最近気になるのは山形の鋳物。シンプルでモダンなデザイン、日本らしいオリエンタルな雰囲気、重厚感のある姿などで、世界的な注目も高まってきているという。イタリア人以外でははじめてフェラーリを手がけたデザイナーとしても有名な奥山清行氏による鉄瓶が海外で人気と聞いたのも、興味を持つきっかけのひとつとなりました。
Text by Chiharu Shirai / Photo by Kohei Shikama
連載旅する新虎マーケット Ⅰ期
Exhibitor 3-2
「旅する新虎マーケット」は全国津々浦々の魅力を集め編集・発信し、地方創生へ繋げるプロジェクトです
「旅する新虎マーケット」は全国津々浦々の魅力を集め編集・発信し、地方創生へ繋げるプロジェクトです
Text by Chiharu Shirai / Photo by Kohei Shikama
山形鋳物の歴史は深い。はじまりは900年ほど遡る平安時代。源頼義が山形地方にやってきた折、従軍した鋳物師が馬見ヶ崎川の砂と薬師公園近くの土が鋳物に適していることを見つけ、この地にとどまったのがきっかけとされます。
また、約400年前には山形城の主、最上義光は薬師公園付近にいた鋳物師17人を一か所に集め、火を扱う者だけを集めた町づくりを行いました。この町は「銅町」と名付けられ、日本で最初の工業団地の役割を果たし、綿々と伝統の技術を受け継いできました。
また、山形鋳物は古くから少量多品種を生産してきたのも特徴。鋳物師一人ひとりが形やしつらえにこだわって、美しい山形鋳物を送り出してきました。「山形鋳物はこれまでずっとそれぞれの工房で独自のやり方を貫いてきたわけで、素材も銅から鉄まで実にさまざま。薄肉で鋳肌が細かいというところは共通していますが、それくらいそれぞれに個性があります。
うちならその個性がデザインになるのかな?」。そう語るのは創業110数年の老舗工房「雅山」の四代目、長谷川雅則さんです。三代目のもとに生を受けながらも、美術大学を卒業後は世界の鋳造技術を学ぶためにイタリアへ。新しい技術、刺激を貪欲に自分の力に変えながら、山形鋳物に新しい風を吹き込んできました。
手に取って見せていただいたのは「SHIZUKU」と名付けられたティーポット。真上から見ると雫の形。輪郭線はそこからやわらかく膨らんで、なんとも言えないころんと愛らしいフォルムを描きます。
さらにポット本体と蓋による異素材の組み合わせも印象的。黒く、鈍く光る鉄と、輝く銅の美しいコントラストが心を惹きつけます。
「これは唐蓋と呼ばれる、古くから伝わる手法。お洒落でしょう」。伝統的な技術を継承しながら、現代的な洗練を纏う鋳物。代々続く老舗に生まれながら、その場所に立ち止まらないモチベーションは一体どこから? 「そもそも昔っから新しいことをやっていくのがうちの伝統。それに私自身、チャレンジが好きなんですよね」。
修理しながら長く使える、湯を沸かすとまろやかな味になる、手作りの温かさがある。そんな伝統的な魅力と同時に、現代の空気をおおらかに取り入れていく山形の鋳物。これからもますます目が離せなくなりそうです。
山形市産業歴史資料館国指定の伝統的工芸品である山形鋳物をはじめとする山形市の主な伝統工芸品や、貴重な産業史料を展示している資料館。鋳物の製造工程も勉強することができます。
山形鋳物 雅山1902年創業で、古くから鋳物師が集まる「銅町」に工房を構える山形鋳物の代表格。工房1階のショールームでは実際に鉄釜、茶器などを手にとりながら相談、購入することができます。
「旅する新虎マーケット」は全国津々浦々の魅力を集め、編集・発信し、地方創生へ繋げる“The Japan Connect”を目的とするプロジェクト。舞台は、2020年東京オリンピック・パラリンピックでメインスタジアムと選手村を結ぶシンボルストリートとなる「新虎通り」です。「旅するスタンド」でその街自慢のモノ、コト、ヒトに触れたり、「旅するストア」や「旅するカフェ」で珍しいグルメやセレクトアイテムと出会ったり。約3カ月ごとに新しくなるテーマに合わせて、日本の魅力を凝縮。旅するように、通りを歩く。そんな素敵な体験をご用意して皆さまをお待ちしています。
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