毎日使うものだから、いいものを使いたいし使ってほしい。使いやすさを極めた1枚、遊び心が詰まった1枚—— 500枚以上を所有するハンカチフリーク・〈クラシクス・ザ・スモールラグジュアリ〉の橋本大輔さんに今いちばん新しいハンカチの世界をナビゲートしてもらいます。
PHOTO BY KAZUYA AOKI
EDIT AND TEXT BY RCKT/ROCKET COMPANY*
日本で独自の進化を遂げるハンカチ
「ハンカチって決して前面に出てくるものではないけれど人生の相棒のような存在で、1枚1枚に思い出があるものです。その起源は定かではありませんが、紀元前三千年ころのエジプトで使用されていた痕跡が見られます。17世紀にはレースのハンカチが流行し、当時の肖像画にも描かれているように上流階級のハレの日のファッションアイテムとして人気で、婚約の印としても使われていたようです。日本では手ぬぐい文化の下地があったので、明治以降に海外から輸入されたハンカチが自然に受け入れられたのでしょうね。よく手を洗う衛生習慣や、外から見えないところにこだわる“粋”の文化もあいまって、色・柄・製法にこだわり日本独自の発展を遂げてきました。一方、ハンカチの“装飾性”という役割が縮小していった欧州では、ハンカチ文化は一般に根付くことはないまま現代に至っています」(橋本さん)
進化を続ける日本のハンカチ、最新事情はどうなっているのでしょうか? 〈クラシクス・ザ・スモールラグジュアリ〉の商品を例に見てみましょう。
進化 ❶ アイロンいらずできちんと感もある「第三のハンカチ」が人気
「ハンカチーフは年々扱いやすく吸水力のあるタオルハンカチに移行していますが、かさばってバッグの中で場所をとったり、カジュアルな雰囲気のせいでフォーマルなシーンでの使用がためらわれたりするのがネックというお声をいただいていました。そこで、一般的なハンカチの約10倍の太さの糸を使用し吸水性を高めるとともに、フォーマルなシーンでも使用できる質感を追求したのです。海島綿という世界最高品質のコットンを使用し、光の反射面が多くなるように織り上げてツヤのある素材感に仕上げることで、第三のハンカチが出来上がりました。スーツにも合うと好評です」(橋本さん)
進化 ❷ 固定概念に縛られない遊び心溢れる「HIKKOMI」
「HIKKOMIは、デザイナーの“正方形じゃないとダメですか?”という素朴な疑問から生まれました。ハンカチは16世紀フランスでマリーアントワネットの進言による法律で正方形になったと言われていますが、それに縛られる必要はないということで開発がスタート。もともと技術の蓄積がある刺繍と、長年の物作りで経験した歪みの失敗を逆に活用して“ひっこませる”デザインとを組み合わせました。猫がハンカチのふちにぶら下がったり、犬がふちを引っ張ったり。今までの静止画的なハンカチの世界から、動的な表現に進化したデザインです。定番の動物シリーズと物語シリーズに、スターウォーズとのコラボシリーズも加わり人気です」(橋本さん)
進化 ❸ 傷物のハンカチから生まれたサスティナブル発想の「re-edit」
「製造工程や店頭での刺繍加工の失敗など、傷物のハンカチは一定の確率で発生します。想いを込めて生産したハンカチたちをどうしてもあっさり捨てることができず、なんとか活用できないかと考えていたところたまたまスタッフ手作りの巾着やティッシュケースがお客様の目にとまり、是非欲しいとご要望をいただいたのが“re-edit”シリーズの始まり。サスティナビリティ意識の高まりとともに、ブランドとしてしっかり向き合うためにも“再編集”という意味を込めて“re-edit”と名付け、様々なアイテムを生み出しています。ハンカチの柔らかな肌触りとともに、一点ものとして楽しんでもらえると嬉しいです」(橋本さん)
橋本大輔|Daisuke Hashimoto
長年ハンカチーフの商品開発に携わり、500枚以上のコレクションを持つハンカチマニア。2009年よりハンカチーフ専門店〈クラシクス・ザ・スモールラグジュアリ〉に携わり、現在ではブランド責任者としてハンカチーフの魅力を広く伝える。
※2022年7月現在の情報となります。
※表示価格は全て税込価格です。
※定休日は六本木ヒルズに準じます。
※店舗により臨時休業や営業時間を変更させていただいております。詳細は「六本木ヒルズの営業状況について」をご確認ください。
SHARE