TOKYO FASHION From 1970 to 2019

スタイリスト 中村のんが選ぶ、未来に残したい東京ファッション&カルチャー・スポット8

中学生だった 1970 年代より原宿に通い、その後もスタイリストとしてファッションの街・原宿を間近に見つめてきた中村のんさん。そんな中村さんが東京のファッションとカルチャーの歴史を語る上で、はずせないスポットとは?

Select & Comment by NON NAKAMURA
Illustration by Natsuki Camino
Edit by Miho Matsuda

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1/4神宮前交差点にて。1972年(写真:野上眞宏)/『70s原宿 原風景』中村のん編著(DU BOOKS)P.208-209より
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2/4右:セントラルアパート1階にあったブティック「MILK」。1975年。 左上・左下:「レオン」店内 (すべて写真:染吾郎)/『70s原宿 原風景』編著・中村のん(DU BOOKS)巻頭ページより
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3/41970年のカラフルなファッション。流行の発信源は原宿だった /『70s原宿 原風景』編著・中村のん(DU BOOKS)P.116-117より
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4/4上:1972年のコープオリンピア(写真:野上眞宏) 下:2018年のコープオリンピア(写真:中村雪乃)/『70s原宿 原風景』編著・中村のん(DU BOOKS)P.195より

1970年、14歳の頃から原宿に通い始めたというスタイリスト/エッセイストの中村のんさん。原宿が閑静な住宅街から、世界的に有名なファッションの街になった現在までの変遷を、ずっと近くで見つめてきた。

「原宿は戦後すぐは閑静な住宅街でした。代々木にワシントンハイツがあり、米軍の親子が買い物にくるキディランドとお土産を買うオリエンタルバザー、そして教会がシンボルの街でした。今のような観光地ではなく、そこに暮らす人たちの商店街と住宅街が広がっていた静かな街に、1960年代後半頃からクリエイターたちが集まるようになりました」(中村さん)

1960年代後半、米軍関係者向けの共同住居として建てらたセントラルアパートに、時代の先端を行くクリエイターたちが入居するようになる。セントラルアパート1階の喫茶店「レオン」には、糸井重里さんや鋤田正義さんなど、気鋭のクリエイターや、舘ひろしさんや岩城滉一さんなどのクールな芸能人や人気モデルたちが集まっていた。川久保玲さんや菊池武夫さんなど、現在、日本を代表するファッションデザイナーたちも、表参道の小さなスペースからキャリアをスタートさせた。

「若者の街 原宿」が形作られた1970年代、街にはクリエイターやデザイナーたちの熱気が立ち込めていた。時は流れて2019年。原宿は世界的な観光地「HARAJUKU」となり、有名ファッションブランドのお店が立ち並ぶ表参道は、世界中の人がショッピングのために訪れる街になった。

「70年代の空気を知っているからでしょうか。今でも東京の街を歩き、作り手や店主のスピリットが宿っているようなお店に出会うと、あの頃の原宿らしさを感じます」

そんな中村のんさんが、原宿から西麻布を抜けて六本木にいたる道のりで、立ち寄りたくなるスポットはこちら。いつでも最新のファッション/カルチャーをまとい、変化し続ける原宿〜六本木だが、この地図を片手に70年代の熱気に思いを馳せてみよう。

コロンバン 原宿本店サロン
「60 年代から神宮前交差点の目印といえばコロンバンでした。クリエイターが集まるセントラルアパートがあり、1978 年にラフォ ーレ原宿が誕生。いつの時代も若者が集まる ファッションの街になりましたが、その風景にはいつもコロンバンがありました」

ペニーレイン
「70 年代は、井上陽水さんなど当時人気の若いミュージシャンや音楽関係者、ファッション関係者が集まる場所でした。吉田拓郎さんの『ペニーレインでバーボン』という名曲もあるほど。変化の激しい原宿ですが、今もイタリアンのお店として人気です」

BOOKMARC
「『マーク ジェイコブス』が手がけるブックストア。厳選されたファッション、カルチャー、アートの本が揃っており、スタッフの方々も本が大好き。ふらっと立ち寄って刺激的な本に出会うことができます。私の『70’ HARAJUKU』も置いてあります」

パスザバトン表参道店
「かつての原宿には若いクリエイターが集まり、小さくてもスピリットのあるブランドやお店が軒を連ねていました。今、その“原宿らしさ”を感じさせてくれるのがここ。思い出の品に物語を添えて次の人に手渡すという コンセプトに、お店の熱い意志を感じます」

FiGARO
「閑静な住宅街だった南青山に、1975 年フロム・ファーストビルが誕生。イッセイ ミヤケなどのブティックが入居し、若者が原宿からここまで足を延ばすきっかけになりました。その頃から今もずっと、おしゃれな気分になる待ち合わせ場所がFiGAROです」

丸山邸
「ファッションの変遷とともに、ブランドのあり方も大きく変わりまし た。その中で、94 年のデビューから、デザイナーの世界を貫き通してい るのが丸山敬太さん。彼の好きなものだけが詰め込まれたこの空間は、東京を代表するスポットとして海外の方にもおすすめです」

レッドシューズ
「1981年にオープンしたレッドシューズは、ローリング・ストーンズやデヴィッド・ボウイなど来日したミュージシャンも立ち寄る、芸能人クリエイターたちの溜まり場でした。夜にご飯を食べて、ちょっと遊ぼうとなると、来るのはここ。ロックな大人の社交場です」

マサト パリ
「1975年からパリで活躍するヘアスタイリスト、MASSATOさん。彼と伝説的メイクアップアーティスト植村秀さんが『世界に誇れるサロンを日本に』との思いでオー プンしたのがMASSATO PARISです。私のヘアスタイルはずっとこちらにお願いしています」

※初出=プリント版2019年5月1日号

中村のん
東京生まれ。スタイリスト/エッセイスト。日本初のスタイリスト、高橋靖子に師事し、22歳で独立。その後、スタイリストとして広告、CMを中心に活躍し、現在はエッセイストとしても活動。70年代の原宿の写真を集めた『70’ HARAJUKU』(小学館)を刊行し、写真展もプロデュース。最新作の『70s原宿 原風景』(DU BOOKS)では、1970年代に原宿で青春を過ごた45人による46のエッセイを収録。『HILLS LIFE DAILY』で連載中の藤原ヒロシさんも寄稿している。