INSTANT FLOW

ぼくはスジャータになりたい(え!?)——藤原ヒロシの連載「INSTANT FLOW」#48

今年もあと2カ月半(とか言ったら罰金ね)。季節も世界も刻々と変わっていく今日この頃、おいしいモンブラン食べてますか? HIROSHI FUJIWARA(hf)の謎を覗き見る連載。今回も豊穣な第48回、2021年6〜8月にポストされた画像からおとどけします。

INSTAGRAM & TALK BY HIROSHI FUJIWARA
TEXT BY MIKA KUNII

6月1日+4日——奇珍、ミュウミュウ、車屋さん


——行ったのですね『奇珍』。あの横浜でのライブの後に?

hf そうです。あれから友達が車屋さんに行くって言って。帰りにフラッと寄りました。初めてだったけれどいい店でしたよ。壁の品書きの配色が、なんかミュウミュウみたいで。生ザーサイがおいしかったです。あと鶏のから揚げと、「旨味そばみたいなのが有名だ」と言われたんで……バンメンっていうのかな?野菜炒めが上に乗っかっていて、ちょっとお酢が利いている……おいしかったし、雰囲気がすごくよかったし、お店の人たちも親切だったし、また行きたいです。

6月5日——シュローダーヘッズ、BSフジ、いきなりCM

——藤原さんのポストを見て、初めてシュローダーヘッズを聴きました。

hf ああ、そうなんですか。渡辺シュンスケさんは最近いつも一緒にライブとかいろいろな仕事をやっているキーボードの人です。バンドマスターに近いです。
 

——ちなみに8月2日のポスト「レコーディング風景」の、この人を藤原さんだと思ってました。キーボードも弾くんだなって。多分、9割方の人がそう思ったんじゃないかと……。渡辺シュンスケさんなんですね。この前のBSフジで放映したライブ、すごく心地のよいサウンドで、眠れない真夜中に響きました。

hf 途中のCMが、デカくて。

——いきなり「ダブル健康青汁!」って。あれはちょっとびっくりしましたけれど。

6月11日——onnnacodomo、スタジオコースト、歌う理由

——この時のライブは「スタジオコースト」だったのですね。ここ、なくなってしまうんですよね。ライブ内で流れるビジュアルは、どなたが?

hf ビジュアルは、『onnnacodomo(おんなこども)』という女の子2人のチームがやっています。イラストレーター、アニメーション作家、ミュージシャンのユニット。今回、PVをつくってもらうのに『ODDJOB(オドジョブ)』という会社に頼んだのだけど、そこに所属しているんです。ODDJOBは、「水曜のダウンタウン」のオープニングとかもやってます。僕の最近のPVとかも。アニメーションが得意です。

——あ「カネオくん」や「テレビ千鳥」も。カネオくんから藤原さんまで……広いですね。ところで、藤原さん以前はあまり歌っていなかったと思うのですが、なぜ「歌おう」と思ったのですか?

hf 老後の楽しみにとっていたんです、歌は。

——老後……早くないですか? 歌い始めたのは40代くらいからでしたよね、前倒しで楽しみだしたのでしょうか。

hf そうです。バンドが、音楽が、やはり楽しいのかもしれない。

6月21日——渋い谷、昭和、なくなってほしくない店

——『ムルギー』のカレー。

hf たまに食べるとおいしいですよ。なくならないでほしい店の1つじゃないですか。

——かなり長いですよね、ここと『名曲喫茶ライオン』。百軒店映画館のちょっと後ろ。「ワルツのピラミッドカレーを思い出します」というコメントを書いている原田さんはお友達ですか?

hf 僕のマネージャーです。ソニーミュージックアーティストの会長をやっていました。

——その人がマネージャーさん? 上級すぎてよくわからない……。なくなってほしくないお店、ありますよね。『麗郷』もそろそろ老朽化で、と聞きました。

hf 麗郷が老朽化だったら、ここ(ムルギー)、絶対無理です。そういえば以前、あの辺に住んでいたことがあって。神泉のあたりから抜けると、昔は手作りパン屋があった。麗郷よりもう少し渋谷のほうに下がったところに、15年くらい前にはありました。あれはもう、ないんですよね。

——そういうお店は気づくとなくなってしまう。「渋谷の真ん中にこの店が?」みたいな店が、どんどん消えていく。

hf 渋谷の昭和、みたいな店が。

——渋谷駅のすぐ裏の『Paris COFFEE』という喫茶店もなくなってしまって。

hf 今のうちに行っておいてください「ムルギー」。

6月22日——ライカ、白ベルト、ハードコア国家

hf 頼んでおいた白い皮のベルトが到着して。

——ライカ用につくったんですね。白(しろ)ベルト、いいですね。

hf 白ベルト、白ロシアみたいだね。

——なんですか、白ロシアって?

hf ベラルーシのことです。なぜ白ロシアだったんだろうね。

——『ペレストロイカより前は白ロシアと呼ばれていた……白(しろ)ロシアじゃなくて、日本語では白(はく)ロシアと呼ばれる。白ロシア・ソビエト社会主義共和国』。へえ。藤原さんとの時間は勉強になるんですよね……知らなかった単語を5〜6個覚えて帰ってます。あ、ベラルーシの「ベラ」が白なんですね。

hf 「ルーシ」がロシアなんだ、なるほど。ベラルーシ、一度は行ってみたいとずっと思っているんです。ああいう独裁国家って、北朝鮮よりは行けそうで、おもしろそうなところじゃないですか。今はどうかわからないけれど。

——国交があるんですかね。

hf あると思いますよ。

——今回のオリンピックでポーランドに亡命した女性選手はベラルーシ代表でしたね……

hf ソ連が崩壊した後、あの辺の独裁国家で一番のハードコア国家が、ベラルーシ。

——藤原さんがハードコア国家にいるインスタが見られる日が、来るといいですね。

hf 僕、わりと行っていますよ。アゼルバイジャンにお茶を飲むだけに、とか。

——そうだ「お茶飲みに国境越えて」みたいなのをやっていましたよね。あれは、2年くらい前ですね。

hf ファッションウィークにジョージアにいて、隣がアルバニアとアゼルバイジャンで、「車でちょっと行けるから、どちらかにお茶飲みに行こう」と思って。

——そんな怖いこと……。大丈夫だったんですか。

hf その2日くらい前に爆弾テロがありました、でも不発で大丈夫だった。

——そういう問題では……。お茶は飲めました?

hf お茶は飲めましたよ、甘いお茶が。

——あの辺、イスラム文化圏と混ざっているところですね。

hf そうなんですよ。ジョージアがキリスト教で、アルメニアがロシア正教で、アゼルバイジャンがイスラム教の三つ巴で。

——ライカの白ベルトから、遠いところにいきましたね……

6月25日——ポケットにピックと小銭

hf YO-KINGさんと街で偶然出会ったら、ピックをもらいました。

——どういうやりとりなんですか。なかよしですね。以前、一緒に活動していましたよね。

hf はい。で、僕がこのピックをつくりました。

——藤原さんのデザインですか。ピックを挨拶代わりに渡す仲っていいですね。格好いいな。ギタリストって、いつも持ち歩いているものなんですか?

hf なんとなくポケットに入っているのかもしれないですね。小銭と一緒に。すごく安くつくれるから、みんな自分でつくっちゃいます。

——小銭と一緒にピックが出てきたら、ちょっといいな。

6月26日——すべてのものは限定である

——これ、かっこいいなと思っていました。

hf モンクレール、そこ(六本木ヒルズ けやき坂)にできたものね。

——これは限定ですか?

hf 限定というわけでもないですけれど……まあ、すべてのものは限定じゃないですか?

——「すべてのものは限定である」。いい言葉、でた。そうですよね。

hf すぐ限定、限定と言うけれど。

——きみだって限定ものだよ、と。

6月30日——鰻、直焼き、木のうつわ

——これはどちらの鰻ですか、おいしそう……!

hf 伊勢のなんですけれど。鰻弁当ってプラスチックのうつわだとすぐにごはんがネットリするけれど、木のうつわだと全然ならないんです。やっぱり木の折じゃないと。

——吸水性ありますものね。東京でおいしい鰻弁当と言ったら?

hf GINZA SIXの裏の『ひょうたん屋』ですね。東京でいちばん好きです。

——「ひょうたん屋」、大好きです。

hf 東京ではめずらしく、直焼きなんです。東京の鰻って蒸しているけれど、ここは直焼き。

——伊勢は直焼きですか?

hf 伊勢は直焼きです。

6月30日——新幹線、ポプラ、スジャータ系

——スジャータ、ということは新幹線の中ですね。

hf スジャータが僕の理想形です。スジャータになりたい。

——えっと……どういう意味ですか?

hf セブンイレブンやローソンでは売っていなくて、たまにポプラとかちょっとマイナーなところで売っている。にもかかわらず、JRのような大企業を手玉に取っている。新幹線に乗ったら絶対スジャータ、じゃないですか。

——メジャーに媚びず。

hf でも、しっかり新幹線は押さえている。うまい棒と同時にルイ・ヴィトンと仕事をしているみたいなもので。

——その振り幅。

hf そうです、そのストラテジーを僕は継承しているんです。

——言ってみれば……

hf スジャータ系アーティスト。

——「スジャータ系」って初めて聞きました(笑)

hf スジャータは1個も送られてこないですけれど(笑)

——そこがまたスジャータのいいところ。たぶんインスタ見ていないんじゃ。スジャータとコラボは?

hf したいですね。

7月8日——ダ・ビンチ、あるいはカバンからゴーギャン

——ダ・ビンチの熊ですね。かわいい。落としたんですか?

hf まさか。買えるわけないでしょ。オークションで、いくらだったんだっけ? すごく高かったです。

——ダ・ビンチだし。

hf 前にゴーギャンの小さな絵画がオークションに出たんです。「ゴーギャンって、オークションとかで売るんだ」と思って試しにベットしたら買えてしまったんです。今考えると、あのゴーギャンは奇跡的でしたね。

——森ビルで打ち合わせした後に、カバンの中からガサガサッと出して見せてくれたとか。生ゴーギャンを。

hf これくらいの額の、小さな絵なんです。

——大きさで値段って変わりますか?

hf たぶん大きさでも変わりますよ。

——そうなんですね。そのゴーギャンは、今どうされているんですか?

hf 部屋に飾っています。家にゴーギャン、気持ちはスジャータです。

——その振り幅(笑)

7月23日——うんしゅう、いでみつ、つきぎめ


——このポストを見て買いに行きました、温州みかん氷。

hf これには、ちょっとしたストーリーがありまして。ずっと温州(おんしゅう)ミカンだと思ってたんです。

——温州(うんしゅう)ミカン……

hf うんしゅう、ですよね。でも、おんしゅうだと思っていたんです、そう間違えていたことには何の負い目もないんですが。漢字で目に入って、読めなくても受け流すことって結構あるじゃないですか。その中でも「出光(いでみつ)」を、大人になるまで読めていなかったんです。車も持っていなかったし、ガソリンスタンドが話題になることもなかったから。あの漢字が頭に入ったまま理解したような気になっていたけれど、大人になって初めて「あれってそう読むんだ」と。いろいろな人と、「そういうことあるよね」と話していて。うちの姉はついこの前まで「月極(つきぎめ)駐車場」を読めなかったし。

——私も「げっきょく」だと思っていました。

hf そういうことも話さないとわからないじゃないですか。「人混み(ひとごみ)」は「人ゴミ」とカタカナ表記されることもあって、ずっと「人がゴミのようにいる」ことだと思っていた。

——「見ろ、人がゴミのようだ」

hf 当たっているといえば、当たっているけれどね。

——おいしいアイスを食べた以上のことがあったのだと。

hf セブンイレブンで見つけたら3つくらいは買っちゃいます。下がちょっと甘いから、15分おいて溶けてから食べる。

——サクレは、もう夏の定番。

hf サクレは、主役級ですね。

7月28日+8月6日——ポッチャマ、北極、MONTOAK


——そしてアイスつながり。あずき、ミルク、オレンジ。どうやって、こんなコラボが?

hf 夏だし「ポケモン」でアイスとかできない?と。それでポッチャマ推しで、会議で決まった。

——ちゃんと会議。そして、いとも軽やかに実現。これはMONTOAKでしか売っていないんですか?

hf 東京ではMONTOAKで、地方ではアイスクリームバーみたいなポップアップツアーをやって、めちゃ売れたと言っていました。北極アイス、おいしいですよ。

——北極アイスを知りませんでした。

hf 関西では結構ポピュラー。

——あずき、食べてみたかったです。井村屋のあずきもおいしいけれど。

hf おいしいですよね、井村屋のあずきも。歯が折れるくらい堅いから「ちょっと置いておこう」と思ったら溶けているんです。

——途中、どこかでボコッと折れる。

hf 落ちちゃうんですよ。

——これ、もう終わっちゃうんですか。

hf もう終わっちゃいます。夏、終わっちゃいますから。

8月17日——お笑い、好きなんですか?

hf 『ハライチのターン』めちゃおもしろかったです。

——藤原さんはお笑い、好きなんですか?

hf まあ、それなりに。ハライチ、好きですね。澤部の見た目が好きだったんですよ、アラスカ着て出てきたときとか。ネタもすごく好きですけれど。たまたまラジオを聞いていて、岩井がものすごくおもしろかった。

——岩井、おもしろいですよね。

hf 寝るとき、静かだと眠れないんです。だからテレビとかラジオとか、何かつけながら寝てしまう。フリートークみたいなものが好きなんです。

——音楽より人の話のほうがいい?

hf どちらかじゃなくて、音楽のときもあれば、こういうのもある。ハライチもたまたま見つけた。YouTubeとかで検索するとまとめがいっぱいあって、それをダウンロードして移動中に聞いたりしています。

8月23日——ボンド、タリバン、ストラディバリウス

hf 『リビンツ・デイライツ』。

——この人、誰でしたっけ……

hf ティモシー・ダルトン。

——007の人。

hf 僕が初めてタリバンを知ったのは、この映画でなんです。タリバンじゃないんですが、「ムジャヒデイン(ジハードを遂行する者)」という言葉を初めて知って。ここではイスラム戦士が、どちらかというと正義の味方的に……

——描かれていたんですか?

hf いえ。というか、同じ収容所にジェームス・ボンドが捕まっていて、周りのムジャヒデインが鍵をあけて助けるんですよ。最後もみんなでボンドに会いに来るみたいなシーンがあって…。このとき80年代で、ロシアと戦っているときだったりする世界情勢を取り入れていたんですね。この頃はムジャヒデインは、ちょっと格好いいイメージだった。

——そうなんですね。

hf 「ムジャヒデイン」と「ストラディバリウス」を、僕はこの映画で同時に知ったんです。

——これにストラディバリウス、出てきましたか?

hf ボンドガールがチェロ弾きの女なんですよ。そのチェロがストラディバリウスで「チェロってひとつずつ名前がついていて、そんなに高いんだ」と、初めて知った。007の次のも楽しみだなと思ったけれど、公開が2年遅れているから(✳︎2021年10月1日公開)︎、情報も抜けているだろうなと。

——情勢も変わってますものね。

hf タリバンのニュースを見て、もういちど見返したんです。

——そう言われて、見たくなりました。
 

profile

藤原ヒロシ|Hiroshi Fujiwara
1964年三重県生まれ。DJ、音楽プロデューサー、ファッションクリエイター。英米で触れたクラブ文化を80年代の日本に持ち込むなど、音楽とファッションの両軸で日本のストリートカルチャーを牽引。現在、デジタルメディア「Ring of Colour」を運営する。京都精華大学ポピュラーカルチャー学部客員教授。