ファッションのご意見番ことスタイリスト地曳いく子さんが、独自の視点で切り込むオトナ女史のためのスタイル術「IKUKO’S METHOD」。今回のテーマは「カットソー&スウェット」です。
STYLING BY IKUKO JIBIKI
PHOTO BY SHIN KIMURA
EDIT BY AKANE MAEKAWA
パジャマ代わりがあなたの家に
10枚以下とは言わせない
コートとセーターを脱ぎ捨てたら、次の主役はカットソー&スウェット。お値段も冬物に比べるとそこそこなのでつい手を出したくなるかもしれませんが、ちょっと待ってください。あなたの家に部屋着寝間着代わりとなった子たちが、10枚、いやひょっとしたら20枚ぐらい溜まっていませんか? 私はカットソーをディスポーザブルなもの(消耗品)として捉えています。特に夏物はです。自宅で気軽に洗濯できてしまうので次第にくたびれ、白いTシャツはどこか黄ばんできてしまいます。次のシーズンになると中古化したトップスたちの登場回数は前に比べてぐっと減り、まだ着られるからと取っておいても気分が乗らずいつの間にか部屋着寝間着に。だったら、何年もと思わないで、この春夏で着倒してコスパがとれるものを選ぶほうが、服にとっても優しいと思いませんか? カットソー&スウェットにこそお金を出す価値のあるものを買うべきなのです。
地曳いく子が伝授する
春夏のカットソー&スウェット選びの極意
❶ インナー系は夏までの活躍を見越すべし
カットソーの活躍時季の到来ですが、まだ肌寒いのでジャケットやカーディガンを羽織ることが多いのではないでしょうか。でもここでシンプルなタイプのものを選ぶと……、インナーとしての役割だけで終わり来シーズンは部屋着に格下げなんてことも。夏に向け、どんどん脱いでも活躍する一枚を選んでこそ着倒せるのです。デザイン性のあるものや、思い切ってノースリーブのものを今から選ぶと着こなしの幅も広がります。
❷ カットソー=Tシャツの常識を超えた一枚を
私はカットソーをワンシーズンで着倒す覚悟なので、だからこそ一枚はインパクト重視で遊びのあるものを選びます。今年はチュールとのレイヤードになった、甘過ぎず、辛過ぎずのみたらし団子的な美味しいTシャツが気になるところ。オトナ女史のカットソー選びは、カジュアルなだけでなく、気分をアゲるインパクトを盛るのも大切です。
❸ ボーダーはお袖コンシャスで
ボーダーのロンT(長袖Tシャツ)といえばフレンチカジュアルの不朽の定番。一度はトライしたことがあるのではないでしょうか。でもロンTは意外と難しい。男の人は似合うのですが、女の人は形がシンプル過ぎると野暮ったく見えてしまいがちなのです。(かつて憧れたオリーブ少女のようにはいきません!)でも大丈夫、お袖コンシャスなトレンドが今年は味方をしてくれます。好きだけど難しいと思っていた人は、どこかにデザインが入っているものを選ぶと今年のボーダーとしてヘビロテできます。
❹ プログレスウェットで大人カジュアル
おしゃれアイテムとして進化し続けるスウェット。寒いのか暑いのか分からない温度差の激しいこの季節にはとっても便利。ただしオトナ女史はコンシャスなスウェットを選ぶべし。トレンドのビッグシルエットなら、オフショルダーでも丈は短めを。ボトムが細いか太いかの二極化をしている今、ビッグシルエットは170cm以上の身長がないとバランスが取りづらくなるので要注意。それから、スポーティな量産系のものには手を出さないように。部屋着にしか見えませんから。大人はあくまでもスペシャルなスウェットで勝負です。
地曳いく子|Ikuko Jibiki
スタイリスト/1959年東京生まれ。数々のファッション誌で活躍し、そのキャリアは30年超えを誇る。数多くの女優のスタイリングも手がけ、大人の女性を美しくみせる的確な理論に基づくスタイリング術に定評を持つ。独特の語り口も魅力で、現在はテレビやラジオでのコメンテーターとしても活躍中。著書に『服を買うなら、捨てなさい』『着かた、生きかた』(ともに宝島社)など多数。最新作に『脱「若見え」の呪い “素敵なおばさま”のススメ』(マガジンハウス)。
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