ACTUS KID’S FURNITURE

こんな子ども用家具が欲しかった!——アクタス・ブランドストーリーvol.2

ヨーロッパの輸入家具販売からスタートし、オリジナル家具でも上質で豊かな暮らしを提案する〈アクタス〉。連載第2回目は20数年前からスタートした、オリジナルの子ども用家具への取り組みにフォーカスします。

TEXT BY MARI MATSUBARA
ALL PHOTO ©️ACTUS

理想の学習机はどこにある?

「学習机」というものが日本に登場したのは高度成長期。住宅の欧米化が進み、子ども専用の部屋ができたことがきっかけだった。その後、子どもの成長に合わせて高さを調節できる机や、様々な機能や付属品がついた「デラックス机」、人気キャラクターをあしらったタイプなど、学習机は特殊な市場で展開していったものの、子どもが成長した後もずっと長く使えるようなデザインの良いものはほとんど見当たらなかった。

「子ども用の学習机で欲しいものがありません」という、ある顧客から寄せられたハガキがきっかけとなって、〈アクタス〉は1999年から子ども用家具を開発することになった。

さらに、小学校低学年のうちは親の目が届く場所で勉強する、いわゆる「リビング学習」の効果が謳われ始めると、リビングのインテリアになじむようなデザインの学習机がほしいという声が増えた。

「親がキッチンやダイニングで家事をしながら、子どもの宿題を見てあげる」「家族の気配があるリビングでこそ、子どもは安心して学ぶことができる」「親と子どものコミュニケーションを図れる」……そんな効果が期待できる「リビング学習」だが、実情は、ダイニングテーブルの隅で子どもが勉強することが多かった。食事の時間になると、子どもはせっかく広げたノートや勉強道具を片付けなければならず、集中が途切れてしまう。親もテーブルの上に残った消しゴムのかすなどが気になってしまう。そこで「リビングに、子ども専用のテリトリーを作る」という視点で生まれたのが、2005年に発表された《VARIO(ヴァリオ)》シリーズだ。

《VARIO》のL型デスクと穴のあいたバックパネルの組み合わせを2つ並べた例。リビングダイニングにも置けるコンパクトさが好評。

通常、学習机の奥行は約65㎝だが、《VARIO》の机は奥行55㎝。奥行を浅くしたことで、ダイニングルームの一隅にコンパクトに収まる。また、フックなど様々なものを掛けられる穴のあいたバックパネルや、収納チェストなど別売りのパーツを付け加えてアレンジすることもできる。小学校の6年間で持ち物の量が約5.6倍にも増えるという子どもの成長に合わせて、あるいは兄弟が増えたタイミングで、様々な組み合わせと配置が可能という優れもののデスク。〈アクタス〉の子ども用机として大人気の商品だ。

《VARIO》の1例。バックパネルを仕切りにして兄弟がそれぞれのデスクを使うこともできる。

actus-kids-furniture_sub_003
1/4《VARIO》1人用の基本パターン——L字天板とチェストを組み合わせ、バックパネルを正面に取り付ける。
actus-kids-furniture_sub_017
2/4《VARIO》1人用の応用パターン——バックパネルをサイドに取り付けたパターン。穴にブックスタンド他、様々なものを掛けられる。
actus-kids-furniture_sub_004
3/4《VARIO》兄弟・姉妹・親子で使える2人用基本パターン——2人が並んで使うパターン。バックパネルを机2台の間の仕切りに使うこともできる。
actus-kids-furniture_sub_005
4/4《VARIO》高学年向け、収納付きパターン——持ち物が多い高学年にはお揃いのシェルフをプラス。

家族で循環して使い、長く愛せる家具を

もうひとつ〈アクタス〉で人気の子ども用机が《SARCLE(サークル)》のシリーズだ。

《SARCLE》のデスクを2台並べた例。天板の一方が長くなっており、親が勉強を見るスペースを確保できる。

子どもが幼い時は親と一緒に使えて、やがて子どもが1人で使うようになり、子どもが使わなくなったら大人のデスクワーク用の机に——。使い手が循環(=サークル)し、長い間愛用できることを願って名付けられた、ロングライフなデスクだ。
 

actus-kids-furniture_sub_007
1/3LIVING ROOM|大人が子どもの横に座って勉強を見てあげる——《SARCLE》子どもと親が横並びで窮屈になるより、大人がサイドに座れるよう天板の一方が長い。
actus-kids-furniture_sub_008
2/3KIDS ROOM|子ども部屋に置いて、子ども1人で使う——《SARCLE》デスクの一辺にサイドデスクをプラスしてL字形デスクに。
actus-kids-furniture_sub_009
3/3STUDY ROOM|子どもが使わなくなったら、大人のデスクワーク用に——《SARCLE》天板に天然由来のリノリウムを貼ったタイプは抗菌・抗ウィルス作用があり、耐久性もあるので、大人の書斎にもぴったり。

いい家具を長く使い、世代から世代へと受け継ぐことは、サステナビリティが求められるこれからの時代にふさわしい行動だろう。

幼児が絵本を楽しむための家具

学習机開発の経験を踏まえて、2007年には「絵本シリーズ」と呼ばれる幼児向け家具も発表された。それまで、優れたデザインとコンセプトを備えた幼児のための家具はどこにもなく、〈アクタス〉が初めて取り組むことになった。お父さんやお母さんが寄り添って絵本を読み聞かせることが、子どもの心の成長にとって大事なことだと言われている。そんな日常を実践できる家具を、との思いから3点の家具が作られた。

「ななめテーブル」は、テーブルの一端が斜めになっており、子どもは床に座って斜めのテーブルに絵本を広げる。そばにいる親にとってはローテーブルとして使えるデザインだ。子どもが楽しみながらお片付けができる「絵本棚」、親子で仲良く並んで座り、読み聞かせができる横幅が広い「ロッキングチェア」も、これまでの幼児用家具にはなかったデザイン性の高さで人気を集めている。

《EHON》シリーズの「ななめテーブル」。

《EHON》シリーズ「絵本棚」は、上2段に絵本の表紙を見せて飾ることができる。

《EHON》ロッキングチェアは横幅が広く、親子一緒に座れる。

子ども用家具にも「グッドデザイン」と「サステナビリティ」を

顧客からの1枚のハガキが契機となって取り組むことになった子ども用家具の世界。その後も〈アクタス〉は様々なイベントを通じて親御さんからの要望をヒアリングしたり、アドバイザーが子ども用家具の選び方をレクチャーする機会を設けたり、また〈アクタス〉の学習机を購入された家を訪問して使い勝手を調査したりしている。こうしたこまやかな聞き取り調査や対話によって、子どもには何が必要か、親は何を求めているかということに徹底的に向き合い、従来の家具業界にはなかった、新しい子ども用家具のスタンダードを作り上げたのだ。

2014年、二子玉川ライズ・ガレリアで開催したイベント「THE GOOD DESIGN KIDS PRODUCTS」。国内外12組のデザイナーにデザインを依頼した幼児向け家具を展示。2日間で約2,000組もの親子が来場し、デザイン性の高い幼児用家具への期待が大きいことを裏付けた。

〈アクタス〉スタッフやインテリアのプロを招いて、子どもを持つ親向けに「学習机の正しい選び方講座」を定期的に開催。

子どもを預かって遊ばせるスペースがあり、親は講座に集中できるので大好評だ。

また、「エコロジー」と「心地良い」を掛け合わせた言葉「ecocochi(エココチ)計画」を推進している。製品寿命が長いロングライフ商品を目指すこと、お客様から使用済みの家具を引き取り、分別して木材をパーティクルボード(芯材)として再利用すること、有害物質が含まれた商品を作らないようにすること。これらの指針はもちろん子ども用家具にも適用されており、2003年以降すべての製品が低ホルムアルデヒドの最高等級である「F4スター」の基準を満たしている。環境と健康へ配慮したものづくりは、従来よりコスト高になってしまうが、多少高額でも品質のいいものを安心して長く使いたいと考える親が、サステナブルやSDGsを合言葉とする時代に増えているようだ。

〈アクタス〉の子ども用家具は、今もなお改良を重ねバージョンアップしながら、親にとっても子どもにとっても機能的でデザインが美しく、環境にやさしく、できるだけ長く使えるものを目指している。子ども用だからと言って一過性の安易なデザインで済ませるのではなく、就学期間だけもてばいいという使い捨ての考えからも脱却したい。〈アクタス〉が20数年前から取り組んだコンセプトが、「こんな子ども用家具が欲しかった!」という親たちの心をガッチリ掴んでいる。
 

※ 緊急事態宣言発出に伴うアクタス各店舗の臨時休業や営業時間変更等についてはこちらよりご確認ください。