最近よく耳にする”美肌菌”というワード。菌が美肌へのカギを握るというメカニズムを、専門のドクターが解説。乾燥や肌荒れが気になるシーズンこそ、菌の力で肌を守って。
TEXT BY Naho Sasaki
全身の健康や免疫に関わる、腸内の細菌バランス=「腸内フローラ」は知っているけれど、「肌フローラ」については知らない人が多いのでは? 肌の細菌バランスが乱れていると、ニキビや敏感肌、肌荒れ、アレルギー性皮膚炎などが起きやすいということも近年判明。「そもそも美肌菌とは?」から「美肌菌を増やす方法」まで、菌ケアドクター下川氏が解説します!
美肌菌は“減らさないこと”がポイント
——最近TVや雑誌で話題ですが、そもそも美肌菌って何をしているものなのでしょう?
「肌にも、腸と同じように、多種多様な細菌が棲みついて肌フローラ(マイクロバイオーム)を形成しています。代表的なのが、表皮ブドウ球菌。別名“美肌菌”と呼ばれる善玉菌で、皮脂をエサにして増殖し、肌の潤いのもととなるグリセリンを作ってくれています。つまり、肌の美と健康のもと。表皮ブドウ球菌は、多ければ多いほどいいと言われています」
——うるツヤ美肌の源ということですね。どうしたら増やせますか?
「いかに減らさないか、という観点がまずは大事。皮膚細菌3000検体を採取し、使っている化粧品を調査したところ、オイルクレンジングやダブル洗顔、ピーリングなど、洗浄力の高い化粧品を使用しすぎることで、美肌菌が減る傾向にあることがわかりました。美肌菌は角質層にいるので、汚れと一緒に落としすぎてしまうためです。化粧水や美容液なども、強い界面活性剤を配合しているものはお勧めできません」
——美肌菌を育てるスキンケア選びのポイントは?
「肌のphを良好に保つ、弱酸性スキンケアを選びましょう。乳酸菌や発酵成分を配合したスキンケアも良いでしょう。phがアルカリに傾くとアクネ菌やマラセチア菌などが増殖しやすく、美肌菌に不利な環境に。ph検査紙はネットでも手軽に購入できるので、ぜひ計ってみてください。理想のph値は5前後です。
生活習慣では、定期的に汗をかくことも美肌菌を育てるのには有効。また、乳酸菌やビフィズス菌の生産物質をサプリで摂取して、腸内環境を整えることも美肌につながります」
——腸内環境が、美肌菌とも関係しているのですね!
「腸内環境がよくないと、皮脂が過剰に分泌されたり、汗の質が変わることで皮膚の細菌バランスに影響します。腸内環境の乱れは、美肌菌に影響する。つまり、肌と腸は相関関係にあります。美肌菌を増やすには、内側からのケアは欠かせません」
——肌フローラは、どう決まるのですか? 遺伝しますか?
「毎日のスキンケアでかなり変わります。やはり洗顔による影響が大きいですね。遺伝はしませんが、出産の過程やスキンシップで家族の菌が定着することはあります」
——アトピー性皮膚炎は、美肌菌とも関係がありますか?
「アトピー性皮膚炎は、悪玉菌である黄色ブドウ球菌の増殖が関係しています。美肌菌は、黄色ブドウ球菌の暴走を抑える抗菌ペプチドを作り出す働きもあるので、間接的には関係があるといえます」
——マスク生活で、美肌菌に影響はありますか?気を付けたいことは?
「“摩擦”は、美肌菌の大敵。こすれにくい形状や素材のマスクを選ぶとよいでしょう。乾燥も美肌菌が棲みつきにくくなるので、保湿が大切」
——ニキビの原因といえばアクネ菌。アクネ菌もやっぱり悪玉菌?
「アクネ菌は毛穴の中にいて、表皮を弱酸性に保つ、潤いを保つ…など良い働きもする日和見菌。ですが、過剰分泌された皮脂が毛穴に詰まると、アクネ菌が増えすぎて、ニキビの原因になります。年齢と共にアクネ菌は減りますが、ストレスや高糖質の食事などは、皮脂分泌を促しアクネ菌が増殖する要因に。ちなみに、ニキビが気になるからと洗浄力の強い洗顔料を使うのはNG。悪い菌だけのつもりが、美肌菌も根こそぎ除去してしまうので、肌フローラが乱れてしまう可能性があります」
美肌のためには、「美肌菌を減らさず育てるケア」と「腸内環境を整える生活習慣」が大事ということ。トラブルが起こりにくい健やかな美肌のために、菌に優しいライフスタイルを。
下川穣|Yutaka Shimokawa
株式会社KINS代表/歯科医師。都内医療法人理事長を経て、2018年「菌の可能性をもっと知ってほしい」という思いから株式会社KINSを設立。世界初となるITサービス+検査キット+サプリを組み合わせた、総合的な“菌ケア”サービスを提供する。
SHARE