ファッションのご意見番ことスタイリスト地曳いく子さんが、独自の視点で切り込むオトナ女史のためのスタイル術「IKUKO’S METHOD」。今回は、寒くなったら重ねるをテーマに、軽くて着回しのきくコートを取り上げます。
STYLING BY IKUKO JIBIKI
PHOTO BY SHIN KIMURA
EDIT BY AKANE MAEKAWA
気分が重いからこそ、軽いが大事
暦のうえでは11月上旬から冬。そろそろコートの出番です。今冬の気候はまだわからないですが、この数年の傾向をみると、本格的に寒くなるのは年末から年明けにかけてではないでしょうか。今年は車移動も多くなってきているので、モコモコアウターというより、さっとカーディガン感覚で羽織れる薄手のコートが気になります。極寒の地域でなければ、機能性インナーを活用しつつ、カシミアニットを合わせたり、ストールを重ねたり、レイヤーしていくことで、この時季から活躍する軽めのコートを長く楽しみたいです。こんな時代だからこそ、自由に着回しができるコートを選んでみてはどうでしょうか。
地曳いく子が指南する
今年コートのススメ
❶ 筆頭格はしなやかなダブルフェイスコート
今年は、チェスターなどのカチッとしたテーラード系の気分にもなれず、とはいえ、夏にカジュアルなものをずっと着ていたので、カジュアル過ぎるのにも飽き飽きしてきています。そこで今冬おすすめしたいのが、ダブルフェイスコート。二枚を重ね合わせた生地は触り心地もよく、しなやか。今のダブルフェイスは薄手になってきているので軽く、ゆったりめシルエットが主流。もともとはリッチなマダムが好んでいた上質な生地なので、ラグジュアリーな雰囲気も。車移動の方なら、さっと脱いで助手席のシートに掛けても、気にならないボリューム。寒くなってきたら、大判のストールと合わせてもいいですよね。お出かけ感もあるけど、カジュアル感もある。気負いなくおしゃれを楽しめる今年アウターの筆頭格です。
❷ ロマンティックな気持ちを注入
予想をしていなかったことが起こり、心身ともに落ち着かない日々が多かった今年。そのため、なんだかロマンティックな気持ちが足りないまま、冬を迎えようとしている気がするのは私だけでしょうか。新しくコートを手に入れるなら、色味やディテールでロマンティックな気持ちを補填してみてはどうでしょうか。シンプルなフォルムなら明るい色。落ち着いたベーシックカラーならパフスリーブなどディテールで遊んだもの。そんな気持ちも、コート選びには必要です。
❸ Vもクルーもノーカラーですっきり
今年気になったのは、ノーカラー。襟元がシンプルなので、ハイネックを合わせたり、上からストールを巻いたり、もたつかずエレガントにレイヤーがしやすいのがポイント。カジュアルに着こなすならフーディーとも相性よし。おうち生活でスウェットのフーディーを着ていた人も多いと思いますが、ノーカラーの大人顔なダブルフェイスコートを羽織って出れば、カジュアル感も軽減。Vとクルータイプがありますが、それはお好みで。顔の輪郭と首の長さ、ヘアスタイルとのバランスなので、購入前は必ず全身を鏡に映してみて下さい。
❹ 一枚で二役も三役も
カラーやフーディーが取り外し可能なものや、リバーシブルに着られる技ありコートも、今年の注目。おそらく、フルスロットルなお出かけが少ないであろうこの冬は、一枚でいろいろな着回しができるもので楽しみましょう。シンプルなダブルフェイスのコートも、袖をロールアップするだけで、カジュアルな雰囲気にもなります。
❺ 背中美人かどうかで決まる
コートを選ぶポイント。それは、後ろから見てきれいかどうか。背中のカッティングきれいなラインだと、ラグジュアリーに見えてきます。ゆったりシルエットでも、自分に合っているかどうか、鏡で背中美人チェックをお忘れなく。丈に迷ったら、今年はミッドカーフか、それより長めを選びましょう。
※ 六本木ヒルズ等各施設では、新型コロナウイルスの感染拡大防止の予防対策を徹底し営業しております。また一部の店舗では営業時間を短縮しております。ご来店の際には事前に各施設HPをご覧ください。
地曳いく子|Ikuko Jibiki
スタイリスト/1959年東京生まれ。数々のファッション誌で活躍し、女優や著名人のスタイリングも数多く手がける。大人の女性を美しくみせる的確な理論に基づくスタイリング術に定評を持つ。現在は、ファッションアイテムのプロデュースほか、テレビやラジオに出演するなど多方面で活躍。著書に『服を買うなら、捨てなさい』『着かた、生きかた』(ともに宝島社)『おしゃれも人生も映画から』(中央公論新社)、『買う幸福』(小学館)、『おしゃれは7、8割でいい』(光文社)、ひとりっPこと編集者の福井由美子との共著『たまには世界のどこかでふたりっぷ』(集英社)など多数。10月に最新刊『若見えの呪い』(集英社文庫)を上梓。
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