Real luxury in ultimate simplicity

シンプルを極めた空間で真のラグジュアリーを体験——MORI LIVINGへの招待 31

2003年に完成した六本木ヒルズが今年でオープン15周年を迎えるにあたり、六本木ヒルズレジデンスC棟の一部デザインと設備を一新。内装デザインを担当したリチャード・ドゥーン氏に目指したコンセプトから具体的な仕様まで話を聞いた。

Photo by Satoshi Nagare
Text by Seishi Isozaki
Edit by RCKT/Rocket Company*

海辺に切り立つ岩の地層を思わせる、石造りの壁が印象的なリビングダイニング。床板の淡い色は、浜辺のボードウォークを象徴。

曲線を描く柱が特徴的なマスターベッドルーム。ヘッドボード側の壁の裏はウォークインクローゼット。

経済的な視点に偏らず、真の人間の豊かさを追求する“文化都心”を東京につくる──そんな思いを結実させ、2003年に完成した六本木ヒルズ。オープン15周年を迎えるこの夏、MORI LIVINGは六本木ヒルズレジデンスC棟の一部デザインと設備を一新。より明るく、より広々と使える、快適な生活空間を作り上げた。内装デザインを担当したリチャード・ドゥーン氏は、26 年にわたりテレンス・コンラン卿率いるコンラン&パートナーズに勤務。その間、同社のアジア担当責任者として、六本木ヒルズの再開発プロジェクトに携わり、六本木ヒルズレジデンスの外装や内装デザインなどを手掛けた経験を持つ。

「2010年にコンランから独立していましたし、今回のリノベーションを担当できるとは、夢にも思いませんでした」。通常、建築家の仕事は、クライアントへの引き渡しをもって完了し、その後はいっさい関わりを持たないことが多い。「客観的に自分の作品を評価し、自分の手でリノベートする。そんな経験は、滅多にできるものではありません」

今回リノベーションが行われたのは、C棟27〜36階の一部分。かつてコンラン&パートナーズがForest(森)、Desert(砂漠)、Mountain(山)をイメージしてデザインした3種類の住戸のうち、『Mountain』を全面的に改装した。「私はデザインの方向性を決めるために、まず“ストーリー”を考えます。今回はその舞台をMountain(山)からShoreline(海岸線)へと移し、波打ち際から陸へと続く風景をイメージしながらデザインしました」。

Mountain(山)をイメージしてデザインされた六本木ヒルズレジデンスオープン当初の部屋。

ドゥーン氏は石造りの壁で岸壁の地層を、壁と柱の角を丸く削ることで、波風による風化や浸食を表現。淡い色の木の床は海岸沿いのボードウォークを、キッチンのペールグリーンの面材は、陽光にさらされて色褪せた、浜辺の植物を連想させる。「ストーリーはデザインの指針となるので、私たちにとっては非常に大切ですが、必ずしも住む方に知っていただく必要はありません。実際に住む方には、ただ気分よく、快適に暮らしていただけたら充分です」

岩山の山頂に積もった雪を白黒のコントラストで表現。

ストーリー性のあるデザインを実現するにあたり、ドゥーン氏が注力したのは、シンプルを極めることだ。六本木ヒルズレジデンスにふさわしい“ラグジュアリー”は“洗練”と同義であり、突き詰めると“シンプル”に行き着くと考えているという。

「飾り立てることでラグジュアリーを表現する手法もありますが、私はディテールにこだわり、クオリティを高めることで“真のラグジュアリー”を追求したいと考えています。クライアントである森ビルも同じ価値観を持ち、それを実現するのがいかに難しいかもよく理解している。そうした状況で仕事ができたことを嬉しく思っています」

日本での仕事、とりわけ森ビルとのプロジェクトでは、すべてのスタッフが品質に対して厳しい目を持ち、細部にまで目を配る姿勢を持っていることに共感を覚え、尊敬の念を抱いているというドゥーン氏。「例えば柱の角を丸く削る。床板の幅を広くする。引き戸が戸袋にピッタリと収まるようにするなど、地味な作業にも真摯に取り組み、完璧に仕上げるクラフトマンシップもまた、“ラグジュアリー”を形づくる大切な要素」だと話す。

何をもってラグジュアリーとするかは、人それぞれだが、近年は世界的に、シンプルであることに価値観を見出す風潮が高まっている。今回六本木ヒルズレジデンスC棟に誕生した『Shoreline』は、その最先端を行く存在として、注目されることだろう。

profile

リチャード・ドゥーン|Richard Doone
建築家。UCLバートレット校にて建築学を修めた後、コンラン・ロシュ(現コンラン&パートナーズ)へ入社。国際的なプロジェクトに多数取り組み、日本では六本木ヒルズ、二木倶楽部などの開発に携わる。2010年に独立し、ドゥーン・シルバー・カーを設立。

MORI LIVING
ROPPONGI HILLS RESIDENCE
六本木ヒルズレジデンス

所在地 東京都港区六本木6丁目12-1〜4 アクセス 六本木駅 徒歩約5分[地下鉄 日比谷線・大江戸線]麻布十番駅 徒歩約9分[地下鉄南北線・大江戸線] サービス 24時間フロントサービス(バイリンガル対応)、ドアマン&ポーターサービス、健康相談室、室内設備メンテナンス(一部有料)、ハウスキーピング(有料) 備考 トランクルーム・駐車場あり(空き状況により利用可、有料)、ペット可(飼育できるペットに制限あり)、棟内の「六本木ヒルズスパ」を利用可、ビューラウンジ、ゲストルームあり(有料)


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