味覚の秋、到来! 秋刀魚やきのこ、栗やさつまいも……、そんな秋ならではの食材を使った料理には、同じく秋らしい器を用意したいもの。料理家の谷尻直子さんと六本木を散策して、秋の料理が映える器を探しました。
TEXT BY Yuka Uchida
PHOTO BY Kiyoko Eto
作家の繊細な感性が、メイン料理を引き立てる
最初に訪れたのは、西麻布の交差点から路地を入るとある「桃居」。店のオープンは1987年。店主の広瀬一郎さんは、全国の器好きはもちろん、作家からも信頼の厚い人物だ。「顔の見える作り手と顔の見える使い手の橋渡しを」という思いで、30年間、店を続けている。
「桃居さんが扱う作家さんはどの方も素敵。軸が一本通ったような、ブレのないセレクトなので、とても信頼しています」と谷尻さん。取材時に開催されていたのは、神奈川県の津久井郡(現・相模原市)で作陶する長谷川奈津さんの個展。器だけでなく、花器や茶道具も並ぶ、見応えのある内容だった。
「桃居」では、常に作家の個展が開催されており、その間に店に並ぶのはその作家の器のみ。2017年11月3日〜7日は青木良太の個展、11月10日〜14日は浅井純介の個展が開催されるという具合だ。店主の広瀬さんが声をかけた、今を生きる作り手たち。個展という場だからこそ、その作風にじっくりと向き合うことができる。
およそ100名の作家の中から、自分の感性に合う器を探す
続いて向かったのが、六本木交差点から徒歩5分の場所にある「GALLERIA645」。古い民家を生かした空間にずらりと器が並んでいる。取り扱い作家はおよそ100名。中でも、やちむんや有田焼の器が多いという。
「宝探しをする感覚で楽しめる空間ですね」と言いながら谷尻さんが選んだのは、シンプルな小皿や中皿。手にするたびに「これは鍋の薬味にいいかも」「これはデザート用に」と盛り付ける料理のイメージを伝えてくれる。
器選びのポイントはここにあり。具体的な料理をイメージしながら手にするだけで、器そのものの見え方も変わるから面白い。シンプルな白い器だからこそ、生える料理もあるのだ。テーブルセッティングはバランスが大切。料理との調和、器通しの調和を考えながら選べば、食卓はいっそう楽しくなる。
谷尻直子さんの「秋刀魚のトマトソーススパゲティ」
作り方(2人前)
トマト缶————————1缶
ニンニク————————1片
はちみつ————————小さじ1/2〜小さじ1
塩(トマトソース用)——小さじ1
ローリエ————————3〜4枚
オリーブオイル—————大さじ2程度
秋刀魚—————————1尾
スパゲティ———————160g
チャービル———————適量
①秋刀魚に塩を振り、250℃に余熱したオーブンで15分焼き、ほぐしておく。
②トマトソースをつくる。小鍋にオリーブオイルと潰したニンニクを入れ、香りが立つまで弱火にかけ、香りが立ったらトマト缶とローリエ、蜂蜜を加えて弱火で10分〜13分煮込む。
③塩を加え、焼いてほぐした秋刀魚を身が細かくなり過ぎないように軽く和えてソースの完成。
④熱湯に塩を入れ、スパゲティを表示より1分短めに茹でる。最後にスパゲティとソースを絡め、チャービルをちぎりながら散らして出来上がり。
POINT
玉ねぎを入れない究極にシンプルなトマトソースを美味しくするコツは、塩を適量ではなく計量して入れる事、ローリエを1枚ではなく4枚程度は入れる事、10分以上煮込む事。また、秋刀魚は何匹かまとめて買ってきて、同時に焼いてほぐしてしまうのがオススメ。塩焼き、パスタ、薬味混ぜご飯などに使えます。
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谷尻直子|Naoko Tanijiri
料理家、予約制レストラン「HITOTEMA」主宰。ファッションのスタイリストを経て、現職に転身。幼少期から傾倒してきた食の世界では、自身がベジタリアンだった経験や、8人家族の中で育った経験を生かし、カラダ作りに気を配った献立を提案している。
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