湯河原。ここは夏目漱石、芥川龍之介、与謝野晶子をはじめとする多くの芸術家たちが、過酷な創作活動で疲れた心身を癒し、次作のアイデアを練るためにやってきた温泉郷。どうして他の温泉場ではなく、この町が通に愛されてきたのか? その理由が知りたくて、東京から約1時間、電車に揺られてやってきました。
Text by Chiharu Shirai / Photo by Yujiro Ichioka & Chika Miura
連載旅する新虎マーケット Ⅰ期
Exhibitor 5
「旅する新虎マーケット」は全国津々浦々の魅力を集め編集・発信し、地方創生へ繋げるプロジェクトです
「旅する新虎マーケット」は全国津々浦々の魅力を集め編集・発信し、地方創生へ繋げるプロジェクトです
Text by Chiharu Shirai / Photo by Yujiro Ichioka & Chika Miura
評論家、小林秀雄もこの地を愛したひとり。昭和14年創業、現在も変わらず奥湯河原に旅館を構える「加満田」に逗留し、水上勉ら文壇仲間と交流を深めていたといいます。それを示すように館内のあちらこちらには有名作家らの直筆の書。
島崎藤村が足繁く通い、今もファンが後を絶たないのは明治21年創業で湯河原温泉の真ん中、万葉公園の入り口に位置する旅館「伊藤屋」。
「当時あった『1番』というお部屋を気に入っていただいていました。長編小説『夜明け前』の原案を練られたのも当館だったようです」(「伊藤屋」館主・伊藤信之さん)の言葉を受けて当時から変わらずある中庭を覗くと、なんとも不思議な気分。激動の明治の時代に精神をゆるやかに壊していく主人公、青山半蔵と一家の行く末を一体どんな思いで描いていたのでしょうか。
文人だけでなく、画人にも愛されていた湯河原。夏目漱石が逗留していた旅館「天野屋」を改装した「町立湯河原美術館」では湯河原ゆかりの作品をじっくりと楽しむことができます。特に圧巻は日本画家・竹内栖鳳の作品群。京都画壇の代表である竹内栖鳳ですが、晩年の静養にあてたのがこの湯河原でした。
そんな文人たちの声が春の風に乗って湯けむりの向こうから届いた気がしました。最近疲れているなぁと思ったら、文庫本を携えて湯河原へ行ってみませんか。なんにもしない贅沢な時間が、きっとあなたを癒してくれますよ。
温泉旅館「伊藤屋」明治21年創業、湯河原温泉の中心に位置する老舗旅館。島崎藤村が名作『夜明け前』の原案を練ったのもこのお宿で、今でも遺稿や愛用品が数多く残されています。
日帰り温泉「こごめの湯」湯河原町が運営する日帰り温泉。一度入場券を買うと、出入りが自由に。周囲をのんびり散策したり、お買い物に出かけたり。一日のんびりと利用できます。
温泉の街湯河原は、みかんの生産地としても知られています。陽当たりの良い斜面と暖かな海に囲まれた土地は、甘味豊かなみかんの生産に適した環境なのです。果汁100%のみかんジュースを使ったカクテルで湯河原みかんの美味しさをお届けいたします。
旅するカフェ by BALMIBARBI
TEL 03-6403-4141
営業時間 7:30〜23:30
「旅する新虎マーケット」は全国津々浦々の魅力を集め、編集・発信し、地方創生へ繋げる“The Japan Connect”を目的とするプロジェクト。舞台は、2020年東京オリンピック・パラリンピックでメインスタジアムと選手村を結ぶシンボルストリートとなる「新虎通り」です。「旅するスタンド」でその街自慢のモノ、コト、ヒトに触れたり、「旅するストア」や「旅するカフェ」で珍しいグルメやセレクトアイテムと出会ったり。約3カ月ごとに新しくなるテーマに合わせて、日本の魅力を凝縮。旅するように、通りを歩く。そんな素敵な体験をご用意して皆さまをお待ちしています。
SHARE