LONG-LIFE SOFA

〈アイラーセン〉のソファを薦める理由とは?——アクタス・ブランドストーリー vol.7

デンマークでは誰もが知るブランド〈アイラーセン〉のソファを〈アクタス〉は1994年から日本で独占販売している。社内スタッフの愛用率ナンバーワン、自信を持ってお客様に薦めるソファの秘密とは? そこには〈アクタス〉のサステナブル思考に合致する魅力がありました。

TEXT BY MARI MATSUBARA
PHOTO @ACTUS

〈アイラーセン〉というソファブランドをご存じだろうか? デンマーク・オーデンセで馬車造りからスタートし、20世紀に入ってからはバスのシートと車体の製造、そして1969年以降ソファ製作を始めたというユニークな社歴を持ち、今年で創業128年を迎える。ソファに対してとりわけ思い入れの深い国民性のデンマーク人に広く知られているブランドだ。実はこの〈アイラーセン〉、〈アクタス〉の社員が実際に自宅で使っているソファの中でナンバーワンの人気を誇る。なぜそれほど評判がいいのか、その理由を探ってみた。

 

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1/31895年、馬車製造からスタートした〈アイラーセン〉。ブランドのロゴにある馬車の絵はそのルーツを物語っている。
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2/31910〜1935年にかけてはバスのシートおよびエンジン以外の車体を製造していた。
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3/31935〜1969年、アームチェアなど木製家具を製造していた時代。座り心地を探求するクラフトマンシップは現在まで引き継がれている。

理由❶——構造の堅牢さ

結論から言えば、〈アイラーセン〉のソファには“古くなったので捨てる”という選択肢がほぼ、ない。なぜなら、ちょっとやそっとでは壊れないから。その構造の秘密を〈アクタス〉アートディレクターの赤星進さんに聞いた。

「他のブランドのソファとの決定的な違いは、まず内部構造です。一般的なソファの内部フレームは安価な木材が使われることが多いのですが、〈アイラーセン〉のソファに使われているのはスウェーデン産の無垢のパイン材です。丈夫な上に柔軟性があり、座る人の体重をしなやかに受けとめます。そして最大の特徴はフレームとフレームをつなぎとめるのに木ダボを使っていることです。通常のソファはガンタッカーという大きなホチキスのような工具で留めつけるのですが、〈アイラーセン〉ではフレームにひとつひとつダボ穴を開け、そこに接着剤を塗布した木ダボを挿し込んで接合します。こうすると木ダボは穴の中で膨らみ、フレーム同士をがっちりとつなぎ合わせます。どんな方向から力がかかっても接合部が外れることはありません」

 

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1/3フレームの穴に木ダボを差し込んでいく。
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2/3木ダボ。
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3/3接着剤は環境に配慮したものを使っている。

荷重がそれほど掛からないボードとフレームの接合にはガンタッカーが使われているが、座る人の体重を支える肝心のフレームに関しては木ダボで接合している。見えない部分にまでそんな手間のかかることをするソファブランドはおそらく〈アイラーセン〉だけではないかと赤星さんは言う。

「分厚い無垢材で構成されたフレームは非常に堅牢です。〈アイラーセン〉のソファは片側の前脚を持ち上げると、反対側の前脚も同じように持ち上がります。多くの一般的なソファだと反対側の脚は床に着いたまま。なぜならフレームがねじれを起こしているからです。〈アイラーセン〉のソファはフレームがねじれたりゆがんだりしないので、度重なる引越しの搬出入にも耐える屈強さを持っています。歪まないから軋まない、壊れない。だからずっと長く使い続けていけるのです」

ソファの断面 ① 弾力性と強度に優れた無垢のパイン材 ② 柔らかく、体から発せられる熱や水分を適度に吸収するフェザー ③ 長時間座っても疲れない3層構造のウレタンフォーム ④ 荷重を受け止めるシート下のS字スプリング

座面の下を支えるフレームの中央には緩くカーブする材が入っている。

理由❷——クッションのホールド感と調湿性

いつまでもそこに居続けたくなる圧倒的な座り心地の良さは、馬車造りから始まりのちにバスのシートと車体を製造していた歴史を持つ〈アイラーセン〉だからこそ。長年の研究によって究極の快適性にたどりついたという。

「一般的なソファは、座面や背もたれのウレタンを一つの塊として切り出すのですが、〈アイラーセン〉の場合、硬めのウレタンフォームを芯にして、柔らかなウレタンフォームで両側から挟む三層構造になっています。こうすることで、肌に触れる柔らかさを保ちながら、荷重をしっかりと支えます。また、背もたれや座面のクッションには贅沢に大量のダウンとフェザーを入れています。座った途端、目をつむりたくなるような心地いい柔らかさです。それだけではなく、ダウンとフェザーには調湿効果があり、座る人の体の熱や湿気を吸収し放出してくれるという利点もあります。ウレタンだけでは長期使用には向いていないのですが、ダウンとフェザーが入ることで復元性が保たれます」

中心に硬めのウレタンを置き、周りを柔らかいウレタンで包む3層構造。

理由❸——自由に交換できるカバー

〈アイラーセン〉のソファには20シリーズ・125種類の張り地が用意されており、様々な質感、色柄を自由に選ぶことができる。しかも座面や背もたれはもちろん、全てのカバーを取り外すことができ、ファブリックならドライクリーニングに出せる。

「色柄違いの予備のカバーを用意しておき、季節ごとにクリーニングに出して入れ替えれば、全く違った雰囲気のソファとして楽しめます。縫製に関しても選び抜かれたドイツ製の糸を使っているので、長年の使用やクリーニングに耐えます。また、ファブリックの耐摩耗性を計測する『マーチンデール』という数値があり、数字が大きいほど摩耗に強いのですが、ある程度高額なソファで使われているファブリックでも1万〜5万マーチンデールという値なのに対し、〈アイラーセン〉が選ぶ張地には10万マーチンデールというファブリックもあります」

コットン、混紡、本革、それぞれに質感もカラーバリエーションも豊富な張り地。

ストックホルムにある〈アイラーセン〉の自社工場で保管しているファブリック。

レザーの切り出し作業。

縫製も一部はストックホルムで行っている。

人気のアイラーセンソファとは?

〈アクタス〉で扱う〈アイラーセン〉のソファの中でも、特に人気のモデルをご紹介しよう。

《STREAMLINE SOFA》〜グローバルで人気No.1、10㎝単位でオーダー可能

20年前から存在する定番のヒット商品。実はアクタスからの「よりコンパクトなモデルを」とのリクエストに応じて生まれたのだが、今や世界で最も売れるようになった。

《RA SOFA》〜奥行きたっぷりの座面でデイベッドにも

4年前にデビューしたモデル。シートが分割されていないので、座る人数を限定しない。フレームはコンパクトだが、アームの内側にはしっかりとボリュームを持たせたデザインなので、リラックス感も充分。シェーズロングだけ切り離してデイベッドとして使うこともできる。

《PLAY GROUND SOFA》〜組み合わせ・レイアウト自由自在

座面、背もたれ、クッションを自由に組み合わせて自分好みに形作るソファ。使うシーンに合わせて座る位置・方向を自由に変えられる。

《ATON SOFA》〜王道ソファへの回帰

近年は4本の細い脚で支え、座面の下に空間があるタイプのソファが好まれていたが、どっしりと重量感のあるソファへの回帰も起きている。最新モデルの《ATON》は、ふくよかでボリューム感のあるフォルムが特徴。

長く付き合える家具を。——〈アクタス〉の願いと「トレードインサービス」

フレームの強度、クッションの耐久性、カバー交換の自由度に支えられた〈アイラーセン〉のソファは、長い年月の使用に耐える堅牢性を備えている。逆に言えば「捨てる必要がない」ほど頑丈で、手に入れた人の一生に寄り添う相棒であり、さらには子や孫の世代にまで引き継いでいける飽きのこないデザインと高いクオリティを宿している。このことは、「良質な家具と長く付き合うこと」を提唱する〈アクタス〉の企業理念にも完全に合致している。だからこそ1994年から日本での独占販売を続け、このブランドが長年にわたり培ってきたクラフトマンシップを日本のユーザーに広める役割を果たしてきた。

一方で、家具を買い換えたいというお客様には、手放す家具を廃棄してしまうのではなく〈アクタス〉が下取りをして必要なメンテナンスやクリーニングをほどこし、次のユーザーへと受け継いでいく「トレードインサービス」を提供している。この保証サービスの対象に〈アイラーセン〉も含まれている。誰かが愛用した大切なソファが別の誰かに引き渡され、その価値が引き継がれていく。適切な手入れをすれば、人の寿命よりも長く存在し続けるロングライフなソファ。そのバトンをつなぐためのサポートを行うことで、サステナブルで豊かな社会を目指している。