HOW TO KEEP YOUR TEETH HEALTHY

マスク生活で気になる口臭や虫歯を撃退する、本当のデンタルケア

マスク生活が当たり前となったこの1年半で、口臭や虫歯などの“お口トラブル”が増えたような……? そんな実感がある人は今こそ知るべき、歯磨きの正しい方法と、取り入れるべきデンタルケアの習慣について「六本木ヒルズ西堀歯科」の歯科衛生士と歯科医師にインタビュー。インフルエンザウイルスや花粉などの対策としても、今後もマスクが手放せないという人も必見。

TEXT BY nao kadokami
PHOTO BY aya kawachi

マスク生活で感じる“お口トラブル”の原因はマスクではない?!

マスクを着けない日はほとんどない今、気になるのが口周り。口臭がやけに気になったり、マスクによる口内環境の変化を案じている人は少なくないはずだ。

六本木ヒルズ西堀歯科医院の菅野文雄副院長

(左から)歯科医師の藤原千晶さん、歯科衛生士の佐藤百花さん

「昨今『マスクをしていると口が乾燥して口臭が……』といった報道が時折見られますが、そのエビデンスは科学的には証明されていません。マスクを着けることで自分の息や口臭に対して自覚的になった結果、口臭を気にする人が増えたものと思われます」と語るのは、六本木ヒルズ西堀歯科に勤める歯科医師の藤原さん。

また口臭とは別に、パンデミックになってから多く見られる“お口トラブル”もあると、歯科衛生士の佐藤さんは話す。

「当院の患者さんから『在宅勤務が増えて歯のケアをちょっとサボり気味です』『最近歯間ブラシを使っていませんでした』といった話をよく聞きます。実際、定期的に通われている方でも歯の汚れが以前よりも目立ち、結果的に虫歯になることも。コロナ禍になってしばらくは受診を控える患者さんも多かったのですが、そもそも受診直後は指導した通りにデンタルケアを実践するものの、受診期間が空くとつい手を抜いてしまう……というケースも多いです」(佐藤さん)

まだしばらくはマスクが必需品となることは間違いない。マスクを着用しながらも日々を快適に過ごすには口内環境を整えることが先手だ。

気になる口臭は舌のクリーンアップで撃退!

口臭の原因として歯科医院で多く見られるのは、舌に付着した汚れ。舌の状態をセルフチェックするうえで注目すべきは舌の色だ。

舌ブラシ ¥300

舌を出して状態を見た時に、黄色や白色などの色みを帯びている場合は舌のお掃除を取り入れてください。歯磨きの後に歯ブラシで数回程度磨くのも良いですし、専用の舌クリーナーを活用するのも一案です。後者は毛にシルコンが使われているものもあり舌を傷つけるリスクが少なく安心して使えます」(歯科衛生士の佐藤さん)

また口臭の原因として他に考えられるのは歯の磨き残し

「日々の歯磨きやケアを行なっているにもかかわらず口臭が気になる人は、口内で菌が繁殖している可能性もあります。例えば、起床直後の口臭の原因は夜間の唾液の分泌量の減少による乾燥と捉えられがちですが、それだけではない。前日夜の歯磨きが不十分となれば、口内が乾燥していることと相まって、口内細菌が繁殖しやすくなります。それゆえに口臭が生じることもあるので、きちんと歯を磨き、汚れを可能な限り落としきることが、口臭に限らず口内環境を健やかに保つのにやはり大切です」

歯と口内環境をクリーンに保つための歯磨きの心得

歯ブラシ各¥410、歯磨き粉¥600

まず、基本のキとなる歯磨き。

「歯磨きで重要なのは、歯ブラシを弱い力で小刻みに動かすこと。しっかり汚れを落とそうとして力いっぱい磨く人が多いのですが、歯ブラシの毛先が歯に対してまっすぐ当たらず、磨くべきところに毛先が届かなくなり本末転倒です」(藤原さん)

正しい歯磨きの基準として歯磨きに費やす時間について、佐藤さんは「歯を磨く時間は一つの目安にすぎない」という。

「ただ全体をくまなく磨くには最低でも2〜3分はかかるもの。普段30秒程度で磨き終えるという人は磨き残しがある可能性が高いので、今一度磨き方を見直した方が良さそうです」(佐藤さん)

汚れをしっかり落とすには歯ブラシの選び方にも工夫を。

「歯ブラシに関しては、毛の硬さは普通で、ブラシのサイズは小さめを普段おすすめしています。毛が硬すぎると歯の表面を傷つける一因になりますし、柔らかすぎると歯に対して毛が“寝る”ので汚れを取りきれないことも。また、小さめのブラシを選べば奥歯の内側など磨きづらくて汚れがたまりやすい部分にアプローチしやすいです」(佐藤さん)

歯磨き粉は自身の歯に対する悩みに応じてチョイス。

「口内の乾燥による生理的な口臭が気になる人は、ミント系のフレーバーのものを選べば不快感はなくなるはず。虫歯対策に力を入れたい人は成分に注目しましょう。パッケージにも“フッ素配合”などとよくうたわれますが、歯磨き粉にフッ化物やフッ化ナトリウムといった成分が入っていると虫歯予防向き。今、日本で歯磨き粉におけるフッ素の配合の上限値は1500ppmですが、1450ppmあるものを選ぶと効果的です。歯科医院はもちろん、薬局などでも展開されています」(佐藤さん)

「歯磨きに徹すればカンペキ!」とも言い切れない?

歯ブラシと歯磨き粉を厳選して歯ブラシの基本を抑えるだけでは不十分。

歯間ブラシやフロスは“詰まり”が気にならなければ必要ない、と思い込んでいる方が結構いますが、意外と試してみると汚れが出てくるケースが多いです。実際歯ブラシでも歯と歯の間に多少は毛先が入りますが、汚れを取りきるのは難しい。歯と歯の間は虫歯になりやすい部分なので、しっかり歯間ブラシやフロスでケアした方がいいでしょう」(佐藤さん)

歯間ブラシ各¥550

歯間ブラシとフロス、どちらを選ぶのがいいだろう。

「歯と歯の間が広めだと自覚している人は、フロスだと細すぎて十分に汚れを落としきれない可能性が高いので、歯間ブラシを選ぶのが無難です。サイズ展開も豊富なので自分に合ったものを選んでください。フロスは糸でスムーズに歯と歯の間に入るのでデンタルケアをこれから本格的に始めようという人には扱いやすいです」(佐藤さん)

マスクで口元を隠しているからと油断すれば、口内環境は悪化する一方。歯科医院から足が遠のいている人ほど自分でできる日々のデンタルケアを一新し、マスク生活をストレスフリーに過ごそう。