THE STORY OF JAPANESE TEA

「いつものお茶」がやすらぎの一杯へ_創業128年の「野瀬園」に聞く、煎茶・抹茶の美味しい淹れ方

暮らしを豊かにするアイデアを、ヒルズエリアのエキスパートに教えてもらう連載「Tips for Life」。今回は、知ってるようで意外と知らない日本茶の話。新茶の季節に、煎茶の美味しい淹れ方や簡単な抹茶の点て方、お茶のソボクな疑問を、アークヒルズフロントタワーにある明治23年創業の老舗、株式会社野瀬園の野瀬成夫社長に聞いた。

TEXT BY MIHO MATSUDA
PHOTO BY MANAMI TAKAHASHI

美味しい日本茶はペットボトルのお茶にあらず

「まずはこれを飲んでごらんなさい」と野瀬社長が手渡してくれた、煎茶のお椀。爽やかな煎茶の香りと、ふんわりとした甘さが口の中に広がる。

「これが日本茶の本来の味わいです。最近ではペットボトルのお茶も増えましたが、本来のお茶とはまた別物だと考えてください」

淹れてくれたのは、茶葉を贅沢に10g使った濃い煎茶。煎茶特有の苦味はほとんどなく、豊かな甘みと旨味を感じられる。

「日本茶の美味しさはテアニンです。テアニンは低い温度でも抽出できるのですが、渋みのタンニン、苦味のカフェインは温度が高くなると抽出量が増えるので、お湯の温度が70〜80℃で一番バランスのいいお茶の味になります」

野瀬園 本店に併設されているカフェでは、淹れたての煎茶を味わうことができる。煎茶(ホット)¥230

淹れ方だけでなく、深い味わいの秘密は茶葉にもある。

「煎茶の作り方は、まず茶園で収穫した新鮮な生葉を蒸し、冷却、揉み、乾燥という工程を経て『荒茶』になります。そこからさらに切断・選別、火入れ(乾燥)、ブレンドという工程を経て店舗で販売される製品になります。野瀬園の茶葉は『特蒸し煎茶』といい、通常の約3倍の時間をかけて、深蒸しよりもさらにじっくり蒸しあげているので、深みのある味わいと香りを楽しんでいただけるんです」

美味しいお茶の決め手は「ブレンド」

会社の会議で出されるようなお茶と、味わい深い香り豊かなお茶。その違いは製造過程にあるのだろうか。それとも茶葉の種類や産地なのか。

「お茶の産地は、静岡、鹿児島、京都(宇治)、福岡(八女)など、それぞれに個性が違いますが、厳密にいうと、畑ごとでも味わいが異なります。日当たりが変われば成長状態が変わるわけですから。そこで、重要になるのはお茶のブレンドです」

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1/8煎茶 赤坂No.1(100g)¥5,400(税込)
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2/8煎茶 アークヒルズNo.1(100g)¥2,160(税込)
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3/8玄米茶 六本木No.1(100g)¥756(税込)
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4/8荒茶(100g)¥648円(税込)
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5/8玉露 赤坂No.1(100g)¥5,400(税込)
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6/8人気の南部鉄器はバリエーション豊か。大使館や外資系企業の多い赤坂では、海外へのお土産にカラフルな南部鉄器を求める方も多い。
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7/8日本の風情を感じる和紙をまとった茶筒で、テーブルの上も華やかに。
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8/8茶葉は窒素を封入し、冷蔵保存した状態でフレッシュさをキープ。いつでも新茶のような美味しさ。

野瀬園でも、味と香り、お茶の色合いが最高の状態になるように独自にブレンド。それを茶碗に3gずつ入れ、直接お湯を加えた「拝見茶碗」で、味、色、香りをチェックする。さらに、1杯につき茶葉10gの濃いお茶でも味わいを確かめている。

「お茶は農作物だから天候によって傾向が異なります。茶葉の様子を見ながら、最適の蒸し時間を見極め、お茶の個性を生かしてブレンドする。茶問屋は死ぬまで勉強なんです。日本茶はワインのように何年も熟成させることはありません。新鮮さがお茶の味わいのひとつですので、茶葉は少量ずつ買って短期間で飲みきってください。それも、お茶を楽しむ大切なポイントです」

また、これからの季節は、オフィスでも手軽に楽しめる冷茶もおすすめ。

「特蒸しの茶葉なら、急須に茶葉と水と氷を入れて3分ほどで冷茶になりますので、ぜひお試しください。日本茶は日本の大切な文化です。手軽なお茶もいいですが、ぜひ本当に美味しいお茶を味わってください」

基礎から学ぶ、美味しいお茶の淹れ方

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1/5煎茶の淹れ方1 茶葉はひとり3〜10g、お湯の温度は70〜80℃ 煎茶には、3〜5分ほど沸騰させ適温に下げたお湯を使用する。沸騰したお湯を人数分の茶碗に入れて、お湯を冷ましそれを急須に戻してお茶を淹れると適温になりやすい。煎茶は70〜80℃、玉露は50〜60℃。茶葉の量はお好みで。
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2/5煎茶の淹れ方2 人数分を均等な濃さ・量に淹れる 濃さが均等になるように、少しずつ注ぎ分け、最後の一滴まで絞り切る。写真は、10gの茶葉を使用した状態。濃い目のお茶だが、適温で淹れるとお茶の深い甘みを味わうことができるので、ぜひお試しを。
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3/5抹茶の点て方1 抹茶は約1.5g、お湯は70〜80℃ 抹茶を茶杓で2〜3杯(約1.5g)入れ、70〜80℃のお湯を少量注ぎ、茶筅で溶くように混ぜる。ちなみに、抹茶の材料となる茶葉は、玉露と同じように摘採前の一定期間に茶園を覆って育てる碾茶(てんちゃ)。
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4/5抹茶の点て方2 抹茶を点てる さらにお湯を注ぐ。ダマができないように注意しながら、なめらかな泡が立つまで茶筅を振る。(注)今回の抹茶の淹れ方は、ご自宅で美味しく飲むためのものです。正式な点て方は茶道の流派により異なります。
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5/5抹茶の点て方3 きめの細かい泡を目指す なめらかな泡がたったらOK。自宅で楽しむなら、最後に茶こしを通してダマを取り除いてもいい。泡は消えないのでご安心を。

意外と知らない日本茶の基礎知識

お茶の新芽。これが緑茶、ほうじ茶、紅茶、烏龍茶など様々なお茶になる。

❶ 煎茶と紅茶はもとは同じ葉

琥珀色の紅茶と、綺麗な黄金緑色の日本茶は、もともと同じ種類の茶葉から作られている。収穫したての茶葉を新鮮なうちに蒸して酸化酵素の働きを止めたのが緑茶、摘んだ茶葉を揉んで葉に含まれた酸化酵素を活性化し、完全に発酵させたものが紅茶になる。烏龍茶も茶葉は一緒で、半発酵したもの。

「玉露 赤坂No.1」¥5,400。煎茶に比べると茶葉の緑が濃く、柔らかな香り。

❷ 煎茶と玉露との違いは育て方

高級茶として有名な玉露は、上品で豊かな甘みが特長。それは、茶葉を摘採する前に茶園を覆って、日光を遮っているから。旨味成分であるテアニンが増加し、まろやかな旨味のあるお茶になる。カフェインと葉緑素も多く含まれているため、美容にも効果が期待できると言われているとか。

美しい茶畑。茶葉は春から秋にかけて4回収穫される。

❸ ほうじ茶はカフェインが少ない理由とは?

立春から88日目(八十八夜)の4月〜5月頃に収穫されるものが「新茶」、6月頃に収穫されるのが「二番茶」、7〜8月頃が「三番茶」、9月頃が「四番茶」または「秋冬番茶」と呼ばれている。季節を経るごとに茶葉のカフェイン含有量が減少するので、ほうじ茶には秋頃の茶葉を使うことが多い。さらに炒ることで茶葉のタンニンやカフェインが少なくなり、渋みや苦みが少ない香ばしい味わいになる。美味しいほうじ茶は熱い熱湯で淹れるのがコツ。

赤坂 野瀬園 本店 1890年(明治23年)に赤坂で茶問屋として創業して以来、老舗の伝統を守りながらも、新たなお茶の味を追求し続けている。アークヒルズフロントタワーにある本店に併設されたカフェでは、本文でご紹介した特蒸し煎茶・抹茶をはじめ、美味しいお茶と甘味を楽しむことができる。

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