山形空港に降り立ったときから、疾る気持ちが抑えられません。なんといってもこの旅の目的は、ずっと行きたかった山形市の酒蔵巡り。食べるお米はもちろん、独自の酒米もたくさん育まれていて、蔵王の恵みである良質な水が豊富。そんな場所で醸される日本酒とは、いかほど美味か。空港から中心街へと走らせるバスの車窓に流れる澄んだ景色にもまた、期待感を煽られます。
Text by Chiharu Shirai / Photo by Kohei Shikama
連載旅する新虎マーケット Ⅰ期
Exhibitor 3-1
「旅する新虎マーケット」は全国津々浦々の魅力を集め編集・発信し、地方創生へ繋げるプロジェクトです
「旅する新虎マーケット」は全国津々浦々の魅力を集め編集・発信し、地方創生へ繋げるプロジェクトです
Text by Chiharu Shirai / Photo by Kohei Shikama
まず訪れたのは、江戸の時代から三百年以上つづく『寿虎屋酒造』。蔵の中へと足を踏み入れると、日本酒独特の香りが鼻の奥へ流れ込みます。
現在の社長を務める大沼幹雄さんのご案内で、酒米の蒸し工程から、麹や醪の仕込み、搾りなどの一連の工程を見学させていただきます。「酒造りは、極めてアナログの世界。温度、湿度、米の出来。環境は毎年変わります。材料を仕込みさえすれば酒の形にはなりますが、いいものを造るには人間の知恵と五感が欠かせません」、そう言って出来てたの酒のコップの注いでくれました。
純米吟醸、霞城寿。穏やかな吟香の中に味とコクが広がります。「美味しいでしょう? 蔵王山系の伏流水の地下水で仕込んでいます。何度か蔵を移転しているのですが、水の味だけは変わらないように場所を選んできました」と胸を張りました。
つづいては、「羽陽男山」の名で全国に知られる『男山酒造』。専務の尾原俊之さんに蔵を見学させていただいた後、「酒造りで一番こだわるのはどんなところですか?」と訊くと、こんな答えが返ってきました。
「真面目に造ること、それだけです。酒は所詮主役ではありません。食事や会話の引き立て役としてふさわしい味になるようにしっかり仕込んでいます」。
『男山酒造』の酒がすっきりとした辛口で醸される理由のひとつを、蔵の外で流されている水で確かめることができます。地下水そのままを流しているため「自己責任で」と立て札がされていますが、これを体験できるのも酒蔵見学ならでは。いざ、と口に含めば、意外にもやや硬めでしょうか? 「酒造りでは比較的珍しい硬度の高い水を使っています。ミネラルも豊富で、この水のおかげで独特の辛口になっています。
住宅が並ぶ細い道を抜けると姿を表す『秀鳳酒造』もまた、人気の酒蔵のひとつ。訪れた時間はちょうど小学生たちの下校時間。近所に住む子どもたちが元気良く「こんにちは!」と、通り過ぎていきます。街に受け入れてもらえたようで、なんだかちょっと幸せな気持ち。
さて蔵はと言えば、歴史を感じさせるノスタルジックな作りで、タイムスリップをしたかのような錯覚に陥れます。「うちは地下水ではないのですが、水質はやわらかで、酒造りに最適。蔵王の恵みに感謝しています」とにこやかに語るのは、2年前に実家であるここへ帰ってきた武田秀和さん。「うまみと香りが膨らんで、後味のキレが増す。そしてまた一杯飲みたくなる、そんな酒を造ることがこれからの夢です」と瞳を輝かせるのが印象的でした。
肉と日本酒? と訝るなかれ。豊かに霜が降った肉の甘みを、すっきりとした山形の辛口が心地よく流して、肉も酒も進む進む。ここまで日本酒好きの心をつかむ山形市、恐るべし。「お姉さん、もう一本!」とお銚子を掲げながら、酔い、もとい、宵は深まっていくのでした。
寿虎屋酒造赤い伊勢海老がトレードマークの「霞城寿」や、すべて山形の素材で仕込んだ「出羽燦々」などが有名な酒蔵。全国新酒鑑評会で3年連続金賞を受賞するなど、高い品質で知られています。
男山酒造その名の通り、すっきりとした辛口酒で愛される酒蔵で、代表銘柄は「羽陽男山」など。創業以来200年以上にわたって、米を選び、水を磨いて、品質本位の酒造りに全力を注いでいます。
秀鳳酒造代表銘柄である「秀鳳」は華やかな香りとふくよかな味わいが特徴のお酒。「出羽の里」をはじめ、山形の米を中心としたさまざまな日本酒は、日本全国で広く親しまれています。
くろげ山形駅すぐ近くで、最上級の山形牛、米沢牛を心ゆくまで堪能できる焼肉屋。本店隣に併設された「はなれ」では、焼肉の他しゃぶしゃぶやすき焼きもいただけます。
「旅する新虎マーケット」は全国津々浦々の魅力を集め、編集・発信し、地方創生へ繋げる“The Japan Connect”を目的とするプロジェクト。舞台は、2020年東京オリンピック・パラリンピックでメインスタジアムと選手村を結ぶシンボルストリートとなる「新虎通り」です。「旅するスタンド」でその街自慢のモノ、コト、ヒトに触れたり、「旅するストア」や「旅するカフェ」で珍しいグルメやセレクトアイテムと出会ったり。約3カ月ごとに新しくなるテーマに合わせて、日本の魅力を凝縮。旅するように、通りを歩く。そんな素敵な体験をご用意して皆さまをお待ちしています。
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