MEETING MASTERFUL “UNAGI” CHEF

高梨臨のレストラン巡り Vol.3「鰻處 黒長堂」@六本木ヒルズ

美味しいもの好きの俳優・高梨 臨さんが話題のレストランを紹介する本連載。最終回となる今回は、六本木ヒルズの〈鰻處 黒長堂〉を訪問しました。

PHOTO BY MASAHIRO TAMURA
STYLING BY YUKO OBARA
HAIR & MAKE-UP BY EMIKO SHIMIZU(MAROONBRAND)
EDIT & TEXT BY RCKT/ROCKET COMPANY*

地焼きの鰻、白焼と蒲焼を食べ比べ

六本木ヒルズのウェストウォーク 5Fに居を構える〈鰻處 黒長堂〉。黒の格子窓と鰻の意匠の看板が印象的です。

暖簾(のれん)をくぐる高梨さん。「モダンなヒルズの中にあって、特別な和の空間という感じでワクワクします」。

まずいただいたのは、「鰻ざく」。鰻に胡瓜や生姜を合わせて土佐酢と鰹出汁の風味でさっぱりと。「最高のスターターです」と高梨さん。鰻ざく ¥1,540

鰻の刺身を調理する料理長の鍋倉健一さん。「カウンター席からだと、間近で大将の手捌きを見られるのでライブ感も味わえます」(高梨さん)。

活けの鰻を仕入れている店でないと出せないのはもちろん、前日から何時間も流水に晒す仕込みが必要とあって希少な一品。薄切りにした鰻に、皮と茗荷を添えて。酢味噌と醤油でいただきます。うす造り 鰻刺身 小¥1,980〜大¥6,380(写真は中¥3,080)

一尾から一つしか取れない肝を串焼きに。「苦玉を生かしているのでしっかりほろ苦さが感じられ、日本酒によく合いますね。山椒味噌を合わせるとさらに旨みが引き立ちます」(高梨さん) 肝 ¥858

鰻ざく、お造り、肝焼きと鰻のいろいろな味わいを少しずつ楽しみます。

鰻に合う日本酒を各種取り揃えている中で、すっきり清冽でありながらふくよかな旨みのある味わいが特徴の「純米吟醸 石鎚」をチョイス。メニューに載っているもののほかに、不定期で入っている日本酒も数多くあり日本酒好きも満足できるお店です。

愛媛の名峰、石鎚山系の清冽な水を仕込み水に使った「石鎚」純米吟醸。食中酒として人気で、白焼にも蒲焼にも合います。純米吟醸 石鎚 ¥1,100

六本木ヒルズ ウェストウォーク 5Fは和洋中さまざまな食が愉しめるレストランフロア。その中に、古民家のような風情の〈鰻処 黒長堂〉があります。

暖簾をくぐると、縁起物の瓢箪を飾ったカウンター。調理するさまを至近距離で見られる特等席です。「鰻は好きでよく食べに行く」という高梨さん、まずは鰻ざくやお造りといった前菜をいただきます。

「鰻のお店に来たら、まずは鰻ざくですね。さっぱりしていて、スターターにぴったり。鰻のお造りは初めて食べましたが食感がコリコリして、フグに似ているようで、さらに旨みがある気がします。なかなかお目にかかれないメニューなので、この店に来たらぜひ食べてほしいです。肝焼きもしっかり苦味が感じられて、肝好きにはたまらない! 日本酒も美味しそうなものがいろいろあって悩みましたが、すっきりとした石鎚をチョイスしました」(高梨さん)

料理長の流れるような手捌きをカウンター越しに見る高梨さん。

関西風の「地焼き」が特徴の〈黒長堂〉。腹開きにした鰻をそのまま炭火で焼き上げることで、炭火に余分な脂が落ちてその燻煙で鰻が燻され香ばしく仕上がります。

焦げ目がしっかりとついた皮。香ばしい香りが食欲をそそります。薄めの皮で身が柔らかい鰻を選んでいるので、外はパリッと、中はふっくらの仕上がりに。

うちわで火を調節し、絶妙な焼け具合に。鍋倉料理長のうちわ捌きはまるでライブパフォーマンスのよう。

東京ではなかなか出回らない「三河みりん」で仕込んだタレ。 コクのある上品な甘みが特徴です。

タレをつけたのち、さらに焼いて蒲焼に。美味しそうな照りが生まれています。

白焼と蒲焼を一つのお重に。なかなかできない食べ比べ体験ができる〈黒長堂〉ならではの一品。炭火地焼 鰻重 特上 白焼 蒲焼 食べ比べ二尾 ¥10,340、肝吸 ¥330

「白焼も蒲焼も大好きでよく食べますが、一つのお重での食べ比べは初めてです」と高梨さん。

まずは白焼にわさびをつけて。「地焼きなので旨みが凝縮していて美味しいです! 日本酒が進みます」(高梨さん)

前菜をいただきながら、鰻重の仕上がりを待つ高梨さん。カウンター越しに、料理長が鰻を捌いてゆくのを眺めます。

「調理しているところが見られる鰻のお店って珍しいですよね。捌くところから焼き上がるまであっという間で、まるでライブを見ているよう。カウンターは特等席ですね。蒲焼も白焼きも好きで普段からよく食べるのですが、こういった食べ比べという形は初めてです。白焼・蒲焼を行ったり来たりできるのが楽しい! 日本酒が充実しているもののワインもしっかり品揃えがありワイン好きには嬉しいところ。白焼には日本酒、蒲焼はワインとお酒を組み合わせて楽しみたいです」(高梨さん)

店内には生簀があり、鰻が元気に泳いでいます。

お店の壁には鰻供養のお札が。鰻に感謝していただきます。

この日の鰻は、鹿児島県産の新仔。〈黒長堂〉では、皮が薄く身が柔らかい新仔にこだわっているそう。

鰻處というだけあって、店内には鰻へのこだわりが見られる産地証明書や鰻供養のお札など鰻にまつわるものがそこここに。鰻を大切にし、美味しくいただくことへの思いが、調理や店の雰囲気からも伺えます。

「今回は白焼と蒲焼の二尾食べ比べということでかなり量が多かったですが、食べきれない分は折り詰めしてもらえるのもありがたいです。焼きたては格別ですが、冷めた後の落ち着いた感じも個人的に好きなので。フードロス対策というか、今の時代に合っていますね。それから、この店で大好きになったのが手作りの山椒味噌。肝焼きに、鰻重にとたっぷりつけていただきましたがとても美味しくて、これだけでも食べに来たいくらいでした」(高梨さん)

食事を終えて

「六本木ヒルズにはよく来るのですが、食事をゆっくり食べる機会がなかったので今回、レストランフロアを訪れてこんなに素敵なお店がたくさんあるんだと驚きました。生簀から料理になるまでの過程を見られるのはカウンター席ならではで、新鮮なのがわかりますし、何より調理しているのを見るのが楽しい。鰻というと出てくるまでに時間がかかるイメージがありますが、地焼きだと15分くらいでしょうか、あっという間でした。今回のようにお酒と一緒に前菜からゆっくり楽しむのもいいし、ランチでさっと食べることもできる、いろいろな楽しみ方がある店だと思いました」(高梨さん)

鰻處 黒長堂
住所=東京都港区六本木6-10-2 六本木ヒルズ ウェストウォーク 5F 電話=03-3478-5445 営業時間=平日11:00~15:00(L.O.14:00)、17:00~23:00(L.O.22:00)、土日祝11:00~16:00(L.O.15:00)、17:00~23:00(L.O.22:00)

profile

高梨 臨|RIN TAKANASHI
俳優。1988年生まれ。2012年アッバス・キアロスタミ監督作の映画『ライク・サムワン・イン・ラブ』で主演、カンヌ国際映画祭コンペティション部門にノミネートされる。その後、連続テレビ小説『花子とアン』、『恋がヘタでも生きてます』、大河ドラマ『西郷どん』、日曜劇場『VIVANT』など話題作に次々出演。2024年は1月クールのドラマ『夫を社会的に抹殺する5つの方法 Season2』主演、3月1日から日英合作映画『コットンテール』公開と話題に事欠かない。俳優としての活動のほか、『andGIRL』にてモデルを務める。家で食べるのも、外食も好きという食のオールラウンダーでもある。美味しそうなお店のチェックは欠かさないほか、ワイン好きとしても知られる。

※2024年8月現在の情報です。
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