DISTINCT SENSE OF PLACE

Andaz Tokyoが高級ホテル競争の激化する東京で誇る強みとは?

虎ノ門ヒルズの 47階から 52階に位置する〈アンダーズ 東京〉。2014年6月、ハイアットが提案する新しいコンセプトのライフスタイルホテルとして日本に初めて誕生した。このホテルの新しい総支配人に就任したロス・クーパー氏に、今後の取り組みについて話を聞いた。

PHOTO BY SATOSHI NAGARE
INTERVIEW TEXT BY YUKA UCHIDA
TEXT (GALLERY) BY SAWAKO AKUNE

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1/12ANDAZ HOST / アンダーズ ホスト フロント、コンシェルジュといった分け隔てがなく、ゲストの求めるサービスをマルチに行う“ホスト”がいるのは、他のホテルにはない〈アンダーズ〉の個性。そのホストが行き来する51階の壁面では、小高重光による巨大な組子細工の作品がゲストを迎える。切子の一片一片を手作業で組み上げる、日本の職人技の粋を感じさせる作品。
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2/12ANDAZ LOUNGE / アンダーズ ラウンジ ホテルに訪れたゲストを最初にお迎えするのは51階にあるアンダーズ ラウンジ。ロビーの概念を取りのぞいて、フロント、コンシェルジュ、ベルデスクといった区別をなくし、ゲストを迎える場所。和気藹々と語り合える無垢木を使った大きなテーブルと、よりプライベートな雰囲気のソファ席が配されており、スペースの周囲は“障子”をモチーフにした巨大な和紙を使ったドアが囲む。
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3/12ANDAZ TAVERN / アンダーズ タヴァーン 息をのむような眺めが自慢の、51階にあるメインダイニング。主に日本の旬の食材を使用した西洋スタイルの料理をサーブするほか、バー&ラウンジも併設している。吹き抜けで開放感のある空間の天井を埋め尽くすように、うねる木の彫刻は、イギリス人アーティスト、チャーリー・ウィーニーの作品。高温の蒸気でオーク材を曲げながら仕上げていく作品で、この空間のために来日して設置を行ったという。
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4/12CHAPEL / チャペル 52階には、SIMPLICITY緒方慎一郎がデザインを手がけたチャペル、バー、パーティなどに使えるスタジオが点在。フロア全体を庭園に見立て、時を経て風合いを増す素材や植栽を随所に取り入れたという。チャペルの外壁は銅板で包まれており、光の当たり具合で表情を微かに変える。一見すると重厚な雰囲気だが、大きなドアを開けて中へ入ると真っ白な空間が広がる。天井から差し込む自然光が、有機的なカーブを描く空間を照らし、やわらかで神聖な雰囲気を醸し出す。
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5/12AO / アオ スパ & クラブ 直営のスパがあるのは全世界に12軒ある〈ANDAZ〉でも限られた都市のみ。ゲストの個性を重んじるこのホテルらしく、トリートメントは入念なカウンセリング後、カスタマイズされたテイラーメイドのメニューで行う。
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6/12AO / アオ スパ & クラブ 皇居を見渡す一面が窓になった20mプールに加え、炭酸泉やバーデプール、ジャグジーを備えたジムでは、37階という高層からの東京の眺望も独占できて、またとないリフレッシュができる。
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7/12ANDAZ SKY SUITE / アンダーズ スカイ スイート スイートルームはそれぞれ100㎡を超える広さ。中でも最も大きいのが210㎡の「アンダーズ スカイ スイート」で、東京タワーから東京湾まで、180度以上に広がる東京のビューが自慢。名前の通り空に浮かんでいるような気分を味わわせてくれる。リビング、書斎、ベッドルーム、バスルーム、ゲスト用パウダールームからなるゆったりとした空間は、どこもしっとりと落ち着いた雰囲気。昂揚感とくつろぎとが共生する部屋。
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8/12GUEST ROOM / ゲスト ルーム 47〜50階を占める客室は全164室。スタンダードルームでも50㎡以上で、大きな円形のバスタブのあるバスルームを備える。トニー・チーのデザインは、無垢木や和紙などの自然素材を使ったり、障子をモチーフにした表現を施したりと、現代の感覚で伝統的な和を解釈したもの。部屋に敷かれたグリーンのカーペットは、“芝生を踏みしめているような感覚を”という意図。
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9/12GUEST ROOM / ゲスト ルーム 無垢木の風情と手触りがシックでモダンなインテリア。鉄瓶のティーポットで淹れるお茶はまた格別。
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10/12GUEST ROOM / ゲスト ルーム 鼻緒の付いた下駄を思わせる室内履きや浴衣、日本のウイスキーや和菓子が入るミニバーなども、東京の〈アンダーズ〉ならではのもてなし。
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11/12ART PIECES / アート ホテルがある土地のローカリティを重用視し、デザインやサービスにも反映するのが特長の〈アンダーズ〉。館内に点在するアートにもそれは現れており、たとえばエレベーター内でゲストを迎えるのはおめでたい鯛や亀をモチーフにした永田哲也の和紙作品。和菓子の木型から丹念に型どって生み出されている。
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12/12ENTRANCE / エントランス 1階のホテル専用のエントランスはトニー・チーのデザイン。小さな照明がランダムに配され、自然を感じさせる木が建ち並び、幻想的な森の中にいるかのよう。ホテルの外と中の雰囲気のくっきりとした対比が、ゲストの気分を華やいだものにする。

ロス・クーパー 今日はまだ就任2日目。心地よい緊張感に包まれています。日本には 2008年から4年間、グランド ハイアット 東京の副総支配人 料飲担当として滞在し、ホテル内のバーやレストランなど飲料部門を盛り上げることに尽力してきました。こうして再び日本に戻り、また東京で仕事ができることに大きな喜びを感じています。

——総支配人に抜擢された率直な気持ちは?

クーパー とても興奮しています。〈アンダーズ〉はハイアットグループの中でも比較的、誕生して間もないフレッシュなブランドです。ですが、すでに東京で多くのポジティブな反響をもらっています。ライフスタイルというコンセプトを掲げて、新しい体験を提供できることにもワクワクしています。国内からのゲストとも、海外からのゲストとも、今までにない繋がりが持てるホテルだと確信しています。

——〈アンダーズ〉が掲げるライフスタイルホテルとはどんなコンセプトなのでしょうか?

クーパー ホテルを訪れたすべての人が、自分らしくリラックスして過ごせるホテルということです。従来のホテルは隅々までルールが整っているが故に、サービスが画一化し、いま目の前にいるゲストのニーズを本当の意味で理解することができなくなっていたように思います。それが時に、ゲストを緊張させていたのです。そういった堅苦しい壁を取り払い、まるで友人の家に招かれたかのような快適でリラックスした、高品質の空間とサービスを実現するのが〈アンダーズ〉です。フロント、コンシェルジュ、ベルデスクといった区別をなくすことでスタッフとの距離を縮めているほか、部屋のインテリアもリビングルームのような心地よさを目指しています。

——虎ノ門という土地との関わりは?

クーパー 〈アンダーズ〉ではホテルがある土地と深く関わり合うことを常に意識しています。虎ノ門は歴史的、地理的にみても、東京の重要な中心地であることは明らかです。周辺には何代も続く老舗の蕎麦屋や和菓子屋、琵琶をつくる工房もあります。それに加えて、この虎ノ門ヒルズが誕生したように、新たな開発も次々と進んでいます。歴史的価値を残しつつ、新東京の一部として、プラスの変化が起きているエリアです。客室やラウンジには地元の和菓子屋のお菓子を置いていますし、空間のあちこちに和紙を使うなど日本文化のエッセンスも盛り込んでいます。

私たちの思いは「すべてのゲストが帰るときにはまるで地元を離れるかのような気持ちになっていただきたい」ということ。東京近郊からのゲストにとっては、その“地元”とは虎ノ門のことかもしれませんし、海外からのゲストにとっては日本かもしれません。どちらだとしても、到着した時には自分の中になかった“何か”を持ち帰ってもらえれば、それに勝る喜びはありません。

——2020年のオリンピックに向けて、東京には次々と新たなホテルが誕生しています。そんな中で〈アンダーズ 東京〉の強みとはなんでしょうか?

クーパー 虎ノ門は臨海エリアへもアクセスしやすく、オリンピック観戦の最適な拠点になり得ます。また、世界各国のアンダーズが独自性をもって開催している「アンダーズ サロン」を通した特別な体験ができる。これはクリエイティブな才能と共に作るイベントで、宿泊ゲスト以外にもホテルを開放して、その土地ならではの様々な分野の芸術や文化に触れ、刺激的な経験を楽しんでいただく場です。前回は水墨画のアーティストを招いてイベントを開催しました。

——これからいらっしゃるゲストにメッセージを。

クーパー 〈アンダーズ 東京〉は自分らしく過ごすことができる空間です。ゲスト一人ひとりが肩ひじをはらず“Personal Style”に、自分自身を表現できるひと時を楽しんでいただけることを願っています。

Andaz Tokyo

profile

ロス・クーパー|ROSS COOPER
1975年ニュージーランド生まれ。オークランド工科大学ホスピタリティマネジメント卒業後、パーク ハイアットメルボルンの開業準備に関わる。グランド ハイアット東京の副総支配人、パーク ハイアット 釜山の総支配人を経て、今年7月よりアンダーズ 東京の総支配人就任。Portrait by Koutarou Washizaki