MOTHER'S DAY FLOWER BOUQUET

“ありがとう”を花に託して——ヒルズのフローリスト4人が語る「私の母の日」

今年の母の日は5月13日、“ありがとう”の伝え方はきっと人それぞれ違うはず——。そこで今回はヒルズにある4軒の花屋のフローリストを訪ねて、予算5,000円で旬の花を束ねてもらいながら、母の日と花に対する思いを聞かせてもらった。

TEXT BY NAO KADOKAMI
PHOTO BY KOICHI TANOUE

❶ ディリジェンスパーラー|越智康貴 さん
「母の日は誰もが普段以上にお母さんを思う日」

「イメージを浮かべながら花を束ねています」とは、表参道ヒルズ「ディリジェンスパーラー」のフローリスト・越智康貴さんの言葉。実際に野に咲くのでは起きえない組み合わせを楽しめるのは、切り花のブーケならでは。花やグリーンがもつ生命力を生かす、“植生”をテーマに掲げる花屋だ。

「季節をまたいで出荷される切り花で、自然には起きえないような新しい花の組み合わせを楽しんでほしい」(越智さん)。毎日30〜40種の花が店頭に並ぶ。

越智さんのお母さんが“花好き”で、母の日にブーケを贈ったことは数知れず。そのブーケは一種類の花をたっぷりと束ねたものが定番だそう。

「一種類にすると、もらった人はその花への理解が深まりますよね。ミックスにするなら、一輪は自分が選んだ花を入れると、もらった人は嬉しいと思うんです。その人はどういうものが好きかな? と考える時間は、その人について考える時間だと思うので」

「複数種のミックスだと次々に咲いていく喜びがある。一種類だと、花に込めた思いがストレートに伝えられる。そんな気がします」(越智さん)

そんな越智さんが母の日をイメージして手がけたのは、赤のダリアをメインにさまざまな種類・色の花を束ねたブーケ。花が咲くスピードや順番がそれぞれに異なることがポイントだそう。「花を贈った日はもちろん、その翌日以降もずっと新鮮な喜びを感じていただきたいので」。また花から根までクリアに見えるショッパーには、葉や根を含む植物全体のエネルギッシュさを楽しめるように、という願いが込められている。

約7000円以下のブーケなら、こちらのショッパーに入れてもらえる(ダリア スターチス カンパネラ カーネーション バラ ブルースター ヒペリカム スプレーカーネーション)

profile

越智康貴|Yasutaka Ochi
「DELIGENCE PARLOUR」主宰。フローリスト歴10年。好きな花はバラや蘭、ユリのような一輪でも主役になるもの。「今年も、一種類の花をどっさりまとめたブーケを母に贈ろうと思ってます」

❷ ニコライ バーグマン フラワーズ & デザイン|土屋美華 さん
「常に私を花がある環境に居させてくれた人」

「母の働く姿を見て、フローリストになりたいと思いました」。全国各地に店舗をもつ「ニコライ バーグマン フラワーズ & デザイン」のエリアマネージャーを務める土屋美華さんはそう話す。青山・骨董通りで出会った16年前からニコライ・バーグマン氏と共にブランドを盛り上げているが、実家も花屋であることから、土屋さんの暮らしのそばにはいつも花があった。

各企業とのコラボなども多く手がける、業界最先端をいくショップ(訪れたのは六本木ヒルズ店(エストネーション内)

「二人に共通するのは、サプライズが大好きで、ビジネスセンスも鋭いところです」。「ニコライ バーグマン フラワーズ & デザイン」に勤め始めてから今も変わらず、ニコライ氏の進化し続けるインスピレーションに常に驚きがあるそう。「子どもの頃は家の花屋を手伝っていました。そのときの学びとニコライから日々受ける刺激が、今の私に繋がっています」

「ブーケを束ねてると癒されます。初めて生け花をしたのは3歳、いつも花といられたのは母のおかげ。感謝してます」(土屋さん)

「母の日限定フレッシュフラワーボックス」は、毎年贈られる土屋さんのお母さんもお気に入り。「ブーケでなく、あえてお店のシグネチャーアイテムを贈るんです」。今年のテーマは母の日カラーとしてトレンドのピンクにニュアンスを出した造語“スカーレットピンク”。箱を見て、フタを開けて。そのときのお母さんの表情をつい想像してしまうアイテムだ。

「今年のテーマ“スカーレットピンク”は、母の優しさを感じるようなやわらかなトーン。白色のロゴもポイントです」(土屋さん)(母の日限定フレッシュフラワーボックスSサイズ/スプレーバラ スプレーカーネーション スプレーマム)

土屋美華|Mika Tsuchiya 
「Nicolai Bergmann Flowers & Design」
エリアマネージャー。フローリスト歴約20年。好きな花は香り高いシャクヤク。「お母さんにフローリストを勧められたわけではなく、あくまで自然な流れ。でもフローリストになると伝えるとすごく喜んでくれました」

❸ レ ミルフォイユ ドゥ リベルテ|天野加奈子 さん
「娘としては、母が好きなバラを贈りたい!」

「一つのブーケには3種類のグリーンを必ず入れるのが当店のモットーです」。虎ノ門ヒルズ「レ ミルフォイユ ドゥ リベルテ」店長の天野加奈子さんは教えてくれた。フランス語名の“レ ミルフォイユ”は1,000枚の葉、“リベルテ”は自由を指す。旬の花をナチュラルに楽しんでほしいとの思いが込められている。

「旬の花の魅力はエネルギーがあって、元気が出ること。季節も感じられるのが嬉しいですよね」(天野さん)

花は実にナイーヴなもの。だからこそ、日によって美しい花は変わる。「今回はバラの“キーラ”を主役にします。今日並んでる中できれいだったから」。天野さんは“母の日=カーネーション”と思う必要はないと考える。「大切なのは感謝の気持ちを届けること。その中で季節感も楽しめると素敵ですよね」

「故郷から東京に来て、それまで以上に花から元気をもらう機会が増えて。フローリストは植物と人に近く、季節とともに歩める仕事です」(天野さん)

もともと庭のある家庭で育った天野さん。昨年実家が改築するまでの母の日は鉢物の花を贈っていたが、庭がなくなった今年は、ブーケを初めて贈るそう。「庭に生えるバラをイメージしてブーケを束ねました。あと母には今年香水も贈りたいです。花も含めて、“香り”は受け取る人の記憶に残ると思うから」

「母が好きなバラを贈りたい。この“キーラ”は国内で2カ所でしか生産されない希少なものなんです」(天野さん)(バラ スノーボール カンパニュラ シラー てまり草 ゼラニウム エメラルドビーズ グレープアイビー レモンリーフ)

天野加奈子|Kanako Amano
「Les mille feuilles de LIBERTÉ」店長。フローリスト歴4年。今の季節、好きな花は香しいハゴロモジャスミンとスズラン。「このお店は水換えもこまめ。植物を大切にするスタンスは働いてる自分にとっての誇りです」

❹ ビビアン|前田直愛 さん
「花の好み…母と私は真逆ですね(笑)」

「初めてパリに行ったときに、現地の花屋にすっかり魅了されたんです」。パリのエスプリが光るアークヒルズ「ビビアン」を営む前田直愛さんは、店を開くと決めた当時を振り返る。日本の花屋との違いは葉をふんだんに取り入れるところ。フローリストになってからは、母の日には自分が束ねたブーケを贈るようになった。

ヨーロッパと和のニュアンスを織り交ぜたフラワーアレンジメントを手がける。店の空間の“ニュークラシックモダン”がコンセプト。

「母はコーラスが趣味でよく笑う人。だからオレンジグラデの華やかなブーケにしようかな」。そして近年ブームのネイティブフラワーで母の力強さを表現。「私はシックなテイストが好きで、店の壁や包装紙も無彩色を選ぶほど。でも母は素直に明るいものが好きだから、母の日は母の好きなものを意識します」

「昔母が“こんな花をこう束ねるのが好き”って言ってたかな……と思い出しながらいつも束ねるんです」(前田さん)

コーラスとリンクするバラ“ラ・カンパネラ”を主役に、ユーカリなどの葉を添えて。ところでフローリストにとっては、母の日は一年で一番忙しい一日と聞くが。「当日の閉店後はもうフラフラです。自分の母には、もういいかな……とも思うんですけど(笑)、それでも、結局今年もブーケを作るんだろうな」


「葉と一口にいってもグリーンの風合いはさまざまですよね」(前田さん)(バラ トルコキキョウ 貴婦人 ラナンキュラス リモニウム ユーカリ テトラゴナ ポポラス アイビー プロテア)

前田直愛|Naoe Maeda
「beebien」代表。フローリスト歴10年。好きな花はたわわに、美しく咲くシャクヤク。「ビビアンの名前はいろんな経緯から付けました。響きはBEE(蜂)、ビアン(トレ“ビアン”)の組み合わせから」

(注) 今回、ご紹介したすべてのブーケは5,000円でアレンジしていただきました。