INSTANT FLOW

きょう、地球最後の日気分で(なにしよ)——藤原ヒロシの連載「INSTANT FLOW」#60

……っていう地球最後の日プレイ、時々してみるのはいかがでしょう? いつも朝昼晩とがんばる人こそぜひ。一方いつも我が道をゆくHIROSHI FUJIWARA(hf)の日常を、家政婦のように覗き見る当連載。第60回は、2023年11月〜2024年3月にアップされた投稿からおとどけします。

INSTAGRAM & TALK BY HIROSHI FUJIWARA
TEXT BY MIKA KUNII

2023年11月9日——さよなラッテリア


——この連載の常連、ミラノの名店「ラッテリア」がついに最終日を迎えましたね。
hf それで、とにかく閉店までに行っておかないと、と思って。
——マリアさんとハグ。あゝ世界一のレモンパスタ、いちどでいいから味わってみたかったです(泣)。ほんとお店は生き物。永遠に行けない場所になってしまいました。ラッテリアのレシピを誰かが引き継ぐ、ということにはならないですかね?
hf 現状はないみたいですね。おふたりが高齢で、息子さんが2人いるんですけど継ぐ意志がないという話でした。実は、ラッテリアとは何年も前からプロジェクトをやっているんです。
——え、どんなプロジェクトですか?
hf ラッテリアのグッズを作りたいという話をしていて。まだ言えないんだけど、そのうち。
——うわ、楽しみ!
hf はい。
——最後の時も、いつものメニューで。レモンパスタ、モッツアレラ、プンタレッラ。

2023年12月21日——学びよ、すすめ

——フラグメント大学。東大で始まり東大で終わりましたが、続きもあるんですか?
hf 大学院もやりたいなと。
——さらに選抜されて狭き門に。
hf 何か仕事につながるといいじゃないですか、研究しながら。
——なるほど面白いですね。あと香港でも講義をするのですよね?
hf 「コンプレックスコン」っていう、アメリカのストリートっぽいフェスティバルがあるんですが、それを香港でやるので。
——香港の若者からどんなことを聞かれるのか、ちょっと楽しみですね。
hf いや、質問は受けないんです。
——あれ? 先日聴講したときには質問のコーナー、ありましたよね。
hf それをやっぱやめようかと。みんなは僕の話を聞こうとするんですけど、僕は僕の話はしたくないんです。質問を受けて僕が何をやったかみたいな話になると結局、トークショーになっちゃう。それよりもいま面白いと感じているファッションやカルチャーの講義をしたいので。
——たしかに。

2023年12月30日——エースをねらえ

——神田の喫茶専門店エースの「のりトースト」。
hf エースが禁煙になったんです。昔はめちゃ喫煙で、そこが唯一苦手だったんですけど。
——じゃあ藤原さんには行きやすくなったんですね。まだ行ったことないんです。
hf ぜひ。のりトースト、めっちゃおいしいですよ。

2024年1月8日——Shooting Star !


——藤原さんのミックス、デイヴィッド・バーンのもNewJeansのも良かったです。NewJeansはお好きですか?
hf NewJeans、撮影しましたよ。
——えー!?
hf 多分インスタに出していると思います。
——藤原さんが撮影を? ほんとだ。

 


hf 「W」っていう雑誌から、表紙と中面を撮影してくれって言われて。
——いかがでしたか、彼女たち。
hf 撮ったのはメンバーの中の1人でしたけどね。最初のアルバムの「Attention」っていう曲がすごく良くて、今までのK-POPと全然違ってこれはめっちゃいいねって話をしてラジオでかけたりしていて。
——NewJeans、楽曲のセンスがいいですよね。優秀なスタッフがきっちり固めているんですね。
hf そうなんですよ。

2024年1月8日——懐かしさの錯覚

——ミルメーク、懐かしいけど。ん?
hf こんなパッケージで、こんな味だったかな?と。
——もとは粉末で、牛乳に混ぜるんじゃなかったでしたっけ? しかし、 いつも珍しいものを買っていらっしゃる。
hf 普通のものを上げないだけですよ。
——そうか。いや、そういうことじゃないような気も。

2024年1月11日——韓国の吉田ユニ展


——韓国での吉田ユニさんの個展に行かれてますね。
hf はい、すごく良かったです。吉田ユニさん本人に案内してもらいました。トランプの作品だけじゃなく、手描きのスケッチが置いてあったり、いろいろ作品数も多くて見応えありました。

2024年1月18日——チャレンジャーHIROSHI

——写真はイメージだった(笑)
hf ひど過ぎじゃないですか? これ(笑)
——こんなふうに組み立てられるんですか?
hf 設計図みたいなのはあるんだけど。でも絶対できない、何か溶かしたりしなきゃいけないし。
——ご自分で買ったんですか?
hf 買ったんですよ、買わないと中が分かんないじゃないですか。開けたらこれだったんでもうびっくりした。
——藤原さんチャレンジャーですよね。

2024年1月25日——イタリアが溶けこんだ野菜たち

——お野菜、味が濃くておいしそう。
hf おいしいですよ。
——それはイタリアだけ? それとも海外に行くと、そう感じることが多い?
hf いや……イギリスやアメリカではあまり感じないし、やっぱりイタリアの特徴だと思います。
——日本はどうですか?
hf 日本もおいしいとこは、おいしいですよね。
——これはブルガリの社食ですか?
hf ブルガリホテルです。

2024年2月6日——TALKING about STOP MAKING SENSE

——『ストップ・メイキング・センス』、面白かったです。観てきました。
hf あ、行きました?
——藤原さんから『アメリカン・ユートピア』の500倍面白いって聞いたので。
hf すごくなかったですか?
——すごかったですけど、500倍かな(笑)。私は『アメリカン・ユートピア』が大好きでしたので。藤原さんはまったく響かなかったんですっけ?
hf いや、観てないです。
——え、観ていない!?
hf スパイク・リーが好きじゃないから。ジョナサン・デミは好きですけど。
——なるほど。でも『アメリカン・ユートピア』も観てくださいよ。トーキング・ヘッズがお好きなんですよね?
hf いや。普通です。でも『ストップ・メイキング・センス』は好きなんです。
——どうして?
hf あのライブの作り方とか、撮り方とか、すごくないですか? あれ以上のライブ映画は、僕はできないと思っています、今後も。
——藤原さんは84年の公開時にご覧になってましたか?
hf はい。
——やっぱり、その衝撃たるや、すごかったんだろうな。
hf だって84年当時にプロジェクションマッピングとかなかったし。ステージに1人ずつ出てきて完成するとか。そういうのを全部見せることもなかったし。撮り方もライティングもなにもかもが、もう。
——それを聞いてから見に行けば良かったです。ポスターの手書き文字も、良い佇まい。
hf パブロ・フェロ。
——『博士の異常な愛情』とか『時計じかけのオレンジ』などを手掛けているグラフィックデザイナーですね。

2024年2月8日——ケニヤン愛

——ケニヤンに、こんなメニューありましたっけ? いつもアイミティー、一択です。
hf アイミティーフロートみたいな何かです。
——新作ですか?
hf どうでしょう。紅茶のアイスと生クリームがおいしかったですよ。
——「MILK TEA SERVICE」という、ケータリング専門でミルクティーを提供する人がいるんですが、それを飲んだ瞬間、この味知ってる!と思ったら、元ケニヤンの人だった。めっちゃ好きです。
hf ここのミルクティー、本当においしいですよね。

2024年2月13日——砂漠で出会った光景

——大雨の中の、砂漠の一本道。この時は藤原さんが運転されていたんですか?
hf 運転していたのは友だちです。昔はドバイってほとんど雨が降らなかったんですけど、今は1年に10回ぐらい大雨が降る。雨降ると結構、沈んじゃうんですよ。
——洪水に。
hf 旧市街とか、めちゃめちゃ平らなんで。その年間10回の大雨のために国を挙げて雨対策をどうするか悩んでいるらしいです、膨大な金がかかるし。この時はレンジローバーほど車高のある車でも、窓ぎりぎりまで水がきちゃって。
——良かった、ご無事で。

緊急速報 in DUBAI

——そういえば、この緊急速報はなんだったんですか?
hf まったく読めないから分かんないけど、よく鳴ってました(笑)

2024年2月14日——新コーナー「写真でひとこと」

——藤原さん、「写真で一言」ってお題を投げておいて、回収しないのはどうなんでしょうか(笑)
hf すみません、見てなかったです(笑)
——選びましょうよ。みなさん、はがき職人みたいにコメントしてくれているんですから。ちなみに一番多かったのが「エイドリアーン」。次いで「グリコ」。
hf 今度から回収しますって、書いておいてください(笑)
——じゃあ今回は、入賞なし? 
hf あ、でも「四十肩治った」っていうの、いいですね。それと「ラッキー、懲役2年」も。
——では今回は入賞2点、グランプリ該当なし、ということで。次のお題がインスタにあがったら、この連載で藤原さんが選んで発表するというパターンでいきますので、みなさまふるってご参加くださーい(笑)

2024年2月14日——アブダビでダ・ヴィンチは笑う(ルパンIII風)

——「ルーブル・アブダビ」のサイ・トゥオンブリーはいかがでした?
hf すごい良かったです。
——知りませんでした「ルーブル・アブダビ」の存在を。
hf 7年くらい前にアラブ首長国連邦のサディヤット島にオープンしたんです。すごいですよ。あの隣にめちゃめちゃでっかいグッゲンハイムを造っていて、前がブリティッシュ・ミュージアム、ナチュラル・ヒストリー・ミュージアムもあって、大ミュージアムタウンになりつつあります。
——それだけのアートを用意しているっていうことですよね。
hf 史上最高額で落札されたダ・ヴィンチの「救世主」は、本当はここに飾られるっていわれていたんですよ。あ、知らないですか? 映画観てないですか?
——観てないです。
hf 『ダ・ヴィンチは誰に微笑む』。めっちゃ面白いですよ、僕の話なんか聞くより観たほうがいいけど。おばあちゃんが亡くなって倉庫から出てきた絵を、アメリカの田舎町でオークションに掛けようと思ったけど全然売れなくて。結局NYの美術商が13万円で落札した。その絵が510億円にまでなって、最終的にロンドン・ナショナルギャラリーで開催されたダ・ヴィンチ展に出品されたんですよ。でもルーブルでは出さなかったんです、ダ・ヴィンチの弟子が描いたんじゃないかって可能性があって。ダ・ヴィンチのチームが描いた作品としては出せるんですけど、そうなったらバリューが下がるから。で、今は落札者が船の上で保管しているんですけど、それを「ルーブル・アブダビ」で飾るんじゃないかっていわれていたんです。
——事実がドラマ。

2024年2月14日——セキュリティの甘々さについて考える



——この方は「BROWNBOOK」の方ですね?
hf そう。アフメッドとラシームって双子なんだけど、どっちか分かんないです。
——ということで、ドバイに行っていたのですか?
hf 「World Government Summit」って世界政府サミットがあって、前から呼ばれていたんですけど。
——サミット! なんだかすごい!
hf 一度は行ってみようと思いながら、コロナがあったりとかで行けなくて。今年、初めて行きました。
——どんな催しなんですか?
hf 地球を良くする会議みたいな、ダボス会議の別バージョン。ダボスと同じぐらい大きいみたいですよ。なのにめちゃめちゃセキュリティが甘々で。僕のパスを渡して他の人が入れるぐらい(笑)。渋谷のクラブよりセキュリティ甘いのに、トルコのエルドアン大統領とかインドのモディ首相もいるんです。
——会場入り口にたどり着く時点で、もう何重ものセキュリティーはパスしてきているから、ということなんですか?
hf いや、そんなことないですよ。この時期にトルコの大統領がいるのに、他人のパスで入れるってまずいでしょ。
——どうしてそんなゆるゆるで成り立つんだろう〜?
hf ドバイが安全なんだってこと。
——どんなことを話し合ったんですか、今年は?
hf いや、僕は雰囲気を見ただけ。基本的には環境問題とかがメインですけど、僕はあんまり興味なかった。なんでか呼ばれたんで……
——藤原さんに来てほしかったんですね。しかもあのパス、写真が縦長すぎる(笑)。長体かかっちゃって顔がゆがんで、ますますパスの意味がなくなってますね! でもそれが平和の証……
hf ドバイは犯罪率もすごく少なくて。
——ちなみに、これは何のお店なんですか?
hf ゴールドスークっていう古い町のテーラーで。王族もそこで仕立てるらしいんです、この服を。
——藤原さんも作ったんですか?
hf 僕は作っていないですけどね。

2024年2月20日——HFの「きのう、何観た?」


——これは何を観ているんですか?
hf  Netflixで『アイ・アム・オールガールズ』、面白かったです。その前にWOWOWでやっていた『BOX 21』も観て、どちらも「ヒューマン・トラフィッキング」がテーマなんです。
——「ヒューマン・トラフィッキング」?
hf 人身売買。ルーマニアとかで騙して女の子を連れてきて買春させる組織のドラマなんですけど。
——重い……
hf Netflixのやつはアフリカで、WOWOWの方はスウェーデンの作ったドラマで、そっちのほうが見応えがありました。

2024年2月20日——HFの「きのう、何観た?」part2

hf これも面白かったです、『罪と悪』。『スタンド・バイ・ミー』の日本版ハードコアって感じです。
——ということは幼なじみの少年たちの物語。
hf そう。まさにそんな感じでした。
——「罪と悪、22年後に起きた新しい殺人事件ミステリー」。小説の映画化でなく、オリジナルストーリーなんですね。

 

——『鬼太郎誕生』はどうでした? まわりでは、めっちゃ評判でしたが。
hf 「めっちゃ」かどうかはともかく、想像と違って面白かったですね。

 

hf Netflixの『グリセルダ』は、めっちゃ面白かったです。この人、昔から有名なんですけど。以前『コカイン・カウボーイズ』というドキュメンタリーが話題になっていた、その人のドラマなんです。
——どんなドラマなんですか?
hf 『スカーフェイス』のオリジナル。
——アル・パチーノ主演の。
hf 麻薬密売の大ボスが女だったっていう、本当の話。
——この人が大ボスですね。

2024年3月3日——シンガポールにて

——このケーキ。ミラノですか?
hf シンガポールです。

 

——「シンガポール、セントーサ」?
hf セントーサって知らないですか? トランプと金正恩が握手した所、あそこがセントーサ。お互いの、あんまり影響しない場所ということで。
——「スニーカーコン」とは?
hf スニーカーのショーですね、よくある。

2024年3月6日——最後の晩餐の前に

hf これはミラノ。「最後の晩餐」。
——「The Last Supper」。こんなサイズ感なんですね!
hf そう。大きくてびっくりしました、僕も。「モナ・リザ」を観たらめっちゃ小っちゃいと思うように、「最後の晩餐」はめっちゃ大きいと思いました。
——この「最後の晩餐」と「STOP MAKING SENSE」の重なり方がいいですね。何かメッセージのようでもあり、意味深な感じ。

2024年3月8日——YOSHIKIとHIROSHI

——あの出会いから……
hf そうですね。あれはいつでしたっけ……
——昨年の連載で取り上げたのがこれ(7/6)
hf いま音楽を作っています。アルバムを出すんです。
——え、2人で!?
hf はい。
——すごい! その情報は公開されてます?
hf この記事に出ていたはずです、ちょこっと。
——「現在も新曲を共に製作中だと明かした」。オリジナルの曲なんですね。
hf 僕がバックトラック作って、YOSHIKIがピアノを弾く。
——インストルメンタルなんですか?
hf YOSHIKIは歌わないから。現状6曲ぐらいあるんですけど、それは全部インストルメンタルです。YOSHIKI、めちゃめちゃピアノうまいです。子どもの時から英才教育でピアノを習って。バンドではドラマーだったんですけど、そもそもはピアノ。
——白いピアノを弾いていますものね。
hf 透明ね(苦笑)
——すみません(笑)。ユニット名とかはあるんですか?
hf ユニット名あるけど、まだ内緒。僕が付けたんだけど、本当にそれにするかどうかは、まだ。
——気になります!

2024年3月11日——あたらしいモネ


hf 国立西洋美術館で参加アーティストの中の一人が抗議したんですよね、パレスチナ問題について。西洋美術館のメインスポンサーがイスラエルに武器となるドローンを販売しているとかで、そのお金でこの美術展をやっている、こんなことを許すんですか、ということを言っていました。僕が素直に思ったのは、その人は今回の展示に参加せずに、外で抗議すればよかったのに、ということ。
——展示はいかがでした?
hf 竹村京さんとモネの作品はすごく良かった。
——竹村さんって、どんなアーティストなんですか?
hf 刺しゅうとかをやる人なんですけど。モネの作品は西洋美術館のコレクションで、第二次世界大戦でボロボロになって半分、無いんです。その失われた部分をで刺しゅうで補って、重なって見えるように展示してました。
——新しい感性ですね。

2024年3月11日——ピカソのカップ、ティルマンスのまな板

——このピカソのコーヒーカップ、いいな。
hf 「バイエラー財団」のオンラインショップで買いました。
——グッズ化のセンスがいいですね。
hf そのサイト、面白いものいっぱい売っているから人に教えたくないんです。
——でも、教えてくれてる(笑)
hf ティルマンスのまな板なんかもあって。
——こっそり買ってもいいですか?
hf どうぞ。

2024年3月13日——HFの「きのう、何観た?」part3

——映画『ゴジラ−1.0』、どうでした?
hf 敢えて意味があってのことだと思うんだけど、演技が昭和の人情劇で、壮大な吉本新喜劇っぽかった感じもします。
——オスカーを取った作品ですけど(笑)
hf 低予算なのにすごいクオリティで創り上げた特殊効果が評価されたんですよね。15億くらいであれができるのはすごい。だってハリウッドでは普通に600億とかじゃないですか?
——しかも、たった35人のスタッフでやり遂げた技術力に世界は震えたんですね。
hf それは、本当にすごい。
——他にアカデミー賞関連でご覧になったもの、ありますか?
hf 『落下の解剖学』。 でも僕にとってはあまり高得点じゃないです。
——カンヌのパルムドール受賞作品ですよ。
hf そもそも僕は、パルムドールを獲るような映画が嫌いです。『怪物』とかも。
——どうして?
hf 映画が好きな人が褒めまくる映画が苦手なんですよね。
——もっと深掘りしたいお話ですねえ。

2024年3月13日——パルムドールは信じない

hf NHKの「世界のニュース」、今も見てますか?
——ときどき見てます。番組名と放送時間が変わって、「キャッチ!世界のトップニュース」という番組名になり、NHK総合で朝10時5分からやっていますね。
hf 最近さらにやばくないですか、ハイチ。
——国として崩壊していますね……
hf ハイチは前から追っ掛けているんですが、今はギャングが牛耳っていて、刑務所に押し入って4,000人のギャングが町に放たれた。
——文字通りの無法地帯。
hf そう。ギャングのリーダーは愛称「バーベキュー」っていうんですけど。
——元警官なんですよね。
hf 「バーベキュー」が出てきて首相を脅迫しているんです。表出てこい、みたいな。でも、どこかへ行ったまま帰ってきていない。で、そいつを辞めさせて、俺らが仕切るみたいなことを言っているんですよ。
——アメリカ大使館とかも引き揚げて。もう展開がNetflixのドラマ。
hf 本当に。映画化できるというか、まさに今オンタイムで進行中です。エルサルバドルのことは知っています?
——今、どうなっているんです?
hf エルサルバドルって4~5年前まで世界で一番危ないぐらいな、コロンビアギャングも近寄れない国だったけど今、アメリカ、カナダに続いて3番目に安全な国なんですよ。
——そんな急に安全になるものなんですか?
hf 新しい大統領になって、2年ぐらい前にビットコインを国の通貨にしたんです、世界で初めて。それから大統領が大きなハイテク刑務所を造って、軍と警察が組んでギャングを捕まえたら裁判なしでそこに入れるっていう政策をやっていたら、全ギャングが捕まって平和になったんです。なおかつビッドコインが通貨だから景気がすごい良くなって。
——そうなんですね……。藤原さん、BS時代からずっと見ていますよね。
hf 話は変わるけど、シンガポールへ行った時に、知り合いのお母さんが中国系ジャカルタ人で、ハワイ生まれのハワイ育ちだったんです。どうしてハワイなのかと聞いたら、実はそのお母さんがインドネシアからハワイに逃れて暮らしていたと。なぜかというと、100万人が殺された1960年代のジャカルタの大虐殺の時に、ということだったんです。
——ジャカルタで大虐殺があったんですか?
hf 1960年代に100万人が亡くなり、その後、90年代にも500人ぐらいが殺されてる。
——なんと……
hf その大虐殺を扱った『アクト・オブ・キリング』というドキュメンタリー映画がすごいです。大虐殺時の映像は一切ないですけど、フランス人の監督がそのとき虐殺に加担したギャング集団に、過去の行為を同じように演じてもらって再現映画を作りたいと言うと彼らは「もちろんやるよ」ってノリノリで協力。俺は何百人殺したみたいな人が何人も出てきて。
——うわ……
hf 多分今だったら絶対に炎上してハーグ裁判所に行くぐらいな内容なんだけど。だって何百人、何千人と殺した本人たちが出てきて、自慢気に話しているんだから。それをフランス人がシュールに撮ったドキュメンタリー映画なんです。
——すっごい映画ですね……! あとアカデミー賞関連で見たいなと思ったのが、アウシュビッツの隣に住んでいるドイツ人一家の話『関心領域』。
hf あれ、興味あります。
——収容所の隣に所長の家族が住んでいるんだけど、まるで無関心。その様子が今の世界を表しているようで、無関心なのは私たちなんだ、ということなんですかね。これはカンヌでグランプリも獲ってますね。
hf でもまあ、僕は「パルムドールは信じない」ですから。
——「ポニーテールはふり向かない」みたいなタイトルになりそう(笑)

 

藤原ヒロシ|Hiroshi Fujiwara
1964年三重県生まれ。DJ、音楽プロデューサー、ファッションクリエイター。fragment design名義でファッションをはじめさまざまなジャンルのクリエイティブ・ディレクションを行い、ストリートカルチャーに多大な影響を与えている。