ファッションのご意見番ことスタイリスト地曳いく子さんが、独自の視点で切り込むオトナ女史のためのスタイル術「IKUKO’S METHOD」。今回はウキウキするクリスマスシーズンのドレスコードについてのお話です。
STYLING BY IKUKO JIBIKI
PHOTO BY SHIN KIMURA
EDIT BY AKANE MAEKAWA
スマート&カジュアルって何?
最近、パーティーの招待状のドレスコードに「スマート&カジュアル」というフレーズをよく見かけます。この言葉を私が最初に見たのは、十数年前にNYコレクションへ行っていた時。欧米では以前からあった概念なのかもしれませんが、その頃から「スマート&カジュアル」ってどんな意味を持つんだろうと考えはじめたんです。結果として私が出した答えは、“パーティーを楽しむ気持ち”でした。例えば、国家レベルの行事やパーティーでどんなに素敵なドレスを着ていても、むすっとした顔で座っていたら、それはもうドレスコード違反だと思います。自分も周りも笑って楽しくなる、それがまさに「スマート&カジュアル」というドレスコードではないでしょうか。そこで、今回は「スマート&カジュアル」をテーマに、今の時代のドレスコードを考えてみました。
地曳いく子が考える
スマート&カジュアルの心得
❶ スマートは厄介でややこしい
「スマート&カジュアル」というのだから、カジュアルでいいんでしょ、と思う方もいるかもしれませんが、それは違います。スマートの意味は“頭が良い”ということ。痩せているという意味ではありませんから(笑)。単にカッコいいという意味だけでもないんです。「スマート=頭が良い=頭を使うということ=その場に合わせた格好ができる」ということではないでしょうか。ドレスコードに「スマート&カジュアル」と記載されていても、高級ホテルとカジュアルなレストランでのパーティーでは格が違います。そこは、自分のさじ加減。スマートがついているからこそ、頭を使って場を読まなければならないのです。
❷ カジュアルは50%以下に
スニーカーがおしゃれアイテムとしての地位を勝ち得た今、以前なら絶対にありえなかったデニムも、パーティーによってはドレスコードとしてNGではないこともあります。でも、服がカジュアル過ぎるとパーティー気分にはなれませんよね。パーティーは非日常。だからこそ、気持ちをアゲておくことが、自分のためでも、周りのためでもあるのです。パーティーでカジュアルなアイテムを取り入れるのはひとつまで。割合としては全体の50%以下におさえることがポイントです。
❸ 張り切り過ぎないが大事
この時季のパーティーというと、オトナ女史の皆さまでしたら仕事の帰りに行くことも多いはず。そういう時こそ「スマート&カジュアル」がドレスコードになるのではと思います。つまり“張り切り過ぎない”ということ。そこにカジュアルの意味があるのです。ヴェネチアの仮装パーティーに行くのとは訳が違うわけですから、いつもの装いに一箇所華やかさを加えるだけで、十分パーティー気分になれます。例えば、その日はきれいな色のワンピースとか、レースをあしらったスカートを選んでみるとか。シンプルな服だったら存在感のあるキラキラアクセをひとつ足すだけでも。ポーチに忍ばせておいて、パーティーに出かける前にシャッと装着。それだけで変身できるはずです。賢く張り切り過ぎない、今はそんな時代ではないでしょうか。
❹ バッグは小さめがマナー
どんなパーティー会場でも、スマホとお財布とクロークの鍵が入るぐらいの小さなバッグで行くのがマナーだと思います。仕事帰りだからと、大きなバッグを持ち込んではダメ。きちんとクロークに預け、小さめのクラッチか、さっと斜め掛けできるサコシェを用意しておきましょう。大きな荷物で席の場所をとるのもいただけないですし、シャンパンをなぎ倒すなんて事件も起きたりしかねません。小ささは人に対する気遣いなんです。
❺ 最後の仕上げはメイク
仕事メイクのまま行くのでは気分は盛り上がりません。いつもよりちょっと赤い口紅をぬったり、アイラインを太く引いたり、明るめのチークをのせたり。メイクを変えることで気持ちも切り替わり、さらにパーティー気分は完成します。
地曳いく子|Ikuko Jibiki
スタイリスト/1959年東京生まれ。数々のファッション誌で活躍し、そのキャリアは30年超え。女優や著名人のスタイリングも数多く手がけ、大人の女性を美しくみせる的確な理論に基づくスタイリング術に定評あり。現在は、ファッションアイテムのプロデュースほか、テレビやラジオに出演するなど多方面で活躍。著書に『服を買うなら、捨てなさい』、『着かた、生きかた』(ともに宝島社)、『おしゃれも人生も映画から』(中央公論新社)、黒田知永子との共著『おしゃれ自由宣言』(ダイヤモンド社)、『買う幸福』(小学館)など多数。9月には最新刊『おしゃれは7、8割でいい』(光文社)を上梓。
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