ROPPONGI ART NIGHT 2019

街に巨大な赤いボールが出現!? 六本木アートナイトに向けてプレプログラムが始まる

六本木の街のそこかしこで、世界中から選りすぐった現代アート作品に出会えるアートの饗宴「六本木アートナイト」。2019年のテーマは「夜の旅、昼の夢」だ。25日(土)の開催本番に向けて、六本木の街ではすでにプレプログラムが始まっている。そのひとつで今回日本に初上陸するという「RedBall Project(レッドボール・プロジェクト)」がスタートした。

TEXT BY KEIKO KAMIJO
PHOTO BY TOMO ISHIWATARI

六本木駅からほど近く、六本木通りから1本裏手に入った場所にあるピラミデビル。平日でもビジネスマンや観光客など多くの人が行き交う場所だ。そのビルのエントランスから巨大な赤いボールがむにゅっと飛び出している。いつものビルの様子を知る人からすると、なんだか異様な光景だ。通り掛かりの人は、目をぱちくりさせたり、少し離れた場所から写真を撮ったり、ボールに近づいて触ってみたりしている。これが、六本木アートナイトのプレプログラムとして20日(月)から六本木各所に出現している「レッドボール・プロジェクト」である。

artnight2019_g_04
1/4ロンドン(イギリス / photo by Tom Martin)
artnight2019_g_01
2/4アントワープ(ベルギー / photo by Brit Worgan)
artnight2019_g_02
3/4マルセイユ(フランス / photo by Brit Worgan)
artnight2019_g_03
4/4モンス(ベルギー / photo by Brit Worgan)

「レッドボール・プロジェクト」はアメリカ人アーティストのカート・パーシキーによるパブリックアート・プロジェクト。パーシキーは彫刻やコラージュ作品、公共空間を使った作品を制作しており、このプロジェクトは2001年に始まった。その後、世界34都市を旅して展示が行われているという。

ボールは直径4.5メートル、重さ115キロ、厚手のビニール素材で出来ている。中に空気を送り込むこと約1時間。ボールを支えるロープや重りなどはなく、ビルのエントランスにがっちりハマった状態で設置完了だ。グレーのレンガの壁に鮮やかなレッドが映える。通行人は突如として現れた赤い物体を訝しげに見ながら通り過ぎる。時々ポンポンとボールを触りに来る人もいるが、触っていいものかどうか伺っている様子である。

六本木アートナイトに参加するにあたり、パーシキーはアシスタントのマイクと一緒に2月に来日し、六本木中を歩き回り展示に相応しい場所を探した。パーシキーはレッドボールを「パフォーマンス」だと言っており、故に1箇所の展示は1日限りで複数の場所に巡回する、というのを基本ルールにしている。その日の天候や観客の反応、建物との関係で作品の見え方は全然変わるため、場所探しは非常に重要なプロセスとなる。

「レッドボールを設置する場所は、観客がいるか、道路の混雑具合はどうか、自然光は入る場所なのか、建築との関係性……、複数の条件が絡み合い決められています」とパーシキー。

ピラミデビルの前で作品を見ていても、通り過ぎる人の反応や光の入り方で作品の見え方は変わる。同じ条件で展示されることは二度とない。それが面白いとパーシキーは言う。

「いろんな国の都市を回ったけど、反応は毎回違って、どの国でも観客と作品との距離感が面白い。近づいて触ったり体当たりする人がいるかと思えば、遠巻きに写真を撮ったりする人もいる。面白かったのは、スペインのバルセロナでブリーフケースを持ったビジネスマンがレッドボールの側を通った時に、素知らぬ顔をして誰にも気づかれないようにサッと背後に手を出してボールを触っていた。そういう触り方をする人もいるんだと興味深かった。六本木の街は平日はビジネスマンが多いけど、アートナイトにはいろんな人が来るでしょう。どんな反応が見られるか楽しみにしています」

建物の間にぐにゅっと収まった巨大なレッドボールは、見慣れた日常の風景にユーモラスな違和感をもたらす。場所や観客のインタラクションによって見え方も異なる。遠くから建物とボールが織り成す新しい街の風景を楽しむもよし、少し離れたところから観客とボールの関係を俯瞰して見るもよし、自ら体当たりでボールにぶつかっていくもよし。このプロジェクトならではの一期一会を楽しもう。

展示予定は以下の通り。

5/23(木) 森美術館ミュージアムコーン前 11:00〜18:30
5/24(金) 21_21 DESIGN SIGHT 10:00〜17:00
5/25(土) 六本木ヒルズ66プラザ 17:00〜24:00
5/26(日) けやき坂イーストコート 11:00〜17:00
※荒天の場合は中止の可能性あり  

他にプレプログラムとしては、メインプログラム・アーティストを務めるチェ・ジョンファの《みんなで集めよう》(場所:国立新美術館)、フランス人作家で人間、鳥、海洋生物の立体作品を制作するセドリック・ル・ボルニュによる《欲望と脅威》(場所:六本木ヒルズ66プラザ、六本木ヒルズ 毛利庭園)、大村 雪乃+松田 暁+堀 和紀による観客が触れるとクラシック音楽を奏でるようにプログラムされているインタラクティブな作品《唄う蜘蛛の巣》(場所:六本木ヒルズ ウェストウォーク2F)、子どもの夢の世界に迷い込んだような不思議な映像体験を味わえる、さわひらきによる《エアライナー/ウォール/マイニング》(場所:六本木ヒルズ ウェストウォーク2F)等の作品は既に公開中である。

開会前から徐々に盛り上がりを見せる六本木アートナイト。作品やアーティスト、イベントの詳細は公式ウェブサイトでチェックしよう。

六本木アートナイト2019 開催期間 5月25日(土)10:00~5月26日(日)18:00(コアタイム 25日18:00〜26日6:00) 会場 六本木ヒルズ、森美術館、東京ミッドタウン、サントリー美術館、21_21 DESIGN SIGHT、国立新美術館、六本木商店街、その他六本木地区の協力施設や公共スペース