連載企画「小石原はるかが今、気になるレストラン」、第二回は佐藤啓太料理長率いる〈天蒼々〉へ。ライブ感あふれるカウンターでいただく天ぷらのお味はいかに?
PHOTO BY MASAHIRO TAMURA
TEXT BY HARUKA_KOISHIHARA
EDIT BY RCKT/ROCKET COMPANY*
職人技に魅入られる、奥深い天ぷらの世界
六本木ヒルズきっての高層ビル「森タワー」内の商業ゾーン「ウェストウォーク」の5階には、落ち着いてお食事を楽しめる和洋中の飲食店が軒を連ねています。その中の1軒である『天蒼々』は、その季節にもっとも味わいが増す上質な素材と、それらに施す確かな技術が光る天ぷら店。腕利きの料理長の仕事ぶりを眼前に望むカウンター席は、さながら劇場のよう。テンポよく繰り出される揚げたての天ぷら、いただきます。
その場で揚げたてをいただくという贅沢
屋号が認められた真っ白な暖簾をくぐると、正統の趣が漂う数寄屋造りの空間が。天ぷら鍋の前に立つ料理長・佐藤啓太さんに、箱に入ったピカピカのタネを見せていただいたり、天ぷら鍋から聞こえる油がパチパチという音を楽しめるカウンターが特等席であることは言うまでもありませんが、家族や気のおけない仲間とゆったりと楽しめる個室も2室。シチュエーションに応じて選択肢があるのは嬉しい限り。
研ぎ澄まされた技と勘。食材ひとつひとつに丁寧に向き合う心
佐藤さんは、天ぷらの名店としてほまれ高い、御茶ノ水〈山の上ホテル〉にある〈てんぷらと和食 山の上〉で10年以上。さらに、『ミシュランガイド東京』で二つ星を獲得している〈てんぷら近藤〉でも長く研鑽を積んだ、生粋の天ぷら職人です。王道のキャリアを歩みながらも「自然が生み出すものだけに、同じ素材とはいえ毎日コンディションは異なります。それだけに、職人として到達した感はなく、日々鍛錬です」とおっしゃる謙虚さ。
加えて、飽くなき探究心からこれまで経験していなかった衣にも挑戦するように。それは、卵を使わず小麦粉と水だけで仕立てる独自の配合。吟味を重ねた新鮮な魚介類や、みずみずしい旬の野菜の持ち味を「天ぷら」という調理法で最大限に味わえるようにするには……?と考えて、たどり着いたスタイルでした。
「卵を使った衣は、卵が持つコクや旨味が加わりますが、この衣だと素材の味があらわになるのです。それだけに、仕入れにもより一層力を入れるようになりました」。油も、綿実油をベースに香りの強いごま油はごく控えめに、あくまで素材の持つ魅力を全面に。
魚介類も野菜も、鮮度の良いものほど水分の含有量が多いもの。それゆえ、衣をつけて揚げるとその水分の温度が上昇し熱々になりますが、それこそが美味しさの証。だから、お店を訪れたなら(やけどに注意しつつも)、揚げたてをすかさずパクッと! 極上の天ぷら体験が待っています。
小石原はるか|Haruka_Koishihara
フードライター。1972年東京都生まれ。エンゲル係数が妙に高い家に育ち、レストラン通いをこよなく愛するように。マニアックな気質と比較的丈夫な胃袋で、これまで様々な食の世界にハマる。『BRUTUS』『東京カレンダー』など多くの雑誌やメディアで、食にまつわる記事の執筆やディレクションを担当。著書に『レストランをめぐる冒険』(小学館)、『自分史上最多ごはん』(マガジンハウス)、『東京最高のレストラン』(共著・ぴあ刊)など。
※2022年4月現在の情報となります。
※表示価格は全て税込価格です。
※店舗により臨時休業や営業時間を変更させていただく場合がございます。詳細は「六本木ヒルズの営業状況について」をご確認ください。
SHARE