昨今流行りの“赤身肉”“熟成肉”の次に来るのは、“希少牛”。一般の流通ルートでは出回らず、牧場主の許可が出たお店にだけ産地直送されるという、こだわりに満ちた牛肉。島根県産の「かつべ牛」に「石見牛」、イタリアの「キアニーナ牛」などなど……。ここでは、そんな価値ある牛肉の魅力が満喫できる名店2軒へご案内します。
TEXT BY YOSHIKO NAKASHIMA
PHOTO BY YUJI YAMAZAKI(DAISAKU NISHIMIYA OFFICE)
EDIT BY TM EVOLUTION.INC
❶ 日本での出逢いは希少。イタリア「キアニーナ」のステーキを
Fiorentina(フィオレンティーナ)
店名を冠したスペシャリテ、ビステッカ・アッラ・フィオレティーナ(Tボーンステーキ)は、イタリア・フィレンツェの郷土料理。こちらでは、イタリアでも生産量が少なく、非常に希少な「キアニーナ牛」を、フィレとサーロインの両方が食べられるTボーンステーキのスタイルで提供している。
「カット肉ではなくTボーンにすることで、塊肉の醍醐味である骨と筋の周りの、肉の旨味を一番感じられる部位を味わっていただけます」と、古村和也料理長。
ステーキをひと口食せば、和牛ともアメリカ牛とも違う、独特の深いコクのある旨味が広がる。塩・コショウだけでも充分だが、マスタードソースやアンチョビとケッパーが入るサルサヴェルデソースをつけても美味。自分の好みで複数の味に変えて楽しめるのも魅力だ。キャンティクラシコやブルネロなどの赤ワインと合わせれば、肉の旨味はより一層広がっていく。
「キアニーナ牛」は脂肪が少なく、さらにコレステロール値が他の牛肉と比べて低くヘルシーな牛肉として知られている。高タンパクで鉄分が多く、とても柔らかい肉質。同店では独自のルートで、この希少なキアニーナ牛を、発祥の地にある『サン・ジョッベ農園』から確保。1カ月30食の限定提供で、毎月末には完売しているという人気メニューだ。
❷ 希少で、とろけるように柔らかい石見和牛
THE STEAKHOUSE (ザ・ステーキハウス)
2016年12月9日に、アメリカンスタイルのステーキ料理専門店としてリニューアルオープンした『THE STEAKHOUSE』。料理を取り仕切る宮崎 ブラスザック・トーマス シェフは、「オーセンティックなアメリカンスタイルのファインダイニングを目指していきたい」という。店内はホテルらしい高級感があり空間的にも広々としていて、ゆったりと食事を楽しむことができる。
ブラスザックシェフが、日本全国にある数多くの和牛の中から、石見和牛と仙台和牛を選んだのは「価格と品質のバランスがいいから。日本三大和牛ほど高額ではないので、メニューもこのお値段でお客様に提供できます」。そして「口の中に入れるとマシュマロのようにとろけていく柔らかいところが特長です」とシェフ。
特に石見和牛は島根県で年間約200頭しか生産されない希少牛として知られる。確かにナイフが不要なほど容易に切ることができ、ステーキの印象が変わるほど柔らかい。同店では肉の旨味がより引き立つよう、例えば赤ワインソルト、トリュフソルト、レモンソルトなど、週替わりの3種の塩で提供している。
SHARE