ファッションのご意見番ことスタイリスト地曳いく子さんが、独自の視点で切り込むオトナ女史のためのスタイル術「IKUKO’S METHOD」。今回のテーマは、この時季だからこそ手に入れたいTシャツとスニーカーです。
STYLING BY IKUKO JIBIKI
PHOTO BY SHIN KIMURA
EDIT BY AKANE MAEKAWA
GOOD BYE SUMMER 特大号——失われた夏を求めて
季節外れのTシャツ、まだまだ続くよスニーカー
今年は、季節感が失われた夏でした。7月の東京は梅雨が長引き寒く、8月に入ると一変猛暑に。ですが、COVID-19の影響もあり(東京都民は)依然自粛ムード。そんな日々では、夏物を思いっきり着ようという気にもなれず……。気がついたら、8月ももう終わりです。
この20年ぐらい、ファッション業界の季節はどんどん前倒しになってきました。店頭に並ぶ服の展開もセールも早いですし、8月も終わりになると秋物がメインに。でも気候は、暑い季節が逆に長くなっていると感じませんか? 9月は正直まだ暑いです。
だからなのか、今さらながらTシャツ気分になってしまいました。しかも、毎日履いている靴といえばスニーカー。ドレスコードが崩壊した現代、私たち一般人にとって、もはやTシャツとスニーカーは正装となりつつあり、その勢いはCOVID-19で加速してきています。まだ先の見えないこの状況下。おうち生活でも、ちょっと贅沢なTシャツ&スニーカーで気持ちをあげていくことも必要ではないでしょうか。服はカジュアル、でも気持ちはラグジュアリーに!
● Tシャツ編
地曳いく子が考える
今ラグジュアリーなロゴTを買う意味
❶ もはやシーズンレスなアイテム
中学時代から数えて、何年ロゴTを着ているのでしょう。下手したら半世紀!(笑) 実は、そんな私が、今でもロゴTやプリントTシャツを着る時は、気分をあげたい時なんです。年甲斐もなくとか、何と言われようと、それだけですごく気持ちがあがるんですから。それが、好きなブランドのロゴTならなおさら。とはいえ、この時季にTシャツなんて季節外れではと思う方もいるかもしれません。でも、今季は、ハイブランドのいわゆるプレフォールコレクションでも、多く登場しています。気候のせいもあり、Tシャツはもはやシーズンレスなアイテムになりつつあるので、今、購入しても間違いないお買い物になるはず。
❷ トレンドのインナーとしても活躍
おすすめの理由として、もうひとつ。秋らしい季節になったら、秋冬トレンドのひとつとして、トラッドなジャケットを特集したいと考えているのですが、これがロゴTとの相性が抜群。バイカーズジャケットにロゴTは定番ですが、この秋はテーラードジャケットのインナーに、ラグジュアリー系のロゴTやポップなプリントTシャツをのぞかせるのが、オトナ女史の皆さまにおすすめしたいスタイルです。フルスロットルでファッションを楽しむ状況ではない今、このぐらいの抜け感がおしゃれではないでしょうか。9月のうちは1枚で着こなし、寒くなってきたらインナーとして活躍するでしょう。これが、8月の終わりでもTシャツを買う意味。
❸ 肌触りのちがいを感じる上質さ
あえて、ハイブランドのTシャツを手に入れる理由。それは、やっぱり質。Tシャツフェチなもので、素材感にはこだわります。たかがTシャツ、されどTシャツ。触っただけで違いがわかりますから。3回しか着ないワンピースを16万円で買うより、今は、1枚5万円のTシャツです。Tシャツなら、10回以上は着るはず! 着れば着るほどコスパも上昇。自粛ムードの中、家の中でのちょっとした贅沢で気持ちがあがるのであれば、儲けものです。
❹ 十人十色なデザイン
同じTシャツといって、今季はビッグなシルエットもあれば、コンパクトフィットなものもあり、丈の長さも様々。人間の体自体が十人十色だから、同じTシャツを着ても、イメージが変わってきます。今年はトレンドとしてこのシルエットというのがないので、自分の体事情にあわせてTシャツを選べますよ。
● スニーカー編
地曳いく子が考える
今ラグジュアリーなスニーカーを買う理由
❶ ファッションアイテムヒエラルキーの上位常連
スニーカーは、今やファッションアイテムヒエラルキーの上位の常連といっても過言ではないほど。毎シーズン、ブーツ並みに、各ブランドからスニーカーがコレクションのひとつに組み込まれています。ネタが尽きるのでは?と思うくらいに。ですが、何かしらひねりのきいた新しいスニーカーが出てくるのが、このファッション業界。私自身も、人生の中でこんなにスニーカーを履いているのは学生時代以来かもというぐらい、デイリーにお世話になっています。もう、ブーツを買う意気込みで、スニーカーを選んでもいいのでは?
❷ オトナ向けのエレガントでシックな傾向も
以前のようなストリート色は薄れ、デザインも突飛というより、素材にひねりをきかせたものが出てきています。レトロ感があっても、どこか小ぎれいであったりと。エレガントでシックな傾向のデザインが多く出てきているので、スニーカーを敬遠していた人は、今こそ一歩踏み出す時です。ソール&インソールに厚みのあるものも多いので、ヒールに慣れていた人は、ペタンコのスニーカーより3、4センチぐらいの厚みのあるソールほうが疲れにくいかもしれません。
❸ 手持ちのワードローブをトレンドへ格上げ
服に合わせるなら、某スポーツメーカーのド定番を買っておけば安心ですが、おしゃれをとことん楽しみたいなら、ここは一歩上をいきましょう。トレンドとしてのスニーカーは、バッグと同じで、何の服にあうかではなく、何にでもあわせる。そうした今のノイズを入れることで、これまでの服が今年のトレンドに格上げされますから。
※ 六本木ヒルズ等各施設では、新型コロナウイルスの感染拡大防止の予防対策を徹底し営業しております。また一部の店舗では営業時間を短縮しております。ご来店の際には事前に各施設HPをご覧ください。
地曳いく子|Ikuko Jibiki
スタイリスト/1959年東京生まれ。数々のファッション誌で活躍し、女優や著名人のスタイリングも数多く手がける。大人の女性を美しくみせる的確な理論に基づくスタイリング術に定評を持つ。現在は、ファッションアイテムのプロデュースほか、テレビやラジオに出演するなど多方面で活躍。著書に『服を買うなら、捨てなさい』『着かた、生きかた』(ともに宝島社)『おしゃれも人生も映画から』(中央公論新社)、『買う幸福』(小学館)、『おしゃれは7、8割でいい』(光文社)など多数。最新刊として7月に、ひとりっPこと編集者の福井由美子との共著『たまには世界のどこかでふたりっぷ』(集英社)を上梓。
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