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FERMiNTXO BOCA 薩木孝之シェフが挑む「鮎のテリーヌ」——ニッポンの美味しいを再発見! #1 

日本料理の世界だけに留まらず、今は多くの料理人の視線が豊かな日本の食材とその先にある世界へと向かっている。「旬の食材を使ってここでしか味わえない料理を作っていきたい」というスペインバル「FERMiNTXO BOCA」の薩木孝之シェフも積極的に日本の食材に取り組むひとり。今回はそんな薩木シェフが、初夏にぴったりの鮎と空豆を使った新しいひと皿を紹介する。

TEXT BY Jun Okamoto
PHOTO BY Takahiro Imashimizu

初夏をまるごと味わう「鮎のテリーヌ 空豆のピューレ」
初夏から夏にかけていい鮎が手に入る時だけ登場する季節の一皿のひとつがテリーヌ。静岡産の鮎は低温の油で6時間かけてじっくりコンフィにしているので、頭や内臓も一緒に味わえる。少量の生クリームの他はほぼ鮎だけという潔さ。「魚が持つゼラチン質で固めるイメージです」と薩木シェフ。ソース代わりのピューレに効かせたミントや散らしたハーブの青い香りを補うことで、魚の内臓の味と香りをスッキリ食べさせてくれる。880円(税抜)

日本の旬の美味しさをスペイン料理で表現していきたい

「日本の旬の食材をスペイン料理に取り入れてみたい」。薩木シェフがそう考えたとき、まっさきに思い浮かんだのは鮎だった。

日本人にとって馴染み深く、初夏の訪れを印象づける鮎は、頭からしっぽの先まで丸ごと味わうもの。その内臓のほろ苦さやスイカやキュウリにたとえられる独特な香りも他の魚とは趣が異なっている。あえて日本人ならではのその味覚をすべて移しとろうと、薩木シェフはまるごと一尾をコンフィに。低温の油でじっくりと骨まで柔らかくなるように火を入れたコンフィは評判も上々だった。

昨年、さらに進化した新作にチャレンジしたいと頭をひねってできたのが「鮎のテリーヌ」。これが常連の間で評判を呼んだ。コンフィにかけた鮎を裏ごししたテリーヌは、鮎を頭から丸ごと齧った瞬間の味を再現している。同じく初夏の訪れを告げる空豆をピューレで合わせることで、鮮やかな旬の香りが口いっぱいに広がる。軸足はきちんとスペイン料理に降ろしつつも、日本人の味覚を喜ばすひと皿となった。

「このテリーヌを食べた時に、ああもうこんな季節になったのかと思ってもらえたらうれしいですね」と薩木シェフは微笑んだ。

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今回の料理人
薩木孝之|Takayuki Satsuki
大学時代に料理の楽しさに目覚めて料理学校へ入学。都内のスペイン料理店を経て、気鋭のスパニッシュ「フェルミンチョ」の作元慎哉シェフの元で腕を磨く。バルセロナ近郊にある一つ星レストランなどで経験を積み「フェルミンチョ ボカ」を任される。

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フェルミンチョ ボカ|FERMiNTXO BOCA
モダンスパニッシュから飛び出た人気のガストロ・バル。スペインのミシュラン三つ星店で経験を積んだオーナーシェフが手掛ける「フェルミンチョ」。そのセカンド店として人気を集めているのがここ。「ボカ」はボカディージョ(サンドイッチ)のことで、ランチでは自慢のボカディージョが充実。夜はバルのスタイルでクオリティの高い料理を出すガストロ・バルになる。お楽しみはシェフとの会話から生まれるおまかせのタパスコース(カウンターのみ)。

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