ファッションのご意見番ことスタイリスト・地曳いく子さんが、独自の視点で切り込むオトナ女史のためのスタイル術「IKUKO’S METHOD」。今回はちょっとユニークな視点で「ワンピースとオールインワン」を紐解きます。
STYLING BY IKUKO JIBIKI
PHOTO BY SHIN KIMURA
EDIT BY AKANE MAEKAWA
日本人には一枚の服を着こなす遺伝子がある!
梅雨が近づいて来たかと思えば、突然の真夏日に襲われたり。コロコロと変わる気候だけでなく、仕事面でも生活面でもちょっと疲れが出てくるのがこの時季です。何も考えたくない! と思ってしまうそんな時の強い味方と言えば、一枚で様になるワンピース。コーディネイトに悩む必要のない最強アイテムです。ちょうど一年前にも「ワンピース最強説」をテーマにさせていただきましたが、今回は、究極のトレンドアイテム「オールインワン」も加え、最強説をさらにパワーアップして掘り下げてみたいと思います。だって、私たち日本人は上下が繋がっている“着物”というワンピースを何百年と着続けてきた文化を持っているのですから。今更ワンピースが似合わないなんて言わせませんよ(笑)。
地曳いく子が指南する
ワンピース&オールインワンのススメ
❶ おさらい「上下で一枚がワンピース」
以前にもお伝えしましたが、ワンピースは一枚で上下分なので、ちょっと高いかもと思っても、トップスとボトムスを足したお値段の投資をするぐらいの気持ちで購入を考えましょう。選ぶ基本は、今シーズンか、せめて来年ぐらいまで着たい(着られる)と思うものをセレクトすること。これはどんな服にも当てはまりますが、一生モノという考えは捨てるべき。5年後や10年後の気候も時代も人生も、どうなっているかなんて分かりませんから(笑)。ワンシーズンで10回ぐらい着たら大成功と思いましょう(週1回で月4回×2~3か月)。私はというと、週1以上のペースで15回以上は着ています。
❷ 着物文化の感覚にヒントあり
明治維新の前までは着物が普段着だった私たち日本人。半襟や帯でおしゃれを楽しみ、庶民は同じ着物を着回していました。ワンピースにも同じ考え方ができます。まずはお気に入りを一枚持っていればよし。少し物足りない時は、スカーフやネックレスを足し、ベルトでアクセントを付けることができますよね。少し前までのワンピースはいわゆる一張羅。ここぞという特別な日の一枚でしたが、今は日々の一枚にしてこそです。
❸ バランスは時代とともに変わるもの
ワンピースの丈は時代の変化を色濃く映しています。以前は膝丈前後でしたが、最近はミッドカーフからマキシ丈が多く見られます。昔、ロングといえば、背の高い人か、セレブやファッション関係の特別な人しか手を出さなかったアイテム。でも、今は平均身長でも小柄な人でも普通に着られるようになりましたよね。わざわざヒールを履かなくても、そのバランスに抵抗がなくなってきています。そこでまた思い出して欲しいのです。そう、日本人は着物を普段から着ていたことを。足もとは草履。ペタンコです。フルレングスをペタンコで着こなすという記憶の遺伝子が受け継がれているはずなのです!(笑)。長めが苦手と思っていた人も、それを思い起こして挑戦してみて下さい。フルレングスだとコート風にも着こなせますし便利です。
❹ 究極のトレンド感を一枚で
今季展示会を回っていて、これぞトレンドと思ったのはオールインワン。かつてのイメージは、作業着や、セレブがパーティーで着ているセクシーなジャンプスーツ系でしたが、今年はカジュアルだけどおしゃれに着られるものが多く登場しています。足もとは、スニーカーでも、ペタンコのサンダルでも、エレガントにヒールでもOK。裾をロールアップしてブーティでも素敵です。しかも、これ一枚で究極のトレンド感が出せます。トレンドハンターの人には、一番の狙い目アイテムなのではないでしょうか。唯一の難点といえば、トイレの時だけ。ですが、そこはおしゃれのため。少し我慢をしてください(笑)。
❺ インパクトのあるワンパターンこそ個性
無難なものを着回してぼんやりとするより、オトナ女史の皆さまは「私はこういうスタイルです」という主張をしていくのも、ひとつの手ではないかと思っています。20代ならまんべんなく何でも取り入れるファッション武者修行時代があってもいいですが、そろそろインパクトもので自分を打ち出してもいいはず。その自分らしさが主張できる最強アイテムこそ、ワンピースやオールインワン。インパクトのあるワンパターンこそ個性ですから。主張のある一枚は着こなしが限られてしまうと思う人、そうじゃない考え方もあるのですよ。
地曳いく子|Ikuko Jibiki
スタイリスト/1959年東京生まれ。数々のファッション誌で活躍し、そのキャリアは30年超え。女優のスタイリングも数多く手がけ、大人の女性を美しくみせる的確な理論に基づくスタイリング術に定評あり。独特の語り口も魅力で、現在はテレビやラジオでのコメンテーターとしても活躍。著書に『服を買うなら、捨てなさい』、『着かた、生きかた』(ともに宝島社)、『おしゃれも人生も映画から』(中央公論新社)、黒田知永子との共著『おしゃれ自由宣言』(ダイヤモンド社)など多数。
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