Improves intestinal Function

今話題の“腸活”について、ヤクルト中央研究所に聞きました

乳酸菌シロタ株に、腸内フローラ、プロバイオティクス。腸を健康に保つ“腸活”が人気の一方で、そのメカニズムはよくわからないという人は少なくない。なぜ、腸が健康の要なのか? そして、どのような“腸活”が効果的なのか? 「Yakult(ヤクルト)1000」の爆発的な人気で注目を集める株式会社ヤクルト本社の中央研究所を訪ねた。

TEXT BY AI SAKAMOTO
PHOTO BY KENYA ABE

日本に生まれ育った人ならば、まずその名前を知っているであろう商品のひとつに「ヤクルト」がある。「ヤクルト」が初めて販売されたのは、1935年(昭和10)のこと。今では日本をはじめ世界40の国と地域で、1日あたり4,000万本以上ものヤクルトの乳製品が飲まれている。

そんなヤクルトを語る上で欠かすことができないのが、CMなどでもよく耳にする「乳酸菌 シロタ株」だ。1930年、ヤクルトの創始者である医学博士・代田稔(しろた・みのる)氏が、 “強化培養”に成功した乳酸菌の一種で、胃液や胆汁に負けないよう“鍛える”ことで、生きたまま腸へととどけられるという。

ヤクルトの創始者・代田稔博士(左)と、「乳酸菌 シロタ株」。󠄀胃液や胆汁にも負けない強い菌なので、いつ飲んでも効果は変わらないという。写真提供:ヤクルト本社

「当時、すでにロシアの微生物学者イリヤ・メチニコフによるヨーグルト不老長寿説(ヨーグルトが健康に有効であると、1908年に発表)こそありましたが、乳酸菌を健康のために飲もうという発想は、代田が初めて。予防医学の先駆けと言っていいでしょうね」

こう話すのは、ヤクルト中央研究所 基盤研究所の上席研究員である辻浩和さん。東京都国立市にある中央研究所では、食品や化粧品、医薬品の製品化研究に加えて、それらのベースとなる基礎研究や、微生物研究などさまざまな研究が行われている。

左)「ヤクルト中央研究所」の研究管理棟。敷地内には、このほかに基礎研究棟、食品研究棟など計7つの棟がある。右)辻さんが所属するのは、基礎研究を行う基盤研究所。

腸には主に4つの役割があるという。①消化・吸収(食べ物を消化して栄養素として吸収する) ②水分吸収・排泄(食べ物のカスから水分を吸収して便を作り、体外へと排出する) ③免疫機能 ④脳との情報交換だ。

「④は『脳腸相関』と呼ばれ、脳と腸が互いに影響を及ぼし合うことを意味しています。わかりやすいところで言うと、緊張やストレスでお腹が痛くなることってありますよね。逆に、腸が不調だと脳が不安を覚えることも。最近は、腸内にすみつく細菌と『脳腸相関』との関係についての研究も進んでいて、うつ病の人は、そうでない人に比べて、腸内の乳酸菌やビフィズス菌が少ないという報告もあります」

細菌の大きさは1mmの1/1000にあたる、およそ1㎛(マイクロメートル)。写真は、木綿針の先に細菌をつけて電子顕微鏡で撮影したもので、3,000倍に拡大してやっと確認できるほど小さい。写真提供:ヤクルト本社

さまざまな腸内細菌。人間は、これらの腸内細菌と互いに影響を及ぼし合って生きている「共生関係」にある。写真提供:ヤクルト本社

身体の健康を司る腸には、およそ1,000種類・約100兆個もの腸内細菌が存在。並べると、地球2周半にもなるというから驚く。腸内細菌は、互いに影響を及ぼし合いながら集団を作って生息。さまざまな植物が群生しているお花畑のように見えることから、その群集を「腸内フローラ」と呼んでいる。

腸内細菌には、身体によいはたらきをする「善玉菌」と、悪いはたらきをする「悪玉菌」、そのどちらでもない「中間的な菌」の3種類がある。

「腸内フローラを整えるためには、食物繊維を中心としたバランスのよい食事と適度な運動が大切」と辻さん。「善玉菌のエサになるガラクトオリゴ糖や食物繊維をとることも大切です」

「善玉菌が悪玉菌よりも優勢である状態を保つことが大切なんです。腸内細菌のエサは、人が消化できない食べ物のカス。善玉菌はそれを食べて、人体にいい影響を与える“発酵”を行ってくれますが、逆に悪玉菌は“腐敗”を起こす。“腐敗”は、おならや便のニオイがきついといった状態を思い起こせばわかりやすいですよね」

腸内フローラのバランスが崩れ、善玉菌より悪玉菌が多くなると、体内で腐敗が進むとはなんとも衝撃的……。乱れた食生活や加齢、ストレス、抗菌薬の服用など、腸内フローラのバランスを崩す要因はさまざまだ。

ヤクルトが製造・販売する乳酸菌飲料やヨーグルトの数々。「ヤクルト」に加えて「ミルミル」や「ジョア」なども定番だ。

乱れた腸内環境を改善する方法のひとつとして、近年注目を集めているのが「プロバイオティクス」だ。「十分量を摂取したときに宿主(ヒト)に有益な作用をもたらす生きた微生物」のことで、乳酸菌やビフィズス菌などがこれに該当する。

「プロバイオティクス」の定義は、2002年に国連の食料農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)による合同会議で採択。「乳酸菌 シロタ株」の発見から、90年余り、時代が代田氏、そしてヤクルトの理念に追いついた形と言える。

これが話題の「Yakult1000」。進級に際して重要な試験を控えた医学部生を対象に効果検証(試験の8週間前から飲用)を行ったところ、一時的な精神的ストレスがかかる状況での「ストレス緩和」と「睡眠の質向上」に関して有益な結果が得られたという。「Yakult 1000」は宅配専用商品。

「乳酸菌シロタ株」が1本あたり400億個含まれる「ヤクルト400W」。腸内細菌のエサとなるガラクトオリゴ糖を加えることで、「お弁当を持たせて腸へ送り出すようなものです」と辻さんは笑う。

そんな中、話題を集めているのが、昨年4月に全国販売され、1日約114万本を売り上げるという「Yakult1000」だ。一般的な「New ヤクルト」が1本の中に200億個の「乳酸菌 シロタ株」を含むのに対して、こちらは5倍となる1,000億個を含有。一時的な精神的ストレスがかかる状況での「ストレス緩和」や「睡眠の質向上」といった機能が認められる機能性表示食品である。

「中には、『New ヤクルト』を5本飲めばいいんじゃないかという人がいるかもしれませんが、そういうわけではありません(笑)。『乳酸菌 シロタ株』の菌数が多く、なおかつ高密度であることにより、神経系をはじめ人体に作用するのだと考えられます」

【ストレスの体感】 疑似飲料を飲んだ学生に比べて、「Yakult 1000」を飲んでいた学生のほうがストレスの体感が軽減されていることがわかる。図表提供:ヤクルト本社

【睡眠脳波:第一睡眠周期のデルタパワー値の変化率】 同じく「睡眠の質」も、「Yakult 1000」を飲んでいた学生のほうが向上した。図表提供:ヤクルト本社

「乳酸菌 シロタ株」は体内にすみついている常在菌と異なり、数日間で排出されてしまうことから(腸の長さや蠕動の強さなどにより、個人差がある)、毎日飲むのがよいという。

「常に、腸の中に『乳酸菌 シロタ株』がいるのが好ましい状態です。それと同時に、腸内フローラを整えることも重要。具体的には、バランスのよい食事と適度な運動、そしてストレスをためないことですね」

ありきたりのことのようだが、実行するとなると案外難しい“腸活”。まずは、「乳酸菌 シロタ株」をはじめとする「プロバイオティクス」を生活に取り入れることから始めてみてはいかがだろうか?