家具・インテリアを通じて豊かなライフスタイルを提案するアクタス。連載の第3回は、できるだけ長く愛される家具を提供し、環境負荷を減らすための企業としての取り組みを追います。
TEXT BY MARI MATSUBARA
ALL PHOTO ©️ACTUS
地球温暖化対策、CO2削減、SDGsという言葉が一部のエコロジストだけのスローガンではなく、世界中のあらゆる企業や社会活動が目指さなければならない喫緊の課題として認知されるようになった昨今。国や企業という大きな枠組みだけではなく、エコバッグやマイ水筒を持ち歩いたり、住宅の省エネルギー化に注目が集まったり、一般生活者の意識もここ数年で大きく変わった。
アクタスが創業した1969年には公害問題や環境保護の課題はすでに取り沙汰されていたものの、現在ほどの大きなムーブメントになっておらず、むしろ世の中全体が大量生産・消費社会へと猛進していく時代だった。そして創業20年目の1989年はバブル景気の真っ只中。毎年数限りない新商品が生まれ、消費され、あっという間に捨てられていく時代に、アクタスは会社案内の企業メッセージとして、こんな言葉を残している。
“形あるものは、時が経てば傷つき、汚れ、そして古びてくる。
このありのままの姿を楽しむ余裕を持つことが、
自然のリズムで生きることであり、本当の豊かさではないだろうか。
(中略)
うわべだけではない「本物の良さ」を持つ生活道具を通じ、
真に豊かな生活を提案していくこと、
それが我々アクタスに与えられた使命であると考える。”
「サステナブル」という言葉がまだ一般に流布していない時代からアクタスは、長く愛着を持てて、修理しながら大切に使い続けていける家具を提供することを考えていた。この理念のもと、できるだけ家具の廃棄を減らし、使える部材はリユースし、修繕して次の使い手へと循環させることで環境負荷の抑制に貢献しようと奮闘してきた。その具体的な4つのアクションを紹介しよう。
Action_1
デンマークのユーズド家具をリペアして、次の使い手へ
アクタスでは、デンマークで1950〜70年代に製造されたテーブルや椅子を買い付け、愛知県豊橋市にある提携工場で修理し、商品として蘇らせている。これらの家具は無名の職人が作ったものだが、現在では手に入らない良質なチーク材が使われ、引き出しの取っ手のデザインや、金具を使わず木の組み構造で仕上げる接合のディテールなどに手仕事で作られた家具ならではの味わいがある。長年の使用でガタついたり座面が剥がれた椅子や、角が欠けたり表面に傷がついたチェストやテーブルを、日本の熟練の家具職人がひとつひとつ解体し、オリジナルの姿へと修繕をほどこしている。
半世紀も前に作られ人々の生活に寄り添ってきた家具が、時を経て海を越えて日本にやってきて蘇り、新しい持ち主のもとで作り手や使い手の思いが受け継がれていく。豊かな暮らしを支えるものが最新のテクノロジーだけではないことを、丁寧にリペアされたヴィンテージ家具が教えてくれる。
Action_2
修理に対応。完璧なユーザーサポート
アクタスで購入された家具の修理依頼に関して、アクタスは基本的にはすべて対応している。安易に買い替えるのではなく、直して使い続けるという考え方はここ数年使い手側にも浸透してきており、実際に修理依頼件数も増えている。一番多いのはソファやダイニングチェアの座面の張り替えだ。ほかにも家具の再塗装や木工技術を要する修繕、レザーやファブリック、無垢材など素材ごとの専門的対応など様々なケースに応えられるのは、アクタスが多岐にわたる分野のリペア職人のネットワークを持っているから。そして大型家具の全国配送ができる物流拠点が各地に整っているからこそ、修理品の引き取りから工場への搬入、修理後の納品までドア・トゥー・ドアのきめ細かい対応ができるのだ。
こんな逸話がある。1969年、アクタスの前身である小さな輸入家具店が東京・青山通りにオープンし、そこでデンマーク製のダイニングテーブルを買われたお客様が、最近になって修理を依頼してきた。新婚の夫妻には思い切った出費だったそのテーブルは50年以上もの間、暮らしに寄り添い家族の思い出が刻まれたものだから、捨てるなどという選択はあり得ず、修理を依頼されたのだという。いい家具をできるだけ長く使い、不具合を直して次の世代へと受け継ぐ。そんなエピソードから、アクタスの理念が顧客側にも行き届いていることがうかがえる。
Action_3
次の買い手を見つける「トレードインサービス」
「海外転勤が決まって家を出ることになった」「引っ越しに伴ってインテリアのイメージを変えたい」「子どもが独立して大きなソファが不要になった」など、様々な事情からアクタスの家具を手放すことになったお客様がいる。その家具を廃棄せずに、アクタスが買い取り、リペアして、次のユーザーを探す仕組みが「トレードインサービス」だ。また、テーブルの杢目が好みに合わないなどの理由で、実際には使われずに返品されることがまれにある。このように何らかの事情で新品同様なのに販売できなかった家具は、アクタスの直営アウトレットストアですべて再販されている。これもまた、家具の廃棄を回避し次の使い手へつなげる地道な取り組みと言えるだろう。
Action_4
素材の再利用、「エコ・ループ」
やむをえず廃棄するに至った家具についても、部材を分別して再利用する「エコ・ループ」という取り組みを、2009年から独自に整備し運用しているアクタス。以前は使用済みの家具を中間処理業者に渡していたが、それを部材ごとに解体・分別・再利用するとなると、人材の確保や工場探し、行政手続きなどプロジェクト完遂には問題が山積みだったという。しかし一つ一つの障害をクリアし、自社の製品へ部材を再利用することを実現させたのだ。これは家具業界では画期的なことだった。
たとえば、引き取ってきた家具を解体して木部だけを集めて粉砕し、それを固めて、家具の芯材に使うパーティクルボードに再生させる。捨てられ、燃やされるはずだった廃材が新しい製品に再利用されることで、CO2削減や資源保護につながる。さらに木部だけでなく、鉄、ガラス、ウレタン、革、金属、プラスチック、梱包資材も再資源化することができるようになり、2017年には「ゼロ・エミッション」が達成された。
創業時からの理念、そしてグリーンロジスティックセンター構想へ
上に挙げた4つのアクションを含む7つのルールを掲げながら、環境負荷を減らす試みはアクタスの企業活動の様々な場面で行われている。
❶ 商品開発コンセプト
〜世代を超えて飽きることなく使い続けられる商品の開発。
❷ 材料選択の基準
〜ホルムアルデヒド放射量が少ないF4スター級の原材料による製品のシェア99%。
❸ 材料使用量の削減
〜過剰生産をしない、無駄な残材や廃棄物を極限まで減らす。
❹ 流通の効率化
〜海外輸送をなるべく集約化、化石燃料に頼らない鉄道輸送への転換。
❺ 使用時の影響軽減
〜プラスチック素材を極力排除、自然素材をなるべく使いメンテナンス体制を確立。
❻ 製品の寿命
〜ユーザーサポートによって次世代へ受け継がれる商品を提供。
❼ 使用後の処理
〜エコ・ループの実践でゼロ・エミッション達成。
アクタスはこうした7つのルールに基づいて、自社で扱う家具に最後まで責任を持ち、環境負荷を減らし、ユーザーと密なつながりを持ち、資源循環型社会に貢献できるように、これまで様々な仕組みを整えてきた。これらを統括し一拠点にまとめる「グリーンロジスティックセンター構想」が現在進んでいる。数年後にはセンターを実現させ、サステナブルな社会に応じた環境経営をいっそう推進していくことができるだろう。
親から子へ、その次の世代へと受け継がれ、長く愛される家具を提供すること。真の豊かさを追求することは、すなわち環境にもやさしいアクションなのだということをアクタスは行動で示している。
※ 緊急事態宣言発出に伴うアクタス各店舗の臨時休業や営業時間変更等についてはこちらよりご確認ください。
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