LIFESTYLE

連載コンラン卿からのメッセージ

Article 3

CONRAN'S DESIGN LEGACY IN TOKYO

「アークヒルズクラブ」に息づくコンラン・デザイン

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1998年9月、アークヒルズに会員制クラブ「アークヒルズクラブ」が設立される際、インテリアから家具まで全体のデザイン設計を手がけたのがコンラン卿でした。以来20年にわたって当時の姿を変えることなく日々大切に使い続けられているクラブの内部(通常非公開)を、今回の特集を機に特別な許可を得てご紹介します。

photo by Kiichi Fukuda text by hillslife.jp
(2018.2.14)

Le Corbusier|はじまりはル・コルビュジエ

 

森稔 元森ビル会長は1980年代からル・コルビュジエの絵画や版画などを蒐集し、世界有数のコレクターとして知られています。1990年代後半にアークヒルズクラブを設立するにあたり、森稔会長はその「コレクション」から選りすぐった作品を展示し、会員とともにその創造性を分かち合える空間を作ろうと決意。同じくル・コルビュジエに多大な影響を受けていたコンラン卿にデザインを依頼しました。

1998年の完成から今年の9月で20年。その間、大きな改修もなく大切に使われてきたクラブに足を踏み入れてみると、まさに森稔会長が夢見た通りの空間が今も鮮やかに広がり、インテリアから家具、備品に至るまで、コンラン卿が当時手がけたデザインがほぼそのままに使われています。会員制クラブのため通常非公開ながら、今回の特集のために特別に許可を得てその一部を紹介します。

 

Internal Layout|ギャラリーを中心に、長い廊下が「和」の東側と「洋」の西側をひとつに融合する

 

 

 

東西をつなぐ廊下の東側に開けた通称「月見台」(上)からの眺望と、手前のバーの床を上げて間仕切りつつ、空間としての一体感を演出したラウンジ&バー(下)。

 

Shelves|機能的で美しい家具がここにもあそこにも!

 

 

 

 

「私は自分のことを家具職人だと思っている」というコンラン卿がデザインした家具の数々。上から、ラウンジ&バーのマガジンラック、廊下に造り付けられた電話台、コンチネンタルダイニングの可動棚(カトラリーなどを収納)。

 

Show Plates|クラブのロゴが刻まれたショープレートもオープン以来変わりなく

 

 

銀縁・ロゴ入りのショープレートが今日もお客様をもてなすためにテーブルを飾る。

 

Chairs|デザイナーの哲学は椅子にこそあらわれる

 

 

 

 
「定番や時代の象徴とされる椅子を生み出せなければデザイナーとして成功したとはいえない」と語るほど、コンラン卿にとって椅子やソファは特別な存在。ル・コルビュジエのアートの横にはもちろんアイリーン・グレイの名作が(上)。

 

Carpets|フロアを彩るカーペットにもコンラン卿のこだわりが!

 

 

 

 

カーペットの独特な色合いはすべてル・コルビュジエの絵画から採られている。

 

Connections|3人のコラボレーションの成果です

 

「ル・コルビュジエ」 by テレンス・コンラン

 
数年前、フランス・ロンシャンにあるル・コルビュジエが建築した教会を訪れる機会があった。長い間、この教会は私にとって、20世紀建築の中で最も気になる存在であったので、この訪問は非常に貴重な体験となった。
それまでロンシャンへの私の理解は単に写真や模型に基づいたものであったが、驚くべき現実を目前にして、私の理解が取るに足らないものであったことを実感した。

極寒の2月、雪で覆われた原野の果てからロンシャンは次第にその姿を現した。
その情景は、建物の性質と完全に調和するかのように、清冽な沈黙をつくり出していた。外観周辺を歩いてみるにつれ、その曲線、形態、そして量感が、移り変わる新鮮な景色を生み出し、その一つ一つが、私の想像をはるかに超越していた。
こうして私は改めて天才、ル・コルビュジエを再認識したのである。

ロンシャンへの訪問から15年経った1998年、私は森稔氏よりアークヒルズクラブのデザイン設計の依頼を受けた。そして、森氏のル・コルビュジエ・コレクションの一部を展示するためにクラブのスペースが提供されることを知り、私は興奮した。それはアーティスト、彫刻家としての彼の作品を広く知ってもらうために格好の機会であり、新しい時代の幕開けにふさわしい、と感じたからだ。建築ではない他の創造性における才能こそが、彼を二十世紀における最も優れた建築家として際立たせているのだから。

同世代の他の建築家やデザイナーと同様、私はル・コルビュジエの作品から実に多くの影響を受けている。今世紀初頭にデザインが装飾芸術に多大な影響を受けたことを忘れてはならない。中でもル・コルビュジエはこのアプローチに果敢に挑んだ。この試みのために彼の初期の作品や理論は過去のアンチテーゼ、また革新的思想の象徴として必ず論争の的となった。この時期にル・コルビュジエが試みた建築とはまさしく彼の挑戦の表れでもあった——つまり「住むための機械」を創造することである。しかし同時に、ル・コルビュジエは、自らが構築する建造物の合理性や理論性を強調することを重要とする一方で、美しさも明確に表現していた。

例えば、ヴィラ・サヴォアの曲線的な浴室。この初期作品は、私にとって、ル・コルビュジエの美術作品や彫刻が、後期になってより表現ゆたかに成熟するであろうことを予期する重要な証となっている。あらためて彼の作品を評価してみれば、いまなお感性あふれるフォルムが私の中で共鳴し、至上の喜びを与えてくれるものだということがわかる。

——『CROSSING THE PARALLEL』(森ビル / 1999)より抜粋

 

Conran Blue|こんな所に!コンランブルーを見つけました

 

 
 

コンラン・ブランドを象徴するウルトラマリンブルー。クラブ内では唯一、寿司カウンターの足元に。

 

Light|いかに照らすかとともに、いかに影を生み出すかが重要だ

 

 

 

独特な形をしたライトはゾーンごとに違っており、上がコンチネンタル用、下が日本料理個室用に、当時のコンラン卿のラインナップからセレクトされたもの。

 

Typeface|フォントに求めるのは無駄のないシンプルなフォルムです

 

 

英国伝統の定番フォント「バスカヴィル」を「habitat」のロゴに採用して以来、シンプル&高貴さがコンラン卿のフォント選びの基準。

 

Paper Bags|この赤い絵柄にピンときませんか?

 

 

 

ル・コルビュジエの絵画作品から赤い絵柄を採ってつくられた紙袋。名刺や封筒もコンラン・デザイン。紙袋の内側にもロゴが印刷されている。

 

● アークヒルズクラブとは?

 
人・情報・文化の発信拠点として、1998 年9月にアークヒルズに設立された会員制クラブ。以来、20 年間にわたり、変わらない安心感をもって訪れる人をやさしく包み込むとともに、快適な都市空間における新しい文化の愉しみ方を提供し続けている(通常非公開)。www.arkhillsclub.com

 

※コンラン卿から寄せられた、アークヒルズクラブのレセプションのためのアイデアスケッチ。

 

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In Memory of Sir Terence Conran

コンラン卿から教わった大切なこと