クリエイティブな人たちは、得てして時間の使い方がうまい。なかでも、1日や2日という短期間で、驚くほど効率的に旅をする人は、セルフマネージメントの達人と言えるだろう。そうした賢人たちの行動例から、週末小旅行のアイデアを学ぶシリーズ。第2回目のゲストは、起業家・情報学研究者のドミニク・チェンさん!
TEXT BY Tomonari Cotani
PHOTO BY Dominick Chen
——ドミニクさんはこれまで、どのような場所に、どのようなスケジュールで「週末旅」や「日帰り旅」をされてこられましたか? 可能な限り、具体的な時間を記していただきながら、ご説明いただければと思います。
チェン 僕は予定を詰めるのがペインなので、無目的の時間を、あまり知らない場所で過ごすのが好きです。
最近、出張の延長で訪ねて気持ちよかったのは、サンフランシスコから北に1時間半ほど車を走らせた先にあるソノマ・カウンティー。建築家の叔父と叔母が引退して引っ越したので、遊びに行きました。
ソノマはワイナリーで有名ですが、森が深いなかに家がぽつぽつ立っていて、店もほとんどない。微妙に電波も弱いのでスマホもPCも触る気がしないのもいい(笑)。以下のようなスケジュールでしたが、こういう幅のある時間が一番気持ちいいですね。
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1日目(土曜日)
09:00ごろ
サンフランシスコ市内、ダウンタウン近くのホテルをチェックアウトして、角の店で適当にコーヒーと朝食を取る。
10:00
SF MOMA(サンフランシスコ近代美術館)まで歩いて、展示やリチャード・セラのインスタレーションをボ〜っと眺める。
昼過ぎ
叔父にピックアップしてもらってソノマへ。町についたら、買い物をしたグロサリーの近くのパン屋でサンドイッチを食べて、家についたら庭の芝生でボ〜っとしながら昼寝。
日没ごろ
叔父がヨークシャー・プディングをこしらえるのと肉を焼くのを手伝う。地元のビールを飲みながら平らげたら、それぞれ本や雑誌を読んでから寝る。
2日目(日曜日)
09:00ごろ
起床。近所のパン屋で朝食とコーヒーを調達して、適当に森や林の中をうろうろしながら食べる。お腹が空いてきたら近くのボデガ・ベイに行って、名物のクラムチャウダーを買って、ホエール・ウォッチングのできる近くの断崖まで行って食べる。
1時間くらい散歩してから、SF市内に戻って、本屋や禅センターなどをぷらぷら訪ねてから空港まで送ってもらって日本への帰路。途中、機中から先程まで歩いてたボデガ・ベイが見えました。
ちょうどいい塩梅で都市と自然が併存しているベイエリアは、自分にとっては現実と非現実の最適なバランスのある大好きな場所です。
——どのような気分になったとき、ショートトリップへ出られるのでしょうか?
チェン 定常的な「忙しい状態」というのも反復的なルーチンだとしたら、強制的に「忙しくなくする」ことで、自分のなかのdividual(分割可能なもの)たちが増殖して活性化するように思います。
——ショートトリップに出ると、何を得ることができますか?
チェン アドレナリン系ではなく、リラックスできるパターン介入(ルーチンを意図的に分断する行動)を通して、身体の中に沈殿した情報と知覚を撹拌する、という感じですね。そうすることで自分という“ぬか床”をかき回して、溜まってしまった酢酸菌と産膜酵母を飛ばすイメージ。
——もし、いま3日間の余裕があるとしたら、どこへ行ってみたいですか?
チェン ショートどころかマイクロトリップで、東京で普段行けていない演芸場や能楽堂、骨董市や小さい映画館に行きまくりたい。それと、いい感じの坂道を踏破しまくりたいです!
ドミニク・チェン|DOMINIQUE CHEN
博士(学際情報学)、早稲田大学文学学術院・准教授。NPOコモンスフィア(クリエイティブ・コモンズ・ジャパン)理事、ディヴィデュアル共同創業者。IPA未踏IT人材育成プログラム・スーパークリエイター認定。NHK NEWSWEB第四期ネットナビゲーター(2016年度)。2016年度、2017年度グッドデザイン賞・審査員兼フォーカスイシューディレクター。
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