大人になってからの方が、学ぶのが素直に楽しかったりして。2024年もそろそろ春へ向かいつつ、HIROSHI FUJIWARA(hf)の幻とリアルを垣間見る当連載。第59回は、2023年8月〜10月にアップされた画像からおとどけします。
INSTAGRAM & TALK BY HIROSHI FUJIWARA
TEXT BY MIKA KUNII
授業、はじまってます
——さて、どんな感じですか?フラグメント大学、回を重ねておりますが。
hf めっちゃいいですよ。
——受講者は何歳くらいの人が多いんですか?
hf 30過ぎの人が多いのかな。一番若い生徒で17歳の子が2人いて。中心は40歳〜50歳。
——高校生もいる! 何人が選抜されたんですか?
hf 700人ぐらいの応募の中から56人。ほんとは50人だったんですけど増えて。
——倍率、高! 難関校ですね。課題の論文のようなものを提出したんですよね、選考基準は?
hf 面白いことを書いていても、ファンみたいなノリだと難しくて。女性も10人ぐらいいます。
——なるほど。学生証とかあるんですか。
hf ありますよ。欠席もほとんどないです。最終講義が3月で、計8回。
——藤原さんが1時間半おひとりでしゃべってるのですか?
hf 前半は僕ひとりで、チャプター2からゲストの方に登壇してもらいます。その準備のために夜中3時頃までみんなで打ち合わせしているんだけど、人に教えるっていうことは、自分はその倍勉強しなきゃいけないんだなと思いました。僕の方が学ぶことが多いかも。
——教えるって深いですね。宿題はあるんですか?
hf まだ出してないです。
——ちなみに第1回目のテーマは何だったんですか?
hf 第1回は文化人類学で、第2回がメディア論。次が情報学で、その次が経営学。1月は店舗の建築について、JUNの佐々木君と建築家の荒木君に登壇してもらいます。この学校は多分、今後も続けていくことになるかも。面白いし、有意義なことだから。スピンオフで「フラグメント大学ワールドツアー」もできるといいかも。
——それは取材したいかも。
行き場のない僕ら#1
——これティラミスなんですね。どちらの?
hf バワリーキッチンのティラミスです。だからロータスのやつかな。おいしいですよ。
——藤原さん、相変わらずバワリー出没率高いんですね。
hf バワリーぐらいしか遅くまでやってるカフェないんです。カフェってもう深夜までやってるとこほとんどないから。といっても、バワリーも0時ぐらいまでですけど。
——深夜になるとみんな閉めちゃいますね。
hf だから、フラグメント大学の会議とか夜中3時までやったりするとき、場所がなくて。白金のラ・ボエムは3時半までやってます。
——あとはファミレスぐらいですもんね。
hf いや、ファミレスも22時には閉まります。
——行き場なし。
Macに歴史あり
——ハイパーカード!
hf 懐かしくないですか? Macに漢字Talk入ってましたよね。
——いつの間にか消えていましたね。
hf 初めて手にしたAppleはこのぐらいフロッピーディスクが付いていて、一回クラッシュしたら全部読み込み直さなきゃいけなかった。OSインストールするのに30枚ぐらい入れなきゃいけなくて。
——いま思えば、大変でしたね。
hf そうです。もうクラッシュすることほぼないですもんね。
——固まらなくなりましたね。そもそもクラッシュって言わないですものね。
hf クラッシュして新しく何か入れたやつの機能拡張がぶつかって、そもそも機能拡張って何だよと思いながら。
——日本でMac販売40周年。
hf はい。Apple Japan40周年。
——ちなみに藤原さんはWindows、使ったことありますか?
hf 昔VAIOをちょっと使いました、SONYがちっちゃいのを出したとき。あれは旅に便利だったので。
——でもVAIOも今やSONYじゃないんですもんね。SHARPのザウルスもありましたね。
hf ザウルスはパッドでしたね。MacBookも最初の頃はSONYが作ってたり、OEMもやっていたからPioneer製のMacとかもあって、一時はいろんな会社が作っていたんです。
——Macに歴史あり。
エクソシスト、アップデート
——この『エクソシスト』って、リバイバルとかディレクターズカットなんですか?
hf 新作ですね(2023年12月公開)。予告編、めちゃ怖いですよ。黒人と白人の女の子が悪魔に取り憑かれる。
——なんだかアップデートされてますね。オリジナル作品もご覧になっていますか?
hf ていうか、観てないんですか?
——怖いのは観ないんです……
hf でも、アカデミー賞取ったりした大ヒット作品じゃないですか。
——『羊たちの沈黙』は観ました。
hf 『羊たちの沈黙』は僕が今まで見た映画の中で一番と言っていいほど面白いです。
——同じ監督、ジョナサン・デミが撮った『ストップ・メイキング・センス』がすごいっていうのも以前聞きました。
hf アメリカはすでに公開してて、日本が2月かな。めちゃめちゃ面白いですよ。『アメリカン・ユートピア』の500倍面白いです(笑)
——えーっ?
hf 絶対観た方がいい。
——話が戻りますが『エクソシスト』って悪魔払いの話なんですよね?
hf うん。『サスペリア』も『オーメン』もホラーだけど、『エクソシスト』はホラーではあるけれど、犠牲と家族愛のストーリーなんですよ。
——なんだか、観たくなってきた。
なんだか似ているふたり
——この方はどんな方ですか。ミスター・クルーズさん。
hf 昔からの友達、エディー・クルーズ。
——何をなさってる人?
hf いま何やってんだろう。もともとSupremeをやってた初期メンバー。
ロンドン橋が落ちるとき
——これは古い写真?
hf うん。80年代に、このバートラム・ジョンソンっていう人が「London Bridge is Falling Down」って、多分イギリスで最初のヒップホップのレコードを出したんです。
——なぜいまこのポストを?
hf たまたま写真が出てきて。80年代にロンドンに行った時の写真。懐かしいなあと思って。
こむでぎゃるそん、1号
hf COMME des GARCONSの1号店。
——東京のブチック! 雑誌の記事ですか?
hf 『an・an』です。めちゃめちゃ面白かったです。文章というか、この素人感ある雑誌の作りが。『an・an』ってこんな感じが許されてたんだっていう。
——このお店があのCOMME des GARCONSですか?
hf 黒くなったのは80年代ですよね、カラス族っていう感じになって。
——パリコレにデビューする頃からかな。
hf これは72年。でもロゴだけは変わってない。この1号店、ドーバーでポップアップで再現してほしい。
昔々、香妃園村がありました
——POPな海老のすり身ですね。
hf 香妃園の。
——え、香妃園行くんですか?
hf 香妃園も朝4時ぐらいまでやってるから。
——香妃園っていうとみんな鶏そばとかカレーとか春巻きですよね。
hf 香妃園って昔六本木に4店舗ぐらいあったんです。
——麻布警察の隣の2階しか知らないです。
hf あの1階も香妃園で、六本木通りを挟んだ反対側にもあったんです。それとスクエアビルと、瀬里奈のとこ。
——六本木は香妃園村だったんですね。夜遊びしたらみんな最後は香妃園っていう時代がありましたね。
hf 偉い編集者のおじさんたちはみんな香妃園行ってましたよね。
——こんどエビのすり身を頼んでみます。
hf おいしいですよ。
F1、周さん、サンダーボルト
——はい、「この人は誰?」シリーズ。
hf この人は、F1のレーサーです。
——韓流スターかと思った。日本人のレーサーですか?
hf 中国人のF1レーサー。周冠宇(Zhou Guanyu)さん。友達の友達で、ヘルメットのデザインを頼まれてデザインしました。
——F1のヘルメットまで! 頼まれるものの幅広さよ……。フラグメントヘルメット、F1にピッタリですね。
珍しい並びシリーズ
——葉加瀬さんと藤原さん。YOSHIKIさんに続く、「珍しい並びシリーズ」です。お友達なんですか?
hf いえ、ロンドンからの機中、席が近くて。その時たまたま僕がデザインした洋服を葉加瀬さんが着ていたんです。それがきっかけで、葉加瀬さんのラジオ番組にゲストで出ることに。
——そんなご縁だったんですね。
hf 「こんにちは、ちょうどたまたま着てるんですよ。何かすごい恐縮です」みたいな感じで。
——いい人ですね! ところで藤原さんはANA派なんですか?
hf たまたま、 JALだと自分が行く場所とのコネクティングがあんまりなくて。スターアライアンスだとルフトハンザとスイスがあるから。ヨーロッパの中をまわるのは、やっぱルフトハンザが一番便利なのではと思ってまして。
推しメン
hf これ、めちゃめちゃおいしいです。
——以前も上げていらっしゃいましたね、札幌のラーメン屋さん。
hf とにかくめちゃおいしいです。買ってみてください。
——どこで買えるんですか。
hf 通販で。こんなおいしいインスタントラーメン、食べたことないぐらい。
——実店舗のラーメンもすばらしいんでしょうね、その味を再現してる感じ?
hf はい。
行き場のない僕ら#2
——こちらのお店は?
hf 池尻のALL GREEN。バワリーで会議してて、0時の閉店以降、そのまま行けるところを探したら、ここが開いてました。
——打ち合わせ場所、さまよってますね。大変。しかも深夜に食べるにしては割とジャンクですよね。いや藤原さん時計ではまだ夕方かな。
hf はい。全然大丈夫。
非言語マーケティングの風景#1
——これ、気になってました。
hf CASETiFYっていう、多分いまiPhoneケースで一番売れてると思う。この枠がデザインアイコンなんですけど、ここがスタンドになるのは便利だなと思います。よく新幹線の中でもスタンドにしてたりするじゃないですか。そういう意味では便利だと思う。僕はスマホでは映画を観ないんだけど。
——ふだんNetflixを見る時はどうしているんですか。
hf 移動中はiPadですね。
——CASETiFY、検索したらすごい出てきた。
hf 非言語マーケティングです。
——えっ?
hf そうやって、何だろうって調べることによって、みんなが納得するっていう。記事を読むだけだとそのまま流しちゃうけど、努力をして調べることによって興味を持つこと。
——じゃあ、この連載は全部アンチ非言語マーケティング。
hf そうです。非言語マーケティングを言語化するっていうナンセンスなことをあなたたちはやってるんです(笑)
——ナンセンス連載の称号、いただきました(笑)
伊勢のNewうなぎ
——藤原さんといえばウナギ。個人の感想です。で、こちらは初めてのお店でしょうか?
hf 伊勢の新しいお店です。おいしかったですよ。
——お店のインスタを見たら、いろんなルールが書いてありました。何時までに来てくださいとか。
hf そうそう、伊勢の田舎の川沿いに造ってて、そこで生きてるやつをさばいているので。
——なるほど。だから時間を守らないと。
hf その日に整理券を取りに行って。
——これは蒸し焼き?
hf いや、じか焼き。伊勢では蒸し焼きじゃないです。
非言語マーケティングの風景#2
——このAnti Socialってなんですか?
hf これ、すごい昔に出したTシャツです。
——これまでにも何度かポストしてますよね。
hf ほんと?
——だから何かあるのかしらって。どういうメッセージなんですか、Anti Socialって。
hf Anti Social Social Club、知らないですか。
——知らないです。
hf めちゃめちゃ売れてるブランドなんですけど、そこのやつです。
——またもや非言語マーケティング(笑)
hf 韓国人の子がやってるLAのブランドで、去年100億で売却したのかな。
——ほんとだ。Anti Socialだけで出てきた……勉強になります。
企画・藤原ヒロシの名作ドラマ誕生?
——なぜ、はっぴいえんど?
hf このCDをプロデュースした知り合いからもらいました。はっぴいえんどって、唯一ドラマ化できるコンテンツだと思うんで、日本でやったらいいのになと思います。
——ドラマ化! でも、どうして唯一なんですか?
hf 他の売れてるバンドって、大抵が若い頃から売れていたわけじゃなく、大人になってからなんです。YMOにしても大人になってからだし。ほとんどのバンドがそうだけど。売れ始めてから青春時代を送った人たちは、ロックで紆余曲折あって成功してみたいなものがあんまないから。その点、はっぴいえんどは、学生時代からはじまって、米軍ハウスを借りて住んで、それでそれぞれが大きく羽ばたいていく感じとか。そういうの、他にはないのではと。ドラマ化コンテンツには最適でしょ。
——クドカンさんに頼んでみましょう。
hf クドカンじゃないかな。笑いの要素はいらないかも。
——どうですか、原案・脚本、藤原ヒロシ。
hf いや、原案だけ。全く知らないから。
——では企画、藤原ヒロシということで……
hf ぜひやってください。山崎豊子に全部取材してもらいたかったです(笑)
——重厚、いきなり社会派(笑)。三谷幸喜さんとか。
hf いいですね。あ、坂元裕二さんがいいんじゃないですか。
——「カルテット」好き。
hf 『月』は見ました?
——いえ。宮沢りえさんが出ている作品ですよね?
hf そうそう。相模原障害者施設殺傷事件の、結構突き付けてくる映画です。映画だから、犯人の気持ちもきちんと描いているだけに、何が正しいのかがわからなくなってくるような展開で。
——実際の裁判はもう終わったんでしたっけ?
hf まだ完全に終わってはいないですね。犯人もまだ一度も謝ってなくて。
——その状況で映画ができちゃうって、なかなかの早さですね。
hf そうですね。結構リスキーだと思います。そういう意味ではよく作ったなって感じです。
——見終わった後、気持ちが暗くなりませんか。
hf うん。めちゃめちゃ暗くなります。
——藤原さんは、気持ちが暗く重くなりそうな映画でもご覧になりますよね。
hf どっちかっていうとそっちのほうが好きかも。
——引きずること、あります?
hf ないですね。映画だなーって思うだけ。
ギンズバーグ・セーター
——やっぱりこのセーター、いいなあ。R.B.Gセーター。
hf これはSOPHのやつ(※完売しています)。MONCLERのものは2年前で、デザインも違うんですよ。
——たしかにMONCLERのほうは、もう少しモヘアっぽかったかも。
hf そう。これはもっとあの人(R.B.G)っぽい。でも非言語マーケティングなんで、誰にも言わないですよ。
——私は聞いちゃいますけど。アンチ非言語マーケティングだから(笑)
藤原ヒロシ|Hiroshi Fujiwara
1964年三重県生まれ。DJ、音楽プロデューサー、ファッションクリエイター。fragment design名義でファッションをはじめさまざまなジャンルのクリエイティブ・ディレクションを行い、ストリートカルチャーに多大な影響を与えている。
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