葛飾北斎の壮大な画業を通覧する大規模展覧会『新・北斎展 HOKUSAI UPDATED』が、森アーツセンターギャラリーで開催される。国内外の名品・貴重品約480件(会期中展示替えあり)を通して真の北斎像が明らかに。
TEXT BY KYOKO INOU
KEY VISUAL:葛飾北斎「冨嶽三十六景 凱風快晴」大判 天保初期(1830-34 )頃 島根県立美術館(新庄コレクション) 展示期間1月17日(木)〜2月18日(月)
約70年に及ぶ葛飾北斎の絵師人生を展観
20歳のデビュー作から90歳の絶筆まで、北斎の約70年にわたる絵師人生を、作風の変遷と主に用いた画号によって6章に分け、約480件(会期中展示替えあり)の作品を通して総覧する。これほど大規模かつ網羅的な北斎展が東京で開催されるのは、10数年ぶりとなる。「冨嶽三十六景」や「北斎漫画」などの代表作はもちろん、多数の初公開作品が揃うのも、本展の大きな特徴だ。アメリカ・シンシナティ美術館が所蔵する「向日葵図」や「かな手本忠臣蔵」(小判、10枚)、旧津和野藩主家所蔵の摺物(全118点)などが公開される。なかでも、旧津和野藩主家所蔵の摺物は長らく秘蔵されていたため、今なお衝撃的なほど美しい色彩のままである。
本展の企画・監修を担当したのは、昨年2月に逝去した北斎研究者・永田生慈氏。2005年の東京国立博物館、2011年のベルリン、2014年のパリなど、国内外の数多くの北斎展を監修し大きな反響を巻き起こした同氏は、研究とともに未知の北斎作品の発掘にも邁進。研究者ならではの視点で集められた2000件を超えるコレクションは、2017年彼の故郷である島根県に寄贈された。本展出品後は、島根のみで公開されることになっているため、東京で永田コレクションを見ることができるのは、本展が最後の機会となる。
江戸時代後期に浮世絵師として登場してから90歳で没するまで、常に新たな絵画の創造への挑戦を続けた葛飾北斎。度重なる画号の改名に、大胆な画風の変更。自らをアップデートし続けた北斎の人生に肉薄する本展で、新たな北斎像を発見できることだろう。
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