
ファッションのご意見番ことスタイリスト地曳いく子さんが、独自の視点で切り込むオトナ女史のためのスタイル術「IKUKO’S METHOD」。今回のテーマは今から秋まで楽しむサンダルです。
STYLING BY IKUKO JIBIKI
PHOTO BY SHIN KIMURA
EDIT BY AKANE MAEKAWA
もうファンタジーには浸っていられない
今、世の中の色々なことが加速していませんか? もともとミーハーな私なので、先取り好きではあったのですが、最近は消化しきれないうちにどんどん次へと移っていく気がします。特にファッションの世界では心を決めないと、巻き込まれ事故に遭いそうで。というのも、今年さらに猛暑日への到達が早くなり6月から真夏の気温。しかもこの暑さとの戦いは今年も長くなりそう。以前なら、プレフォールや秋冬の立ち上がりのこの時期は、ショートブーツなど秋を感じさせるものを取り上げるのが通例でした。ファッションは先取りですから。でも、もう先取りできないぐらい地球が暑くなってしまっています。比較的涼しかったヨーロッパでさえ猛暑に悩まされています。さすがにこの時期に「今年の秋は……」と語る気になれず……。1960年代ぐらいから続いたファッションサイクルから読み解くトレンドでは季節との乖離が大きくなってきてしまっています。先取りで紹介するなんて、もうそんなファンタジーに浸っている場合じゃない! プレフォールでサンダル?と思う方もいるかもしれませんが、この時期に買う意味、あると思います。

パイピングによるバイカラーの配色がモダンなエルメスのサンダル《クリステン》。フラットなタイプですがとても上品。Hを模ったバックルもさりげない主張で素敵です。レトロモダンな雰囲気とエッジィなテイストがほどよくミックスされた一足。サンダル¥226,600(エルメス/麻布台ヒルズ ガーデンプラザC1F )

ゴールドの“CD”シグネチャーがアクセントになったディオールのウェッジスライド《30モンテーニュ》。カーフレザーとロープウェッジヒールとのコンビネーションがエレガントで爽やか。今、履きたいサンダルです。サンダル¥139,000(ディオール/クリスチャン ディオール/麻布台ヒルズ ガーデンプラザC )

異素材のゴムストラップが複雑に組み合わさったプラットフォームサンダル《ディオール シェード》。太いバンドのストラップが足首をホールドしてくれるので、高さのあるソールでも歩きやすい。カジュアルですがクチュールライクなデザイン。サンダル¥150,000(ディオール/クリスチャン ディオール/麻布台ヒルズ ガーデンプラザC )

ゴールドメタルのカサンドラロゴをあしらったサンローランの《バビロン》ミュール。ギャザーを寄せた技巧的なアッパーとピンヒールとのコンビネーションがエレガント。レトロな雰囲気は、60年代の映画に出てきそう。ミュール¥170,500(サンローラン/六本木ヒルズ ウェストウォーク2F )

イントレチャートのレザーがアクセントになったミュールサンダルと、メタルのノットディテールがポイントのフラットトングサンダル。ともにボッテガ・ヴェネタのシグネチャーを上品にあしらったレザーサンダルでさりげなくラグジュアリー感をプラスしたい。右ミュール¥176,000、左サンダル¥176,000(ボッテガ・ヴェネタ/六本木ヒルズ ウェストウォーク2F/麻布台ヒルズ ガーデンプラザB1F )

人間工学に裏付けされた製品で知られるイタリアのフットウェアブランド〈ショール〉とのコラボレーションから誕生したバレンシアガのサンダル。右の留め具はショール、左はバレンシアガのロゴが。人間工学に基づいた技術が融合し、快適な足もとをおしゃれに実現。サンダル¥112,200 ※予定価格(バレンシアガ/六本木ヒルズ ウェストウォーク2F )

上品に艶めくヴァレンティノ ガラヴァーニのパテントカーフレザーサンダル。チャンキーなヒールとアンクルストラップがレトロな雰囲気に。ヒールにあしらわれたVロゴが、絶妙なアクセントとなったエレガントな一足。サンダル¥176,000(ヴァレンティノ ガラヴァーニ/ヴァレンティノ/表参道ヒルズ 本館1F・2F )

トラッドな表情をしたクロエのスリングバックシューズ。ポインテッドトゥですが、エッジィ過ぎず、オンにも活躍するデザイン。きれいめカジュアルな足もとを演出。シューズ¥154,000(クロエ/表参道ヒルズ 本館1F )

バーバリーチェックのスリングバックフラットサンダル。クッション性をもたせたキルティングのインソールは履き心地もよく、脱いだ時もエレガントなデザイン。サンダル¥107,800(バーバリー/六本木ヒルズ 六本木けやき坂通り1F )

艶やかなカーフレザーを使用したマルニのスリングバックサンダル。エレガントなポインテッドトゥに、アイコニックなトランカルークラスプを同系の黒であしらったクールでキュートな一足。サンダル¥149,600(マルニ/表参道ヒルズ 西館1F)

ストラップやソールに施されたミニピラミッド型スパイクがキラキラと輝くクリスチャン ルブタンのサンダル。異素材を組み合わせた手の込んだロープデザインも素敵。サンダル¥146,300(クリスチャン ルブタン/六本木ヒルズ ウェストウォーク2F )

サウジアラビアの古代遺跡アルウラに着想を得たというクリスチャン ルブタンの新作サンダル《ピラ・ハルリラ》。ミニピラミッド型スパイクが光を乱反射し、黒のカジュアルなミュールにラグジュアリーなきらめきを添える技アリな一足。サンダル¥152,900(クリスチャン ルブタン/六本木ヒルズ ウェストウォーク2F )
地曳いく子が指南する
プレフォールサンダルのススメ
❶ 注目はポインテッドトゥ&スリングバック
気候に逆らわずプレフォールを楽しむというのが今回の隠れテーマ。ポインテッドトゥのエレガントなシューズは、今年の秋冬のトレンド。この時期手に入れるならスリングバックのサンダルで取り入れるのがおすすめ。おそらく10月まで暑そうな今年ですが、少し涼しくなってきたら、ソックスやカラータイツと合わせれば結構長く活躍してくれます。
❷ がんばれ脚力! ハイヒールで極めるエレガンス
カジュアルな足もとに慣れきってしまった私たちですが、今年はエレガントなヒールにも注目。ピンヒールでパーティーへ、そんな気持ちも沸々と湧き上がってきています。やっぱりヒールのあるサンダルは脚をきれいに見せてくれるのです。がんばれ脚力! 私の場合は、パーティーのヴェニューに着いたらフラットから履き替えますが(笑)、車移動の方は家からぜひ。ピンヒールは厳しいという方は、チャンキーなヒールで。
❸ さりげなく主張するラグジュアリー
トラッドなシューズに比べて遊びが多いのもサンダルの特徴。ストラップや留め具にアイコニックなディテールやロゴが巧みにデザインされたものも多いのです。さりげなく主張するラグジュアリー感をおしゃれに楽しむのもサンダルならでは。
❹ 恋人然り、見た目だけで好きになるのは要注意
足とサンダルはデリケートな関係なのです。簡単にさっと履けるサンダルですが、履きこなすのは意外と大変。なぜなら素足にストラップなど少ない部分で勝負しなければならないから。サンダル選びは自分の足と正しく向き合うべし。かつて、同年代の華奢な友人が「これは楽で走っても全然痛くならないのよ」と勧めてくれたヒールのサンダル。彼女が履きこなしているならばとつい買ってしまい大失敗したことがあります。足の形は本当に人それぞれ。万人に合うものはほとんどなし。以前も書きましたが、特にエレガント系サンダルはシンデレラの靴と一緒なのです。必ず両足で試し履きをして、数歩は歩きまわってください。予想外のところがあたったりします。サンダルは、指の長さとの関係も重要。つま先から親指の付け根までの長さでも変わってきます。また、注意したいのはスリングバック。かかとの骨の形によっては、きちんと引っかからなかったりすることも。そんなときは潔く諦める。ストラップがだらりと落ちてしまっている人をたまに見かけますが、エレガントなサンダルがエレガントではなくなりますからやめましょう。スリングバックがだめならアンクルストラップという選択もあります。時間と愛をかけて、自分の足にフィットするたったひとつの靴を探してください。

地曳いく子|Ikuko Jibiki
スタイリスト/1959年東京生まれ。数々のファッション誌で活躍し、女優や著名人のスタイリングも数多く手がける。大人の女性を美しくみせる的確な理論に基づくスタイリング術に定評を持ち、執筆も多く手がける。現在は、ファッションアイテムのプロデュースほか、テレビやラジオに出演するなど多方面で活躍。著書に『服を買うなら、捨てなさい』『着かた、生きかた』(ともに宝島社)『おしゃれは7、8割でいい』(光文社)『大人の旅はどこへでも行ける 50代からの大人ひとり旅』(扶桑社)など多数。最新刊に『ババアはツラいよ! 番外編 地曳いく子のお悩み相談室 2』(集英社文庫)。
※ 2025年8月現在の情報となります。
※ 表示価格は全て税込価格です。
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