FUTURE CAREER FOR YOUR CHILDREN
AI時代、子どもに将来の仕事を聞かれたらどう答える?──大森敬仁プロデューサーに聞く、親子で観たい『仮面ライダーゼロワン』
2019年9月よりテレビ朝日で放映している『仮面ライダーゼロワン』は、人工知能と仕事がテーマだ。「シンギュラリティ」という、これまでは一部の大人だけが知っていた単語が、「仮面ライダー」を通して自然と子どもの耳にも入ってくる。『仮面ライダーゼロワン』が伝えたいことは何か。東映のプロデューサーである大森敬仁氏に話を聞いた。
TEXT BY RIE NOGUCHI
PHOTO BY Shintaro Yoshimatsu
──「人工知能と仕事」がテーマの『仮面ライダーゼロワン』は、テレビ朝日で毎週日曜朝9時に放映中で、現在は映画が公開されています。大森さんはテレビ版、映画版のプロデューサーとして「仮面ライダー」に関わっていますが、今回の『仮面ライダーゼロワン』のテーマを、なぜ「人工知能(AI)」にしたのですか?
僕は平成の仮面ライダーシリーズに携わっていて、僕自身にも子どもがいるのですが、子どもと一緒に見ながら制作に関わっていました。
いまAIがブームになっていますよね。例えば「将来、AIに仕事を奪われます」という言葉を目にすることも多くなりました。でも「あなたの子どもはあなたの知っている職業にはつきません、いまの職業とは全く違う、いま存在しない職業に就きます」と言わわれると、親として、子どもと職業について話したり、将来について相談されたときに、何を答えてあげたらいいのかがわからなくなってしまう。親のほうが知っておくべきことが多いのではないかと思うんです。
──たしかに、AIがもっと普及してきたときに、子どもに将来を聞かれたら、どう答えたらいいのか。難しいですね。
子どもたちはこのAIが当たり前になる環境の中で育っていけば、いろいろなことを自然に知っていくと思いますが、親のほうが知らないまま、子どもだけが知るのは怖いなと思いました。だからこそ、親として、次の世代の子たちに何ができるんだろうと考えたときに、いまこれが仮面ライダーでやるべきテーマなのかなと思ったんです。親と子で見る番組なので、親は知る、子どもは楽しむことができるといいなと思いました。それでAIとお仕事がテーマになりました。
──子どもも、楽しみながら知ることができればいいですよね。実際に制作するにあたり、どのように情報収集をしているのですか?
AI関係の本はもちろん読みますし、たくさんの専門家のかたにご連絡をして意見を聞いています。シンギュラリティに関しては専門家の方がたの意見が完全に一致しているわけではなく、答えが出ているものでないからこそ、すごく自由に扱えるので「なんでもできる」という気持ちで制作しています。
AI時代のお仕事図鑑
──お笑い芸人、漫画家、医者など、「お仕事」もたくさん出てきますね。
子どもにとってみれば「お仕事図鑑」に見えるといいなと思っているので、最初のほうの回では、ビジュアル推しで、お笑い芸人や寿司職人などが登場しました。それぞれのエピソードにもよりますけれど、「子どものなりたい職業のランキング」などを見ながら子どもが好きそうな職業を選んでいます。あとはAIというテーマで描かなくてはいけない職業なども盛り込んでいます。
漫画家の回がありましたが、そこでは「情熱」を表現しました。情熱を表現するのには漫画家という職業がいいと思ったからです。また、いまの時代にAIが取り入れられ、今後役立っていく医療の現場なども伝えようと、医療の回もつくりました。そういう、ちょっとリアルな世界にも即しつつ未来がこうなっていくのではないかという視点を、今後も取り入れていきたいと思っています。
子どもに伝えるために
──親が子どもに伝えるべきことは何でしょうか。
結局、親が子どもに言えることは、人間は考える力を持っているからこそ、考えることをやめずに、そこを大事にして生きていかないといけないということです。これはAIがあっても同じことだと思います。
──仮面ライダーだと、「悪者」も出てくるわけですよね。
そうなんです。仮面ライダーは戦っているので、必ず「悪」が出てきます。そこが一番難しい。今回は「この職業の人は悪い」とは絶対にならないので。本当を言うと、戦いたくないんです(笑)。ただ人間が会話して、泣いて笑って終わりたいのですが、誰かが悪者にならなくてはいけないのがこの作品ならではの悩みの種ですね。
結局これは、AIの在り方と関係していると思うのですが、「人工知能」なので「人工」なんですね。つまり結局は人間が教える、学習させている。僕はAIは人間の写し鏡だと思っているので、人間の気持ちがきれいにならないと良いAIも育たない。だから悪が生まれてしまう。悪を描くとき、それが人間の悪意に端を発しているということを今回の「仮面ライダー」では描くようにしています。
──普段から子どもの視点を大事にしてエンターテインメント作品を制作をされていると思いますが、子ども向け番組ゆえに気をつけていることはありますか。
子どものことばかり考えていると、面白くなくなってしまうことがあります。ですので、まずは自分たちが面白いと思えることをやってみて、それが子どもにどう伝わるかを分析し、ある一定の職業の人が誤解されてしまうようなことは避けます。よく言われるのは、子ども番組だからと子ども向けに作ると、子どもにはばれてしまうんです。大人が見ても楽しいものだからこそ、子どもは憧れるし、ちょっと背伸びして見てみようと思うことだと思っています。
──最後に、「仮面ライダー」が大好きな小さなお子さまをもつお父さん、お母さんに向けてメッセージをいただけますでしょうか。
僕も同じ世代だと思うので、僕も悩みながらお話を作っています。おそらく感じてることは一緒で、子どもの将来のことを考えていると思うんですよ。ですから、一緒に考えていくきっかけになれば嬉しいです。
制作側も、決して上から「教えてあげましょう」と作っているつもりはありません。「一緒に子どもたちの将来とか未来を考えながら、一緒に作りませんか?」と思っています。ぜひ、親子で楽しんでもらえたら嬉しいですね。
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