WEEKEND TRAVELER

オン/オフを自由にして「目が喜ぶ」アートな旅を——中山晃子(画家)

クリエイティブな人たちは、得てして時間の使い方がうまい。なかでも、1日や2日という短期間で、驚くほど効率的に旅をする人は、セルフマネージメントの達人と言えるだろう。そうした賢人たちの行動例から、週末小旅行のアイデアを学ぶシリーズ。今回のゲストは、さまざまな液体を操る「Alive Painting」というパフォーマンスを行う画家の中山晃子さん。2017年の12月に ブルガリア・韓国・ベルギーで公演を行ったという中山さんが考える「旅」の喜びとは。

TEXT BY SHINYA YASHIRO
PHOTO BY AKIKO NAKAYAMA

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1/7ブルガリアの伝統的な刺繍。
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2/7ブルガリアの首都・ソフィアで温泉を汲む人たち。
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3/7ソフィアの温泉水を使って描かれた中山の「Alive Painting」。
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4/7街中で見かけたネコ。
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5/7ソフィアの壁に描かれた落書き。どことなくギリシャ風。
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6/7ブルガリア語のキリル文字が配されたタイプライター。
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7/7セルディカ古代要塞の遺跡。ソフィア市内には、およそ1800年前からの建築が残っていた。

——2017年は海外で活躍される機会が多かったとお聞きしました。お仕事で様々な国を回られるとき、 時間をやりくりして旅をより豊かにする、中山さんなりのコツを教えてください。

中山 昨年の 12月は、まず韓国のソウル郊外でライブをしてからベルギーのアントワープとブリュッセルへ、その後ブルガリアのソフィアへ向い、もう一度ベルギーのアントワープに戻って帰国しました 。 パフォーマンスをするために招聘されているので、タイトなスケジュールが多いですが、美術館や博物館に行ったり街を散歩するようにしています。現地で見つけた画材を使ってパフォーマンスを行うのですが、買い出しの時に散歩をしながら街の美しさを探したりとか。ブルガリアでは、こんな感じでした。

1日目

08:00
キュレーターの友人が運営するゲストハウスで起床。
09:00
現地の国営放送で取材を受ける。
10:30 
公演に呼んでくれたキュレーターと、「レインボーファクトリー」というカフェにて早めのお昼ごはん。
12:00 
部屋に戻る。パフォーマンスが夜なので、外に出かけることに。街を歩きながら、街の温泉が出る水道を見つけ、ライブで使うことに。「SQUARE 500」「考古学博物館」など美術館や博物館を巡る。
17:00
パフォーマンス会場の「Дом на киното(映画館)」へ。公演の準備を行う。
21:00
ブルガリアのアンビエントアーティスト・E.U.E.R.P.I.と、パフォーマンスを行う。
23:00
キュレーターや、他の出演者と会場を離れ、打ち上げに。ブルガリア名物の「スィレーネチーズのサラダなどなど」を食べる。
25:00
ゲストハウスに戻り、就寝。

2日目

午前中
ゆっくり過ごす。
12:00
昨日のパフォーマンス会場に行き、機材をピックアップ。
13:00
部屋に荷物を置き、再び散策。「アレクサンダル・ネフスキー寺院」、「国立美術館」、などへ。
19:00
部屋の家主とその友人に誘われ、カフェレストラン「Tea House」へ。現地の音楽を聴きながら食事をする。
24:00
ベルギー行きの深夜便に乗るため、部屋に戻り荷物をとり、空港へ向かう。

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1/7韓国・ソウルの郊外の工業地帯にあるアートスペース「Indie-Art Hall Gong」で行われた中山のパフォーマンス。リアルタイムに素材を混ぜ、動く「絵」がかつての工場の壁に投影されている。
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2/7ソウル郊外の工業地帯にあった画材屋。工業用のため、売り物のスケールが大きかったという。
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3/7韓国で食べた「ピョダギヘジャンク」。地元のビールと共に。
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4/7道の端に置かれたイスの色も、韓国と日本だと違うという。
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5/7ベルギー・アントワープの美術館「 Museum aan de Stroom」の屋上に置かれたインスタレーション。
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6/7アントワープで見つけた標識。
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7/7画家ルーベンスの家「Rubenshuis」に置かれた彫刻。大理石の模様も美しい

———中山さんの旅にはオンとオフの切り替えがあまり無さそうですね(笑)。

中山 あまり時間では、オンとオフを決めないようにしています。わたしにとって、オフは目の前にフッと現れた空白に対して、力を抜いたり、意識を拡げてみる感じです。丸一日忙しいオンの日だとしても、そのなかの数分、数秒でも完全のオフを見つけて楽しむ。好奇心を持ってアイデアの畑を耕し続けるアーティストの仕事は、そもそもオンとオフの境目がないともいえます。ただ、その中で体の力を抜いて、意識の自由を確保するように心がけています。海外だから出会える光の状態や、配色など、普段は会えないものがたくさんあるので、それに身体を触れさせて、喜ばせるような感覚です。もちろん目だけではなく、耳や舌も。

——なるほど。アーティストの方々とは異なる形で日々を忙しく生きるビジネスマンの小旅行にも、参考になりそうですね。今年は、どんな場所に行かれる予定ですか。

中山 3月の頭にパリでメディアアートのイベントにソロパフォーマンスすることが決まっています。いまその前にブルガリアにもう一度行けないか考えています。トルコから伝来した絵の具を水に垂らした模様で染めるマーブリングの伝統があるので、それを見たり、温泉にも入ってみたいです。また5月から3カ月間韓国でアーティスト・イン・レジデンスをする予定です。一度行った場所とは、またつながることが多いですね。


中山がブルガリアの首都ソフィアで行ったパフォーマンスの様子(ライブは5分15秒ごろから)

中山晃子 ‘Still Life’ 
中山のパフォーマンスを使った後の液体を濾過すると、画材が固着化し液体とは全く異なる表情を見せる。そんな濾紙を展示するプロジェクトが、1月21日(日)から2月3日(土)まで東京・南青山のArt & Space cococaraで開催。初日となる21日にはライブ+トークイベントも。

profile

中山晃子|Akiko Nakayama
画家。液体から固体までさまざまな材料を相互に反応させて絵を描く「Alive Painting」というパフォーマンスを行う。科学的、物理的な法則に基づくあらゆる現象や、現れる色彩を、生物や関係性のメタファーとして作品の中に生き生きと描く。ソロでは音を「透明な絵の具」として扱い、絵を描くことによって空間や感情に触れる。近年では TEDxHaneda、DLECTRICITY ART FESTIVAL 2017 (US Detroit) 、Ars Electronica Fes 2016(Austria)にも出演。