IKUKO’S METHOD

厚底靴でボリュームをアップデート——地曳いく子のおしゃれメソッド78

ファッションのご意見番ことスタイリスト地曳いく子さんが、独自の視点で切り込むオトナ女史のためのスタイル術「IKUKO’S METHOD」。今回のテーマは、厚底靴です。

STYLING BY IKUKO JIBIKI
PHOTO BY SHIN KIMURA
EDIT BY AKANE MAEKAWA

まずは足もとからトレンドを。

この時季といえば、秋冬モノの服を紹介すべきところですが、最近の暑さに気持ちが追いつけずにいます。先日の猛暑の中、ショーウィンドウに飾られたウール製コートを前に、「見ているだけで暑苦しくて迷惑よね」とぼやいているおば様方に、つい心の中でうなずいてしまいました(お盆過ぎの話なので、今はもう少し暑さが落ち着いているといいのですが……)。でも、一歩先にいくのがファッション。まだまだ服には心が動かなくても、秋冬のトレンドにはしっかり乗りたい! そんな気持ちから、今回は、足もとからトレンドをテーマに、今気になる、プラットフォームやチャンキーヒールなど、ソールにボリュームのある厚底靴を紹介します。まずは足もとから今季の気分を取り入れていきましょう。

ヴィクトリアンなムードのレースと、ボリュームのあるハイテクソールが合体したルイ・ヴィトンのスニーカー。ドレスに合わせてもOKなのではと思えるスーパーミックス感はさすがです。シューズ¥243,100(ルイ・ヴィトン/六本木ヒルズ 六本木けやき坂通り1F

アッパーにクラフト感のある編み込んだラフィアが使用されたルイ・ヴィトンのダッドスニーカー。スポーティーにほどよくボリューム感をプラスしてくれます。進化したスニーカーがさらに洗練され、もはや芸術品の域です。シューズ¥261,800(ルイ・ヴィトン/六本木ヒルズ 六本木けやき坂通り1F

足首まで覆うチャンキーヒールのグッチのショートブーツ。しっかりとした存在感がありますが、すっきりとしたラインがフェミニンで美しい。足もとにボリュームを出しつつ、エレガントにまとめてくれます。ブーツ¥209,000(グッチ/六本木ヒルズ ウェストウォーク2F

ラグソール風のがっちりとしたソールが特徴なグッチのバックストラップ付きサンダル。ソックスやタイツと合わせて秋でも活躍する一足。サンダル¥126,500(グッチ/六本木ヒルズ ウェストウォーク2F

踵のないスリッポンタイプのスニーカー型ミュール。アウトドア用のパラコードのようなシューレースがアクセントに。ソールはかなりがっしりですが、ミュールなのでフェミニンな印象も。さまざまなスタイルに活躍できそう。シューズ¥123,200(バレンシアガ/六本木ヒルズ ウェストウォーク2F

アッパーの甲の部分にあしらわれたロックスタッズとメタリックなレザーが、ヴァレンティノ ガラヴァーニらしいエレガントなホワイトスニーカー。厚底ソールが、今季のバランスをつくってくれます。シューズ¥132,000(ヴァレンティノ ガラヴァーニ/ヴァレンティノ/表参道ヒルズ 本館1F、2F

しっかりとした厚みのあるラグソールが、今季らしい量感のクロエのショートブーツ。ボリュームのある靴の入門編としてぜひ取り入れたい。この一足で全体のバランスがアップデートされます。ブーツ¥183,700※参考価格(クロエ/表参道ヒルズ 本館1F

はっと目を惹く真っ白なクロエのラバーブーツ。潔さが試される白のブーツは憧れです。ぜひ、スタイルのアクセントに。ブーツ¥81,400(クロエ/表参道ヒルズ 本館1F

ウッドのプラットフォームとソーエッジマイクロソールが象徴的なステラ マッカートニーのアイコンシューズ。さりげなく輝くさまざまなカラーのステラスターが足もとのアクセントに。アッパーにヴィーガンレザーはもちろんのこと、シューレースもオーガニックコットン使用というこだわり。シューズ¥139,700(ステラ マッカートニー/六本木ヒルズ ウェストウォーク2F

インパクトのあるソールが主張するマルニのサイドゴアブーツ。アッパーは通常運転なサイドゴアですが、ソールがこれだけの高さになると、かなり新鮮なバランスに。ブーツ¥163,900(マルニ/表参道ヒルズ 西館1F

薄いピンクベージュが、カジュアルな厚底でも上品な足もとに仕上げてくれるクリスチャン ルブタンのローファー。ラグソールも、もちろんルブタンのレッドソール。シューズ¥139,700(クリスチャン ルブタン/六本木ヒルズ ウェストウォーク2F

ゼブラ、パイソン、オーストリッチの型押しをド派手なカラーが彩るディースクエアードのプラットフォームシューズ。これを履けば、あなたもパーティークイーンに。スペシャルな場ではシューズで気分を上げるのも大切です。シューズ¥281,600(ディースクエアード/表参道ヒルズ 本館1F

地曳いく子が指南する
この秋冬の厚底靴のススメ

❶ トレンドは全体のバランス感

極端な話ですが、日本はもうほぼ二季になっていますよね。春と秋という過ごしやすい季節が、とにかく短い。この間、そんな会話をプレスの方としました。この暑さ、まだまだ続きそうです。ここ数年のファッションは、デザインだけでなく、全体のバランス感がトレンドとなっています。そのなかでも大きな流れは、オーバーサイズやビッグシルエットのボリューム感のあるスタイル。足もとのボリューム感は、今季も取り入れたい気分のひとつです。夏は暑くてNGだった厚底ブーツやシューズ。今だからこそ、軽やかなシフォンのワンピースの足もとに取り入れてみましょう。9月はいくら暑いといえども、服も軽やか、足もともサンダルはNG。足もとに秋冬のボリューム感を持ってくれば、きちんと次のトレンドに移っていることを証明できます。某デザイナーの最新コレクションでは、体全体の1/4は靴なんじゃないかというプラットフォームシューズが登場していました(笑)

❷ 目線を上げれば世界も変わる!?

先日、痛めていた腰がようやく治ったので、スタイリストらしく(笑)、7センチのプラットフォームシューズでリースに回ってみました。すると、いつも通っているショールームや馴染みの場所でも、少し感覚が異なって見えたんです。その時、目線が上がるってこういうことなんだなって、感じました。この数年、Down to Earthな生活(行動制限がある生活)を強いられてきた私たち。足もともカジュアルでフラットなものを求めがちでしたが、厚底靴はそこから抜け出すきっかけになるのでは?と思いました。チャンキーなヒールなら歩きやすいですし、前も積んであるプラットフォームならつま先と踵の角度も少なくなるので、フラットシューズに慣れてしまった足でも受け入れやすいはず。足もとから、全体のバランス感をアップデートしていきましょう。

❸ どこまでも進化するダッドシューズ

ダッドシューズの登場から、すでにスニーカーはモードの仲間入りをしていましたが、さらに進化が止まりません。ハイテクなソールにレースやラフィアで編んだアッパーなど、ドレスに履いてもおしゃれな逸品も登場しています。しかも、スニーカーといえども積み具合はかなりなもので、5センチ、7センチはあたりまえ。ラグジュアリーなブランドから登場するスニーカーで、トレンド感をアップするのもおしゃれ上級者への道かもしれません。

❹ 気候もファッションも昔の常識は通用しない

お気に入りのノースリーブのサマードレスがあります。かれこれ数十年!? 前に買った某ブランドの代物で、これだけは捨てられずにいました。素材はサマーウール。久しぶりに着てみたら……、暑くてとても外を歩けませんでした。シンプルなものでも、どこかしら昔のデザインと今のデザインは違うと、これまでも皆様に何度も説いてきましたが、これはもうデザインだけの問題ではありません。気候が変わってしまったため、この暑さでのサマーウールに耐えられず、実際に着られないということが起こってしまうのです。(素材も進化しているので、今のサマーウールはそんなこともないと思います)。これまでのファッションのルールも崩壊し、また気候により、夏物、秋物の定義もあいまいになりつつある今。気候もファッションもこれまでの常識が通用しません。だからこそ、どれだけ長く着ることができるかを考えるより、服や靴はどれだけ「今の自分」を満足させてくれるかという対価で買うべきだと思います。

余談ですが、先日、突然のスコールに遭いました。降り方が暴力的で、傘を差しても濡れるぐらい。すぐに止みましたが、そのとき、たまたまボリュームのあるプラットフォームシューズだったため、意外と足もとがひどいことにならなかったんです。スコールにも強いぞ、厚底靴。ナイス!と思いました。

 

profile

地曳いく子|Ikuko Jibiki
スタイリスト/1959年東京生まれ。数々のファッション誌で活躍し、女優や著名人のスタイリングも数多く手がける。大人の女性を美しくみせる的確な理論に基づくスタイリング術に定評を持ち、執筆も多く手がける。現在は、ファッションアイテムのプロデュースほか、テレビやラジオに出演するなど多方面で活躍。著書に『服を買うなら、捨てなさい』『着かた、生きかた』(ともに宝島社)『おしゃれは7、8割でいい』(光文社)『日々是混乱』(集英社)など多数。最新刊に『60歳は人生の衣替え』(集英社)。

※ 2023年8月現在の情報となります。
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