香水業界の新たな潮流、“ニッチフレグランス”という言葉をご存知だろうか。ひと言でいうと、マスマーケット向けではなく、パフューマー主導でつくられた本物志向の香水。欧米の洗練された人々を中心に、希少な天然香料やアート性にこだわった個性豊かなブランドが注目されているのだ。「みんなと一緒の香水はイヤ」「香水の数があまりに多くて選べない」という女性たちの新たな選択肢として、注目されるニッチフレグランス。自分らしい香りを探すアーティスティックな旅の入り口へとご案内。
TEXT BY NAHO SASAKI
PHOTO BY SACHIKO FUJII
1/5FUEGUIA 1833
アーティスト一家に育ったジュリアン・ベデル氏が創設した、ブエノスアイレス発のパフューマリー。パタゴニアの歴史と大地を感じさせる香りのコレクションは、非常に文学的でいて情熱的。香料植物の研究にも熱心で、ユニークで実験的な香りを次々と発表している。最新作は、植物原料でムスクの香りを再現した「ムスカラ」に、最高峰の植物を1種のみ加えたシングルノートコレクション。「ヴェティヴェリア」は、ベースノートとして好まれるベチバーを主役に据えた、ウッディな中に安静と静寂を感じるミステリアスな香り。フエギア 1833 ムスカラ ヴェティヴェリア 100ml ¥38,200(
FUEGUIA 1833 東京本店/グランド ハイアット 東京1F)
2/5THIRDMAN
2012年にニューヨークで誕生。装飾を削ぎ落したボトルデザインと、前衛的でジェンダーレスな香りが注目された。その魅力は、オーデパフュームよりもライトなセカンドスキンのつけ心地。浴びるようにまとって、気分までフレッシュになる5種の香りをラインナップ。「オー コントレイル」はまるで太陽の雫のような香りで、シチリア産ブラッドオレンジにインド産カルダモンを利かせたみずみずしい高揚感で満たされる。サードマン オー コントレイル 100ml ¥13,000(
エストネーション/六本木ヒルズ ヒルサイド1F&2F)
3/5LABORATORIO OLFATTIVO
イタリア語でその名も「嗅覚の実験室」。香水業界で活躍する調香師たちが集まり、それぞれが自由なインスピレーションでクリエイションを行う。マリー・デュシェーヌが調香した「コズメル」は、メキシコの太陽の下で男性の素肌とハーブのアロマが混ざり合ったような野性性を秘めた香り。バジルやベルガモットのトップから、タバコやインドヘンプが媚薬のように漂う。15種そろう香りは賦香率の高いオードパルファムが中心で、肌で濃密に香る設計。ラボラトリオ・オルファティーボ コズメル 100ml ¥17,000(
エストネーション/六本木ヒルズ ヒルサイド1F&2F)
4/5BYREDO
2006年に誕生し、またたく間に世界中から脚光を浴びたスウェーデン発のバイレード。クリエイティブ・ディレクターのベン・ゴーラムが、私的な記憶や体験を辿りながらストーリーのある香りを編み出す。母の故郷インドで出合ったお寺の香や白檀を、西洋的な香料とマッチングするセンスも抜群で、オリエンタルで洗練味あふれる香りは日本人の嗜好にもぴったり。一番人気の「ジプシー ウォーター」は、バニラとウッドが溶け合う柔らかくも凛とした香り。バイレード オードパルファム ジプシー ウォーター 100ml ¥23,400(
エストネーション/六本木ヒルズ ヒルサイド1F&2F)
5/5RĒGIME DES FLEURS
アートな創業者による花の華麗なメッセージが香る、超ラグジュアリーなコレクション。希少な植物香料が中心のため、時とともにワインのように熟成され、馥郁とした芳香へと移ろうアルティザンな香りの世界が楽しめる。「ナイトサーフ」は、燻したインド産のシーシェルやチュニジア産ネロリなど、地球上で得られるもっとも高価で希少な原料を惜しげもなく使用したマリンフローラルの調香。「ナイトサーフ」を含む“Fait Man”のコレクションはアメリカ国外ではエストネーションでのみ販売され、ボトルデザインから梱包まで創業者自らひとつひとつハンドメイドしたシリアルナンバー入りという超レア品。他人とカブる心配はほぼゼロ! レジーム・デ・フルール ナイトサーフ 33ml ¥43,200(
エストネーション/六本木ヒルズ ヒルサイド1F&2F)
少量生産の希少なフレグランス
ほぼ独学で調香を学んだ調香師もいれば、誰もが知るメジャーなファッションブランドの香水を手掛ける調香師まで。ニッチフレグランスは、才能あふれる調香師たちがマーケティング戦略や広告イメージなどから解放されて、純粋にアート性や個性を追求してつくられた香水ブランドのこと。
ある意味、採算も度外視だ。珍しい香料や希少性が高い天然香料を用いられることが多く、ほかにない独創性にあふれた香りがそろうのがその魅力。調香師たちのクリエイションの最高峰に触れられる、いわば、香水界のオートクチュールといっていいかもしれない。
「あ、香水ってアートなんだな」と世界が広がる喜びとともに、「その香りどこの?」と周りに聞かれる楽しみもくれるニッチフレグランス。百聞は“一嗅”に如かず、本物志向の香りをお試しあれ。
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