ファッションのご意見番ことスタイリスト地曳いく子さんが、独自の視点で切り込むオトナ女史のためのスタイル術「IKUKO’S METHOD」。今回は、進化したフーディについてのお話です。
STYLING BY IKUKO JIBIKI
PHOTO BY SHIN KIMURA
EDIT BY AKANE MAEKAWA
もうパーカーとは呼ばないで
フード付きのスウェットシャツ。これを日本ではパーカーと呼び、長い間その呼び名で親しまれてきました。ところが、いつの間にか“フーディ”と本来の意味で呼ぶことが、ファッショニスタの間で基本となりつつあるようです。やはりそこにもファッションの多様化の波が押し寄せてきているからではないでしょうか。フード付きのアイテムも素材や形が進化し、今までイメージしていたものだけではなくなったからこそ、日本でもフーディが定着しつつあるのだと思います。フードと言えば、かつては若い子の特権でありカジュアルなアイテムの代名詞、または、マウンテンパーカーしかり機能性を備えたアウトドア用アウター(本来のparkaはこちらの意味)でした。けれども、最近展示会を回っていて気になるのは、フード付きのワンピースやブラウス。パーカーと呼ばれたフーディも、袖や裾がリブオンリーではなく様々、シルエットもコクーンタイプが出てきたりと、オトナ女史にもすっと馴染む進化型が多くあります。そこで今回は、多様化する春のフード付きのアイテムをセレクトしてみました。
地曳いく子が指南する
オトナ女史向けフーディのススメ
❶ 首は人それぞれ
実は首って驚くほど個体差があるんです。長かったり、細かったり、ぱっと見ただけで、その人の印象を決めてしまうほど。ですが、首が短くて太いからフードは似合わない、なんて思わないでください。要は、首とフードのボリュームとのバランスなのです。「フードが付いていると顔が小さく見える都市伝説」もあるぐらい、フードは首の個性を補う有効アイテムでもあるのです。首回りのフードの量感や、立ち具合で印象は変わってきます。肩の落ち方や、袖の長さとのバランスでも全く違います。一見ハンガーに掛かっているとどれも同じに見えますが、フーディを侮ることなかれ。とにかく気になったら試着。自分にしっくりとくるバランスを探してみて下さい。
❷ フーディで体型カバーができる時代
着丈のバランスやシルエットに幅があるのが今年。特に気になるのが、前上がり後ろ下がりのコクーンシルエット。かつてのパーカーは、なぜか腰骨の一番太い位置という中途半端な丈が多く、デニムと穿くと残念な気持ちになることが多かったのですが、今年は絶妙なトレンド感で思いっきり隠してくれます。不得意なところは隠す。得意なところは出す。フーディで体型カバーができる時代がやってきました。
❸ ノイズこそが今年らしさ
素材や形のバリエーションが増えたフーディ。かなり個性的なデザインや、ちょっと大きすぎるかなと思うぐらいのボリュームの違和感を取り込むのがポイント。春だからこそ新しさを取り入れたい。そのためにも、ベーシックなものより、ノイズがあるアイテムを選ぶと今年らしさがアップします。
地曳いく子|Ikuko Jibiki
スタイリスト/1959年東京生まれ。数々のファッション誌で活躍し、女優や著名人のスタイリングも数多く手がける。大人の女性を美しくみせる的確な理論に基づくスタイリング術に定評を持つ。現在は、ファッションアイテムのプロデュースほか、テレビやラジオに出演するなど多方面で活躍。著書に『服を買うなら、捨てなさい』『着かた、生きかた』(ともに宝島社)『おしゃれも人生も映画から』(中央公論新社)、『買う幸福』 黒田知永子との共著『おしゃれ自由宣言』(ダイヤモンド社)(小学館)『おしゃれは7、8割でいい』(光文社)など多数。
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