食材は“美味しい”だけでなく、どのように作られているかが重要といわれる時代。オーストラリアで、感度の高い人々に支持されるダイニング「フラテリパラディソ」のヘッドシェフを務めた中安俊之シェフは、現在住んでいる飛騨高山では野菜作りに関わっている。シェフ自慢の野菜を盛り込んだシンプルなカプレーゼを食べれば素材の大切さが見えてくる。
TEXT BY Jun Okamoto
PHOTO BY Takahiro Imashimizu
INTERIOR PHOTO: FRATELLI PARADISO
トマト 原産は南米の高原地帯。高温多湿を嫌うので、旬は真夏ではなく春から初夏と秋から初冬。つまりこれから秋にかけて美味しくなる。
ビーツ 地中海沿岸地方原産のアカザ科の根菜。砂糖の原料になる甜菜と同類でショ糖を多く含んでおり独特の甘味がある。旬は夏と晩秋の2回。
料理を通して食材の背景や生産者の思いまでも伝えていきたい
2年前に飛騨高山でオーベルジュをスタートさせた中安シェフ。そこで使う野菜は、地元農家に声をかけて、自分が使いたいものを育ててもらっているという。生産者の数は徐々に増えて、今では20軒ほどの農家と付き合いがある。
中安さんが扱いたいと思っているのは、「エアルーム野菜」と呼ばれる、50年以上は人為的に交配されていないもので、栽培地の特性を活かした伝統品種だ。シドニーのフラテリパラディソではそうした野菜だけを使った「エアルームサラダ」というメニューがあった。表参道ヒルズの店で出す「モッツァレラ カラフルトマト ビーツ バジル」にも飛騨高山からとどくエアルーム野菜が使われている。
「僕は東京出身ですが、飛騨高山に住んで食材の現場のことがよく分かるようになりました。農家さんとも頻繁にあって食事をしたり、野菜の話をしたり、とてもいい関係なんです」
フラテリパラディソでは、料理を通して常にプロダクトを紹介してきた。「それが日本でもできたらいい」と中安シェフ。日本には四季があり、季節の野菜があるのが魅力という。人の手を介して大切に作られるもの。それがフラテリパラディソと中安シェフが料理を通して伝えたいことなのだ。
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フラテリパラディソ|FRATELLI PARADISO
2001年シドニーのポッツポイントに開店したフラテリパラディソは、かの地の食カルチャーを変えたといわれるほどの影響力を持つ。この人気店が今年5月に表参道ヒルズにオープン。素材重視のイタリアンは、飛騨高山の生産者が育てた有機野菜がたっぷり。毎日仕込む姿が眺められる手打ちパスタやパンも魅力だ。大きなセラーに入ったナチュラルワインは約150種類。
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