最近、個性豊かで、丁寧な仕事が際立つ焼き鳥店が急増中。ヒルズにも焼き鳥の名店が数多くあり、各店各様のプレゼンテーションで、ゲストを楽しませてくれています。そんな中から、通も認める、至高の焼き鳥店2軒を紹介します。
TEXT BY AKIRA TANAKA
PHOTO BY DAISAKU NISHIMIYA (NDPP.)
EDIT BY TM EVOLUTION.INC
❶ 1コースで勝負する、麻布台ヒルズの焼き鳥新名店——焼鳥 くまわき
コースより。右/4種の新芽サラダは、赤キャベツ、ブロッコリー、エンドウ豆、クレソンが入ったスプラウトのサラダ。左/鳥のたたき。わさび醤油で肉の旨みをしっかりと味わえる。
コースの先付より。右/豆腐に、鰹節状にした鳥節を削ったものをトッピング。中央/鳥胸肉のユッケ。左は串の後に提供される“逸品”なる品書きの、マスカルポーネと甘納豆。トーストと共にカナッペのようにしていただく。
コースの串より、前半4種。右から、ふぐむね、ねぎみ、半熟うずら、丸はつ。ふぐむねは、フグのようなしっかりとした食感で一度体験すると病みつきに。
コースの串より、後半4種。右から、山椒つくね、季節の焼き野菜、雪塩レバー、大和鶏手羽。写真の野菜串は旬のコリンキーを茹でて焼いたもの。
締めのひとつは、コクや濃厚さが持ち味のブランド卵「奥久慈卵」を使った親子丼。そのほか、そぼろ丼、にゅう麺も選べる。
目の前で焼く職人の手技を眺めるのもごちそうだ。
麻布台ヒルズの開業と共にオープンした本格派焼き鳥店『くまわき』。モダンでシンプルなエントランスを抜けると、カウンターと個室1室の落ち着いた品のいい店構えが目を引く。オープンキッチンの中央には焼き場が設えられ、カウンターから丁度お客様の視線の先に焼いている景色が目に留まるライブ感あふれる設計だ。こちらの店は大阪・天満を本店とし、焼き鳥店で初めて会員制のスタイルを採用した『熊の焼鳥』の系列店。ただし、『くまわき』は“高級焼き鳥”を謳いつつも、どなたでも入れる非会員制だ。
焼き鳥は部位や串によって厳選した全国のブランド鶏を使用。少し甘みのあるタレは、新店であるため注ぎ足しではないが、「山椒つくね」などから出た山椒の香りがほのかに漂い、雑味のないクリーンな味わいが口に広がる。塩焼きの塩は4種類のブレンド塩に加え、キメの細かい化粧塩と、塩へのこだわりも強い。焼きはもちろん、ガスではなく備長炭だ。実は全国に数店ある『熊の焼鳥』は、地域によって若干味を変化させているそうで、『くまわき』の味はここでしか食べられない。「うちの焼き鳥は奇をてらわず、王道の美味しい焼き鳥を志しています。ひと串一串に合わせたこだわりの鶏を選んでいますから、産地への縛りなどは設けず、常に最良の焼き鳥をご用意しています」と小滝翔志店長は話す。
追加串はもちろん可能だが、ディナーは基本8串をメインとした¥10,000のコースのみ。1本勝負で自信を垣間見せるコースは、先付3種、本日のたたき、サラダと進み、串は高級魚のフグのような食感の胸肉「ふぐむね」から始まる。「丸はつ」は、一般的に開きにして血抜きしたハツを焼いて提供するが、こちらでは丸のまま手間暇かけて血を抜く。こうした丁寧な下ごしらえなどが随所に散りばめられ、細やかな仕込みが味に投影されているのだ。最近は外国人のお客様も多く、1コースのみなので外国の方には難しいオーダーの手間も省け、様々な串を楽しめると人気。また、半生のたたきや、鳥ユッケ、鳥の削り節など外国の方にとって未知な鶏肉の食し方で好評を得ているそうだ。焼き鳥につきもののお酒も充実している。店外と隔絶されたリラックスできる空間で、旨い焼き鳥を楽しみながら、麻布台の夜をしっとりと満喫したい。そんな一軒として、新たにお気に入りリストに加えたい店だ。
焼鳥 くまわき 住所=東京都港区麻布台1-3-1 麻布台ヒルズ タワープラザ 3F 電話=03-5545-5337 営業時間=平日・祝17:00〜23:00(ドリンク、フードL.O.22:00)、土・日11:30〜14:30(ドリンク、フードL.O.14:00)/17:00〜23:00(ドリンク、フードL.O.22:00) 定休日=無休 ※各種電子マネー、交通系IC、各種クレジットカード利用可
❷ 関西地鶏のスペシャリストが手がける至極の焼き鳥——野乃鳥 幻鳥
「お任せコース」スタンダード¥6,380より。手前/クリームチーズと鶏生ハムのジェノベーゼソース。奥/「丹波黒どり」の胸肉と、もも肉のたたき2種。フランスの海塩、フルール・ド・セルや、マンダリンオレンジフレーバーのオリーブオイルと共にいただく。
「お任せコース」より、串4種。右より、ささみのしそ梅(丹波黒どり)、自慢のねぎま(ひょうご味どり)、砂肝(丹波黒どり)、ぼんじり(播州百日どり)と部位に合わせた鶏肉を使う。
「お任せコース」より、串4種。右より時計回りに、池田市でAI農法を用いて作られたトマトの野菜串。フランス産のディジョンマスタードでいただく、しっとりした特製つくね。せせりのたれ焼きは、オーストラリア産のタスマニア粒マスタード、クミンシードに京都の「篠ソース」をアクセントにして。「丹波黒どり」の手羽先は野趣のあるしっかりとした味わい。
「お任せコース」より、シメの「鶏出汁土鍋ご飯」。濃厚な鶏のスープで炊いた滋味深いご飯に播州地卵、そして卵黄を2週間塩漬け天日干しにしてカラスミ状にした「たますみ」を散らし、熟成香の強い「亀菱」の醤油を添えて。
焼き場で丹念に火を入れられた串が、様々な食し方で楽しめる。
完全予約制の大阪・池田市の本店をはじめ、希少部位からガラまで「鳥、まるごと」をコンセプトに大阪、神戸、東京で20店舗を展開する人気焼き鳥店「野乃鳥グループ」。その最高級ラインが、虎ノ門ヒルズ ステーションタワー 4階の一画にある『幻鳥』だ。ほの暗く落ち着いた店内は、オープンキッチンを囲むカウンター16席があり、少し見上げる高い位置に焼き場があるという、ライブ感あふれる構造だ。なんでも代表の野網氏が、焼き台を遮蔽するガラスやアクリルを使いたくないとのことで考案された設計なのだとか。奥のテーブル席はちょっとした半個室感覚。ワーカーの接待などにも重宝されている。
こちらの強みは何といっても代表の野網氏。鶏肉の卸売業も手がけているため、市場にあまり出回らない部位なども入手しやすく、養鶏業の高齢化などにより激減している「ひょうご味どり」の復活飼育のコンサルタントなど、焼き鳥に限らず鶏を知り尽くしたエキスパート、つまり目利きなのだ。その『幻鳥』で用いるブランド鶏は、全て兵庫産。「播州百日どり」は通常のブロイラーより50~60日ほど長く飼育するため、筋肉が発達して噛み応えのある食感が特徴。メインで使われているのは「丹波黒どり」で、野趣のある鶏の旨味が感じられ、ジビエのような深みのある味わい。ひと口食べれば、どれも一般的なブロイラーの若鶏とは格段に違う味わいが実感できるはずだ。
30年注ぎ足したタレを用いているが、焼き鳥の串はオーソドックスな食べ方にこだわらない。フレンチ風の出汁のソース、スパイス、粒マスタードなど、美味しいとなれば和にこだわらず、洋のテイストも取り入れる。初めて来店するならば、まずは店自慢のエッセンスを凝縮した、スタンダードの「お任せコース」¥6,380をオーダーしてみよう。ワインにも力を入れており、ワイン好きならこの「お任せコース」にペアリング(5種)をつけた¥11,330というコースもある。それぞれ和洋のエッセンスを取り入れた焼き鳥7串の味の競演に加え、コースに組み入れてある、シメの「土鍋で炊いた土鍋ご飯」は必食だ。鶏を丸ごと8時間煮た出汁で、じっくり炊いたご飯。土鍋のふたを開けると、ふわっと芳醇な鶏の香りがし、豊かな心地にさせてくれる。黄金色に輝く粒が立ったご飯に平飼いの播州地卵を使った卵かけご飯。この幸せを“口福”と言わず、なんと表現しようか。
野乃鳥 幻鳥 住所=東京都港区虎ノ門2-6-1 虎ノ門ヒルズ ステーションタワー 4F 電話=03-6811-2311 営業時間=平日・土11:00〜14:30(L.O.14:00)/17:00〜23:00(L.O.22:00)、日・祝11:00〜14:30(L.O.14:00)/17:00〜22:00(L.O.21:00) 定休日=無休 ※各種電子マネー、交通系IC、各種クレジットカード利用可
※2024年7月現在の情報です。
※表示価格は全て税込価格です。
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