IKUKO’S FASHION METHOD

チャンキーな気持ち——地曳いく子のおしゃれメソッド57

ファッションのご意見番ことスタイリスト地曳いく子さんが、独自の視点で切り込むオトナ女史のためのスタイル術「IKUKO’S METHOD」。今回のテーマは、秋冬トレンドでも注目のチャンキーです。

STYLING BY IKUKO JIBIKI
PHOTO BY SHIN KIMURA
EDIT BY AKANE MAEKAWA

時代はアンバランスな魅力へ

近ごろよく耳にするチャンキーという言葉。英語本来の意味は、“分厚い”とか“がっちりとした”などで、ファッションでは重量感やボリューム感があるものをチャンキーと表現しているようですね。今シーズンのトレンドでも、チャンキーニットやチャンキーブーツが、多くみられます。前にも書きましたが、かつては、八頭身美人(古いですね 笑)の完璧なバランスが美しさの基準でした。しかし、多様性を大事にする時代へと移り変わっていくとともに、ちょっと大きいボリュームでバランスを崩すという、アンバランスな魅力が広がってきています。その中で浮上してきたのが、チャンキーというワードとアイテムなのではないでしょうか。
 
今回は、チャンキーをテーマにしましたが、本気なものから、ちょっとライトな入門編的アイテムまで幅広く選んでいます。トレンドとはいえ、日本人の平均身長ぐらいの私が本気でチャンキーなアイテムに挑もうとすると、大変なことになるときもあるので。これって、チャンキーじゃないんじゃない?と思うアイテムもあるかもしれませんが、着る人によってはチャンキーなバランスになるものも。今季のチャンキーな気分を取り入れ、自分らしくファッションを楽しんでいきましょう。

パリのニットブランド〈レタンヌ〉のニットガウン。カシミヤ90%とアルパカ10%という最高級の素材をハンドメイドで仕上げた逸品。量感があるのに、とてもしなやかでエレガント。もうこれは、コート代わりに着ましょう。ニットガウン¥300,300(レタンヌ/ビームス/六本木ヒルズ ウェストウォーク2F・3F

北欧デンマークのブランド〈ガニー〉のニット。首もとに巻き付けたボウタイのようなデザインで、あたたかみのある素朴さにひねりをきかせた一着。セーター¥57,750(ガニー/アーバンリサーチ/表参道ヒルズ 本館B3F

明るい色の配色にビッグベアをあしらった現代版カウチンセーター。ガチなカウチンセーターは、油脂成分を含んだ毛を使用したもので、撥水性と防寒性に優れたかなり重厚感があるものですが、実際は重過ぎてかなり根性がいります。ぜひ、このぐらいのポップさで取り入れたい。ジップアップセーター¥128,700(ディースクエアード/ミューズ ドゥ ドゥーズィエム クラス ロッポンギ/六本木ヒルズ ウェストウォーク2F

わざと編み目を間違えていたり、途中でほつれていたりと、ハンドメイドの味わいある独創的なクラフト感が〈メゾン ミハラヤスヒロ〉ならでは。上品なピンクかつ丈も短めなので、重々しさなくチャンキーバランスを作れます。セーター¥88,000(メゾン ミハラヤスヒロ/表参道ヒルズ 本館B1F

メンズライクな雰囲気が漂うショールカラー&ダブルブレストのカーディガン。着てみるとかなりのボリューム。ワンピースに羽織るだけで、今年のバランス感に。カーディガン¥97,900(ディーネロ/ソブ ダブルスタンダードクロージング/六本木ヒルズ ヒルサイドB1F

シンプルなカーディガンですが、前身頃が短くなっているので、着るとフェミニンなコクーンシルエットに。くるみボタンという細かなディテールも効いて優しい印象に。カーディガン¥28,600(エストネーション/六本木ヒルズ ヒルサイド1F&2F

袖がユニークなボリュームを作り出すカーディガン。デニムやワンピースに一枚羽織るだけで、独特のチャンキースタイルが完成します。カーディガン¥85,800(メゾン ミハラヤスヒロ/表参道ヒルズ 本館B1F

それほどの厚みはないですが、オーバーサイズのシルエットなので、ほどよくトレンド感のあるバランスに崩してくれます。実際に重みのあるものを苦手とする人は、オーバーサイズのアイテムがおすすめ。カーディガン¥74,800(デザインワークス/デザインワークス ドゥ・コート/六本木ヒルズ ウェストウォーク3F

袖がケーブル編みになったニット。部分的にチャンキーな要素を取り入れることで今年らしさがアップ。人それぞれのバランスで、トレンドを楽しみたい。セーター¥15,400(アールビーエス/ビームス/六本木ヒルズ ウェストウォーク2F・3F

パフスリーブにお花の刺繍があしらわれたクラフト&フォークロア感が漂う鹿の子編みのニット。袖口が長めのリブになっているので、フェミニンなボリューム感が作れます。セーター¥35,200(ダブルスタンダードクロージング/ソブ ダブルスタンダードクロージング/六本木ヒルズ ヒルサイドB1F

編み地にそれほど厚みはないですが、ゆったりとしたデザインなので、今季らしいシルエットに。しかも、この時季のレッドは、気持ちを元気にしてくれます。セーター¥88,000※六本木ヒルズ店限定(ユナイテッドアローズ/ユナイテッドアローズ 六本木ヒルズ店/六本木ヒルズ ウェストウォーク2F

前上がり、後ろ下がりの柔らかなコクーンシルエットに。首が詰まったVネックのデザインが、ボリュームに対して新鮮なバランス。セーター¥37,400(チノ/ビームス/六本木ヒルズ ウェストウォーク2F・3F

優しいオートミールカラーのタートルネックニットはコージー&ラグジュアリー! カシミヤ100%なので肌触りがよく、ざっくりとしたシルエットでも上品。スリムのデニムと合わせてもかわいい。セーター¥86,900(エブール/六本木ヒルズ ウェストウォーク3F

アルパカモヘアのネイビーのニットコート。モヘアの柔らかな量感が、全身を優しく包み込んでくれます。ニットコート¥64,900(ソブ/ソブ ダブルスタンダードクロージング/六本木ヒルズ ヒルサイドB1F

マシュマロマンみたいにかわいい白のダウンジャケット。パッファージャケットは、重くなくボリューム感を出せるので、チャンキー気分を作ってくれるアイテムにも。ベルトを締めて、別のシルエットで楽しんでも。ダウンジャケット¥165,000(イエンキ イエンキ/エストネーション/六本木ヒルズ ヒルサイド1F&2F

フード付きのボアベストは、軽いのにかなりのチャンキーシルエットに仕上げてくれる優れもの。アウターとレイヤーしてもかわいいです。ボアベスト¥74,800(エストネーション/六本木ヒルズ ヒルサイド1F&2F

厚底のチャンキーソールのホワイトスニーカー。ハイカットなので、よりアニメキャラ的なバランス作りにも活躍。スニーカー¥52,800(ジェイ ダブリュー アンダーソン/エストネーション/六本木ヒルズ ヒルサイド1F&2F

がっしりとしたラバー素材のロングブーツ。かなりの雨の日も、雪の日もスタイリッシュに決めてくれます。ロングブーツ¥37,730(ガニー/アーバンリサーチ/表参道ヒルズ 本館B3F

ソールがかなり積んであるサイドゴアブーツ。ボリューミーなバランスと脚長効果も得られ、ちょっと変わったバランスになるのがいい感じに。足もとにボリュームを足すだけでトレンドのスタイルが完成!ブーツ¥101,200(サルトル/ミューズ ドゥ ドゥーズィエム クラス ロッポンギ/六本木ヒルズ ウェストウォーク2F

チャンキーソールのローファーは、履くだけでユニークなボリュームのシルエットに。カジュアルだけど品よく仕上げてくれます。シューズ¥33,000(ダブルスタンダードクロージング/ソブ ダブルスタンダードクロージング/六本木ヒルズ ヒルサイドB1F

地曳いく子が指南する
チャンキーバランスの心得

❶ ファッションは着る人が主役

今季のランウェイで多く登場した“ザ・チャンキーな服”は、そのままだと、私にはちょっとこなすのが厳しいものも多いです。モデル並みに身長がある人なら、ボリュームのある重いものを着こなすこともできるかもしれませんが……。チャンキーというもの自体が、実は超上級者向け。私ぐらいの身長では、ボリュームに負けてしまう。でも、ここで思い出してみて下さい。ファッションは服が主役なのではなく、着る人が主役になってこそ。無理をする必要なんてないんです。その人それぞれのチャンキーがあっていいのです。身長が低めの人なら、大きいサイズのものを選ぶだけでもチャンキーなバランスが作れ、今年らしいトレンドという風にのることができます。まずは、アイテムの売り文句に惑わされず、自分に合ったチャンキーシルエットを探してみましょう。

❷ 目指すはアニメキャラぽいアンバランス

チャンキーを取り入れるポイントは、どこかにボリュームの大きいものを持ってくること。例えば、アニメキャラっぽい大きい靴。厚底のチャンキーブーツを足もとに持ってくるだけで、いつものコーディネイトにちょっとしたアンバランスなシルエットが生まれます。

❸ 見た目の重さやシルエットで勝負

チャンキーの代表ともいえるケーブルニットは、実のところ重いです。編み物をしている人はわかると思いますが、ケーブル編みは通常の1.5倍ぐらいの毛糸が必要になってきます。それだけ重量も増えるわけで、根性と気合いが無ければ着られないことも。今回、ニットやシューズを担ぎながらヒルズの中をリースで回っている時、あまりの重さに、何でこのテーマを出してしまったんだろうと一瞬後悔してしまったほど。でも、実際に重いものを着る必要はありません。見た目の重いバランスを作るだけで、今年っぽさを出すことはできます。ざっくりとしたニットならショート丈のもの、袖だけにボリュームがあるデザインなど、部分投入するだけでもOK。毛糸が太くなくてもオーバーサイズのもので重いバランスをつくるといったこともできますし、パッファーなコートもチャンキーなボリューム感に一役買ってくれます。

❹ 着たかった、でも着られなかったニットコート

チャンキーなニットのロングカーディガンやラップコート。何年も前に私がNYコレクションに通っていた頃、憧れでした。でも実際のところ、重量感があるにもかかわらず風を通すので、車移動の人しか着られなかったのが事実。車から降りて、颯爽とバーに向かう時に歩くだけの人の特権のようなもの。しかし、時代は進化しました。インナー系ダウンの登場で、電車移動の私たちにもようやく機会が巡ってきたのです。今年コートを新調するなら、チャンキーニット系にトライしてみてもいいかもしれません。

❺ できれば試着はマストで

今回撮影したニットたちもそうですが、袖や身頃がビッグサイズなので、写真の見た目はそれほど大きく見えないかもしれません。が、実際は、かなりボリュームがあります。ですから、気になったらお店で実際の大きさを確認することをおすすめします。
 

※ 2021年11月現在の情報となります。
※ 表示価格は全て税込価格です。
※ 六本木ヒルズ等各施設では、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、一部店舗・施設の営業内容を変更しております。 営業状況は定期的に変更がありますので、ご来店の際には事前に各施設HPをご覧ください。

 

profile

地曳いく子|Ikuko Jibiki
スタイリスト/1959年東京生まれ。数々のファッション誌で活躍し、女優や著名人のスタイリングも数多く手がける。大人の女性を美しくみせる的確な理論に基づくスタイリング術に定評を持つ。現在は、ファッションアイテムのプロデュースほか、テレビやラジオに出演するなど多方面で活躍。著書に『服を買うなら、捨てなさい』『着かた、生きかた』(ともに宝島社)『おしゃれも人生も映画から』(中央公論新社)『買う幸福』(小学館)『おしゃれは7、8割でいい』(光文社)『日々是混乱』(集英社)など多数。今秋、集英社より新刊2冊を上梓。