らしい食感が特徴。
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5/7天ぷらは客の食の進みを見ながら、一品ずつ提供される。カウンターはL字型に12席。ほかに4名用と6名用の個室が1室ずつ。
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6/7特徴のある食器使いは、経営母体「際コーポレーション」が得意とするもの。彩り豊かな器の数々で、移ろう季節を愛でたい。
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7/7料理長の佐藤啓太氏。佐藤氏の揚げ油は、綿実油と太白ごま油に、煎ったごまを合わせたもの。カリッとした軽い仕上がりに、ごまの風味が芳しく香り、食べ進めても重さを感じさせない。

店名の“天蒼々”とは、中国に伝わる詩の一節から。スッキリとして雑味がなくキリッとした天ぷらを、澄み渡った晴空の情景になぞらえて、運営会社「際コーポレーション」の社長が命名した。

料理長を務めるのは、天ぷらの名店で研鑽を積んできた佐藤啓太氏。佐藤氏の隙きのない手さばき、揚げに対する真摯な姿勢をカウンター越しに目にするのも、同店を訪れる楽しみのひとつだ。

夜のメニュー構成は、「おすすめ」(先付、強肴、活車海老2本、魚5種、野菜5種、食事※天丼、天茶、うなぎ天丼から選択、水菓子)¥15,000、または「軽め」(活車海老2本、魚4種、野菜4種、食事※かき揚げ天丼、かき揚げ天茶から選択、水菓子)¥8,800のふたつ。別途、アラカルトでお好みの天ぷらを追加可能だ。

また『天蒼々』では、スイス産の白ワインを天ぷらに合わせたい。女将のツテでインポーターから特別に買い付けた選りすぐりの銘柄は、フランスワインほど余韻が口内に残らず、さっぱりとして天ぷらの油切れがいい。かといって味わいが弱々しいわけではなく、飲んだ時のパンチもしっかりと効いているのだ。

TEXT BY TAKASHI TSUCHIDA
PHOTO BY CHISATO NOGUCHI(NDPP.)

天婦羅 天蒼々 六本木ヒルズ店(テンプラ テンソウソウ ロッポンギヒルズテン) 住所 東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ ウエストウォーク5F 電話 03-3478-5525 営業時間 11:00〜15:00(L.O.14:00)/17:00〜23:00(L.O.21:30)、土曜・日曜・祝日11:00〜23:00(L.O.21:30) 定休日 施設休業日 ※カード使用可 ※価格は税・サービス料別 ※六本木ヒルズ等各施設では、新型コロナウイルスの感染拡大防止の予防対策を徹底し営業を再開しております。また一部の店舗では営業時間を短縮、もしくは臨時休業を継続しております。ご来店の際には事前に各店舗へお問い合わせください

❷ 細部にまでこだわった職人技による風流な天ぷら
——天ぷら 逢坂(テンプラ オオサカ)

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1/7左からそら豆、ふきのとう、アスパラの野菜の天ぷら。春に続き初夏も天ぷらにして美味しい素材が様々に出てくる(※取材時3月の野菜の天ぷらの例。素材は季節によって随時変更します)。
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2/7そら豆、ふきのとう、アスパラなどの野菜は、常に旬のものを厳選して仕入れている。
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3/7左は白魚、右はキスの天ぷら。ほかに、春なら稚鮎、アオリイカ、メゴチなど、冬なら金目、太刀魚など、魚も季節によって旬のものを天ぷらにしている。
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4/7小鉢の一例。舌触りもなめらかでほっこりとする優しい味わいの胡麻豆富。
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5/7木の美しいカウンターで、一品一品揚げたての天ぷらを食べられる。皿や漆器などの細部の設えにもセンスが光る。
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6/7日本酒はもちろん、ワインも吟味したものを揃えている。カリフォルニア・ナパの「ケンゾーエステート」からソーヴィニオン・ブランの傑作と評される白ワイン「あさつゆ」(ハーフボトル)を、お値打ち価格の¥7,000で提供。天ぷらには意外にもハイボールも合う、とお勧めしてくれた。
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7/7オーナーの大阪彰宏氏。天ぷらの名店で修業した後、自身の店を赤坂で開く。その後、虎ノ門で開業、19年に渡り正統派の天ぷら専門店を営み続けている。

清楚で品のいい天ぷらを提供している『逢坂』のご主人、大坂彰宏氏。天ぷらは揚げる前の仕込みに手間暇がかかる。「素材は天ぷらにした方が、より美味しくいただけるものを仕入れるようにしています」と大坂氏。「そして素材の大きさや特性によって、揚げ衣のつけ方を厚くしたり薄くしたりと調整します」。

例えば穴子は捌きたての方がふっくらと仕上がる。一方でアオリイカは3、4日寝かしてから使った方が甘みが出る。素材ごとの特性をひとつ一つ丁寧に見極めて、天ぷらに仕上げている。さらに揚げ衣には粉を冷やして使い、液体にしてからさらに冷やし、なるべく作りたての衣を使う。長年培った勘を頼りに、素材ごとに適温と適した揚げ加減で、客の進み具合を見ながら胡麻油で揚げていく。

天ぷらには天つゆ、塩、レモンの3種が添えられる。大坂氏はあらゆる塩を吟味した結果、サラサラしていて天ぷらにつけやすいパキスタンのピンク岩塩を使っている。初夏の訪れや秋の気配など、食べながら季節の変化を感じられるのも天ぷらの魅力。その魅力がふんだんに詰まったコースは1人前 ¥16,500(夜)。

TEXT BY YOSHIKO NAKASHIMA
PHOTO BY SHIGEYASU GUSHIMA

天ぷら 逢坂(テンプラ オオサカ) 住所 東京都港区西新橋2-13-16 多田ビル1F 電話 03-3504-1555 営業時間 11:00〜14:00(月曜~土曜)/17:30〜23:00(最終入店21:00)、土曜17:00~23:00(最終入店21:00)、昼は予約のみの営業 定休日 日曜・祝日・第3土曜 ※クレジットカード使用可 ※昼は税別、夜は税・サービス料別 ※新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、営業時間は前後する可能性があります。ご来店の際には事前に店舗へお問い合わせください

❸ 素材の形を美しく留めて揚げる天ぷら
——カブ西麻布(カブ ニシアザブ)

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1/8アイナメ、そら豆と海老、たらの芽、桜の塩漬けの天ぷら。いずれも素材の形が分かるほどの衣の薄さ。この薄い衣のため食感がとても軽く、かつ素材の持ち味をしっかりと味わえる(※取材時3月の野菜の天ぷらの例。素材は季節によって随時変更します)。
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2/8海老と筍。筍はかつお味をつけて、木の芽を挟んでから揚げている。海老の天ぷらは新鮮な海老をからっと揚げており、尻尾から別添えの頭まで美味しくいただける。
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3/8この日の先付けは、京の生湯葉、ウニ、菜の花のべっこう餡かけ。おぼろ豆腐のようなふわふわの生湯葉とウニのコクが絶妙なハーモニーを奏でる一品。
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4/8天ぷらには天つゆ、ミネラル分が多くて甘みがある沖縄の雪塩(抹茶、梅、柚子など季節によって異なる)、そして自慢の塩ポン酢を用意。昆布、煮切り酒、塩と、レモンの代わりに橙を合わせた塩ポン酢は、天ぷらの味をよりさっぱりと品良くしてくれ、いくらでも食べられそう。
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5/8カウンター席に座れば、職人が目の前で揚げたての天ぷらを出してくれる。
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6/8個室が2室あるので、家族や友人、カップルでの記念日や、ビジネスの会食にも利用できる。
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7/8隠れ家的な雰囲気で、入り口のドアを開けた先の地下への階段を降りていくと、大きな生花が出迎えてくれる。
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8/8料理長の菅原辰弥氏。和食を18年、天ぷら専門で18年のキャリアがあるベテラン料理人。これまで和食と天ぷらの作り方に試行錯誤を重ねてきたが、今も新しい試みに挑戦している。

西麻布の住宅街の中にある隠れ家的な天ぷら専門店。食材は高級店並みのものを使いつつ、価格は抑え気味のコースを提供している。

「毎朝、魚介は刺身でも使える新鮮なものを仕入れて天ぷらにしています。そして旬の食材を使うことを心がけています」と料理長の菅原辰弥氏。菅原氏はこれまでより美味しい天ぷらを作るため、様々な研究を重ねてきた。まず揚げ油は和紙で漉した胡麻油に、綿実油をブレンドしたものを使う。ブレンドすることにより胡麻油100パーセントよりも香りがマイルドになる。衣は食材にとても薄くつくように調整し、揚げ上がった時に野菜の形がそのまま分かるほどの薄さに仕上げている。

食べた時の食感が天ぷらとは思えないほど軽く、コースで食べた後も胃にもたれないと客からも評判。その他、先付けなどで使われる出汁などにも、36年のキャリアで培った技術が生かされている。季節を感じられる天ぷらはコースのみの提供で¥9,000(天ぷら8品)、 ¥12,000(10品)、¥15,000(料理長のお任せ)の3コース。全てに先付け、箸休め、食事、デザートが付く。

TEXT BY YOSHIKO NAKASHIMA
PHOTO BY FUMIAKI ISHIWATA(NDPP.)

カブ西麻布(カブ ニシアザブ) 住所 東京都港区西麻布1-9-7 B1F 電話 03-5772-1395 営業時間 18:00〜23:00(最終入店21:00)定休日 日曜、不定休 ※クレジットカード使用可 ※価格は税・サービス料別 ※新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、営業時間は前後する可能性があります。ご来店の際には事前に店舗へお問い合わせください